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2014年7月 1日 (火)

6月最後の千穐楽は「三人吉三」

628日 「三人吉三」千穐楽(シアターコクーン)
渋谷はとにかく人が多過ぎてやっぱり好きになれない。できたら避けたい街だけど、そんな街にふさわしい演目と言ったら「三人吉三」が一番だろう(1800円もしたプログラムの出演者の写真は、全員がそれぞれ思いっきりワルの格好をして、恐らく渋谷で撮影されたもの)。
座席はもう足腰の痛みで平場は無理なので椅子席最前列を狙ったが、発売初日10時に飛び込んだのに、もういっぱい。次善の策として2階最前列を取った。しかしこの席はまさに目の高さに手すりがあって、背伸びをすれば後ろの人に悪いし、腰をうんと前にずらして、手すりの隙間から見るしかない。けっこう疲れた。しかもこの日は前日の反動か、眠くて眠くて、コクーン歌舞伎でなかったら絶対眠りこけていた。でもコクーンではまず寝なかった。

開演5分くらい前から薄暗い舞台で江戸市井の生活が繰り広げられる。まだ入ってくる客もいる通路を亀蔵さん(研師与九兵衛)と大森博史さん(金貸し太郎右衛門)が間を置いて右から左へと通過する。あとでわかるのだけど、2人は互いを探していたらしい。そういう仕掛けが笑いを呼ぶ。亀蔵さんには不思議な存在感があって、貴重な役者さんだと思う。
時間になると、江戸の町の人たちがそこらへんのものを楽器代わりにパーカッションを演奏するのが楽しい。子供たちも何か叩いている。やがて暗くなり、庚申丸盗みの場面(犬殺しも)に続き、湯島松金屋の場面がテンポよくコミカルに描かれるが、庚申丸代金の遣り取りについてはあまりよくわからなかった。
大川端の場面では、和尚が通路に現れ、争うお嬢とお坊に気づくと真っ直ぐ舞台に向かい、川(小さくてちょっと池みたいだったけど、ちゃんと水が入っていて、そこにかかる橋とともに効果的)を渡って2人の許に行くのがカッコいい。
とにかく和尚の勘九郎さんがめちゃくちゃカッコいいのよ。七之助さんのお嬢は男と女の間を行き来しながら、お坊の前では女だったのではないだろうか。切ない思いがひしひしと伝わってきた。松也クンはニヒルさはあまりなくてどちらかというと甘い感じを受けたけれど(だから伝吉を殺す場面は不安定なきもちになった)、七之助さんとのバランスもいいし、私はけっこうハマった。今回はBL的雰囲気を前面に出していたようで、2人の間に濃密な空気が感じられた。そしてその2人をいつくしむ兄貴格の和尚という構図がはっきりしていて、吉祥院から大詰へ向けてより感動的になっていた。
兄弟の契りを結ぶ場面では、和尚の腕をお嬢とお坊が左右から切って傷をつけていた。傷口の縛り合いはなかったが、お嬢の傷口をお坊が手拭でそっと押さえてやっていたところに愛が見えた。3人の血を入れたかわらけは叩き割るのではなく、和尚が大川に投げ入れていた。
二幕目もまた江戸の町人の生活から始まる。物語には直接関係がないのだけど、薄暗い中で展開する生活が、アウトローの3人を浮き立たせているようだ。
伝吉内の場では、3人の夜鷹による大川端のオウムが面白かった。夜鷹がまた個性的なんだもの。ゆで蛸おいぼ(徳松)、婆アおはぜ(内田紳一郎)、虎鰒おてふ(大月秀幸)って個性的すぎる。徳松さんが楽しそう。
久しぶりに見た鶴松クン(おとせ)があんまり上手なんでびっくりした。元々上手な子だったけれど、若いのにベテランみたいな安定感があって安心して見ていられる。勘三郎さんに見てもらいたかっただろうなあ。これからもっともっと舞台に出てほしい。新悟クン(十三郎)は何と言っても声がきれい。背が高いから立役でも十分イケる。おとせと十三郎は双子なんだけど、おとせのほうが夜鷹をやっているだけあって人生経験豊富な感じが鶴松クンと新悟クンから窺えた。そういう細かい雰囲気も2人とも上手に出していた。この2人は捕り手役でも出ていたんだけど、動きが激しくてわからなかった。っていうか、捕り手で出るってこと忘れていたんで、顔の判別をしなかった。残念。

伝吉の笹野さんはさすがのうまさで、さかんに「淡路屋」の声がかかっていた。自分が犯した悪事から始まる様々な悲劇、すっかり善人になってもなおそこから逃れられない寂しい親父という印象だった。
吉祥院で和尚がおとせと十三郎の首をもって、何て無慈悲なと悲しむお坊とお嬢に「兄貴の慈悲だ」と言葉を絞り出し、弟妹を「不憫」だと言うのが泣けた。笑わせるほうでは、おとせが一晩帰らなかった事情を父親に話すとき「わお~ん」と犬の鳴き声ひとつですませたこと。序幕前半他の場面でもあったと思ったけど、どこの場面で誰だったか忘れた。
大詰、本郷火の見櫓の場では若い3人が大暴れ。激しい立ち回りが小気味よく展開される。先日も書いたように、勘九郎、松也の脚がしっかり太くてかっこいいことこの上ない。
追い詰められた3人の最期は感動的だった。刺し違えたお坊とお嬢、息も絶え絶えで手と手を探りながら取り、微笑み死んでいく。お嬢の上にお坊が覆いかぶさり、一方1人腹に刀を突き立てぐっと横に弾いた和尚は自分が手にしていた着物(雪の中なのに途中で脱いで手に持っていた)を2人にかけてやり、その上に覆いかぶさって息絶える。
大詰では雪がど~っと落ちてくるのが3回くらいあった。カーテンコールでの雪の量はハンパない。本当に積もった雪のようだった。
2
度目のカーテンコールには串田さんも顔を見せ、「第2期コクーン歌舞伎なのでこのメンバーにした」と言っていたが、ぜひ次回も松也、鶴松、新悟の3人を出してほしい。ちなみに次回は再来年らしい。
3
度目のカーテンコール、主役の3人が一言ずつあいさつした。勘九郎さんは「プレッシャーで押しつぶされそうだった」。座頭としてもそうだったろうなと察する。「父たち3人が作ったものを守りたい」。
七之助さんは「大川端の衣裳は福助の叔父から借りたもの。叔父は衣裳に香水をつける。それが匂うたび、命がけでやらなくちゃと思った」。そうか、七之助さんがすっごく乗っていたのはそういうことだったのか。
松也クンが「今月は色々ありましたけれど」と始めると客席爆笑。ネタにできるだけ堂々としてたいしたものだわ。「勘九郎さんが言ったようにプレッシャーに押しつぶされそうだったけど、毎日大入りのお客様のおかげで千穐楽までやってこれた。松本の後、NYに発つ2人を見送って、自分は近くでやっている」(「ハナガタミ」のことかな)と又笑わせた。ほんと大入り、補助席も立ち見もたくさんだった。
このお芝居には歌舞伎の音楽はいっさい使われず、ギターとパーカッションとツケだけ。それでこれだけの物語性と緊張感を味わえることに驚いた。
<上演時間>序幕65分(12001305)、幕間15分、二幕目85分(13201445)、幕間10分、大詰20分(14551515

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