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2014年8月 7日 (木)

七月歌舞伎座千穐楽夜の部

729日 七月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
何だかなかなか感想を書く時間がなくて、すっかり間が抜けてしまったので、ごく簡単に。
「悪太郎」
2度目。前回は猿之助さんで見た。悪太郎のキャラは右近さん向きかも。猿弥さんとのコンビもとても合っていた。右近さんの足元を時々見ていたが、かなりテクニックのいる踊りだなあと思った。亀鶴さんは、浅草で猿之助悪太郎で見た時の智蓮坊から今回は伯父の安木松之丞役。右近さんの伯父さんというにはちょっと厳しいような気もしたけれど、おっとりしたユーモラスさがよかった。太郎冠者の弘太郎さんともども悪戯っ気を楽しく見せていた。
「修禅寺物語」
映像世界の役者・香川照之のリアルな人間描写という強みと、舞台・歌舞伎の空気をまといつつある市川中車の成長がうまく絡み合って、とても面白く見応えのある舞台になっていた。
私はこれまで桂をあまり理解できず好きになれなかったのだけど、笑三郎さんの桂を見て、その上昇志向のようなものがなんとなくわかる気がした。そして瀕死の表情を父親にしっかり見せるラストは、ぶれることのない夜叉王の気魄と桂の満足がぶつかり合い、対照的に見えるこの2人の根は実は一緒なんじゃないかと思わせるものがあった。
それに対して楓と春彦は時代に翻弄される不安に戦いている感じで、それを春猿さん、亀鶴さんが好演していた。月乃助さんの頼家には、スッキリとした貴公子ながら癇性の強さがこの人をこういう運命に導いたのかなあというところを感じた。そういえば8年前の合同公演で梅之さん(当時)が頼家を演じて、要チェックになったんでしたわ。
「天守物語」
上演時間を見た時は2時間近くもあるのかぁとちょっと恐れをなしたが、ぜ~んぜん。まったく退屈することなく、天守の世界にのめりこんだ。
なんと言っても玉様が最高。やはり異界の女性を演じたら右に出る者はいない。その美しさは1人でいるときはもちろんだが、誰かと一緒にいて、その位の高さが前面に出るときにより輝く。雨の中帰ってきて、侍女たちに軽口をたたきながらくつろぐ時、亀姫と姉妹のような同性愛のような寄り添いをみせる時、図書之助に気位高く接する時。本当に美しい。そして図書之助と恋におち、目が見えなくなった富姫の心細さは自信に満ち溢れた富姫とはまた違った美しさ(天守夫人じゃなくて1人の少女と言ってもいいくらい)。ただただため息が出る。
海老ちゃんは、期待ほどじゃなかったかも。少し疲れていたのかな。でも、その涼やかな姿、声には、海老蔵以外に図書之助は考えられない、最高の図書之助であると思わされる。
尾上右近クンの亀姫は大抜擢に十分応えていたと思う。若さ、美しさ、気位の高さ、どれを取っても亀姫その人だったろう。「おねえさま」と富姫に甘える姿が素直に受け入れられる。春猿さん、勘九郎さんで見た時は富姫と亀姫が客席に背中を見せて座り寄り添う場面があったと思ったが、今回は立ったまま寄り添っていたような…。
吉弥さんの薄をはじめとする侍女たちが天守の不思議な世界の空気を醸し出し、こういう役がうまいからこそ芝居が面白くなることを実感させてくれた。
舌長姥の門之助さん、私が歌舞伎を見始めた頃は、こういう奇ッ怪な役(右近と藤山直美の「狸御殿」でも。ああ、もう一度見たいなあ「狸御殿」)が多く、しばらくはそういう役者さんかと思っていた。そのイメージ復活ではあるが、実は二枚目の門様と知っている今は当時とはこちらの気持ちが違う。でもやっぱり舌長姥、奇ッ怪だ。
我當さんはだいぶ足が悪そうだったが、「美しい人たち」を包み込む大きさ暖かさ、そして雰囲気もその世界に合っているのだ。やはり我當さん以外に桃六はいないだろうと思った。
カーテンコールは多分4回あった(私、3回目で席を立って下へ降りたけど、その間まだ拍手が続いていたから)。2回目だかで、獅子の役の人も含めて全員出てきた。獅子の人たちは筋書きに名前も出ていた。獅子も頑張っていたからよかったと思った。私がむか~し見ていた頃の筋書きには名題下の役者さんの名前さえ「その他大勢」で載っていなかったもの。
「天守物語」にはカーテンコールがありそうだと期待していたし、それなりに興奮もしたのだけど、実際にカーテンコールが始まってみると、どういうわけか、なくてもよかったかもしれない、なんて思ってしまった。そのくせ、きっと次の機会にもカーテンコールを楽しんじゃいそうだけど。
<上演時間>「悪太郎」47分(16301717)、幕間20分、「修禅寺物語」66分(17371843)、幕間30分、「天守物語」107分(19132100

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コメント

こんばんは。
私も千穐楽に行っていました。
海老玉の「天守物語」は少し食傷気味だったのですが、
この2人で見られるのはもう最後らしいので、
やっぱり記憶に焼き付けておこうと思って。
我當さんの桃六のセリフにウルッときました。
お体はほとんど動かさない(動かせない?)のに、
セリフだけでグッと胸に迫らせるって、すごいです。
お声も良いし。
海老蔵さんも少し見習ってほしいです(義太夫調をね)。
もちろん、海老/図書の美しさは別格だから、
「天守」の場合は、それだけで半分許せてしまうのですけど。
カーテンコールは玉さんの計らいだったのでしょうか、
私もなくて良いのになと、少し思いました。


投稿: いちご | 2014年8月 8日 (金) 19時51分

いちご様
こんばんは。コメントありがとうございます。
いちご様もあの時、あの場にいらしたのですね。海老蔵さんのブログをいつだったかちらっと見た時に「図書之助は最後」って書いてらしたような…。それで私も、海老玉の天守はこれが最後かなと思いました。海老蔵さんには色々欠点もありますが、その存在が役になっているという部分もありますよね。図書之助なんかまさにそんな感じで、おっしゃるようにそれだけで許せる気になってしまいます。
カーテンコールは、千穐楽だけでなく毎日あったみたいですね。お客が直接役者さんに感動を伝えるのがカーテンコールだと思いますし、私もカーテンコールを楽しみにしている部分もあるのですが、今回だけはあの美しい世界をそのまま胸に抱いて帰ってもよかったかなと思いました。私、ひねくれちゃったのかしらと心配していましたが、いちご様もカーテンコールなくてもよかったとお考えとのことで(少しだけでも)、ちょっと安心しました。

投稿: SwingingFujisan | 2014年8月 8日 (金) 20時54分

おはようございます!

私も夜の部楽に行きました!
昼夜通して「修禅寺物語」が個人的には充実していると
感じました。 ほぼおもだかの役者さん(亀鶴さん以外)の
修禅寺物語なので嬉しかったです。happy01

「ヤマトタケル」もそうでしたが、
「天守物語」もカテコもお芝居の一部と考えているのでは
ないでしょうか。 楽のカテコは入念なリハがあったと小耳にはさみました。 完璧主義の玉さまですね。


投稿: maroon6 | 2014年8月 9日 (土) 09時48分

maroon6様
おはようございます。
maroon6様もあの時、いらしたんですか‼
なるほど、カーテンコールもお芝居の一部と考えればいいんですね。もちろん、カーテンコールを期待することもありますし、興奮もするんですけれど、何となく今回はしみじみ感のほうが強くて、静かに感動をかみしめたい思いがしたのです。
いや、今思い出せば、カーテンコールも感動的でした(とくに2度目までは)。玉さまの隅々まで行き届いたお芝居に懸ける心が感動を呼んだのでしょうね。さすが玉様です。
「修禅寺物語」、とってもよかったですね。人間ドラマとして充実していましたし、引き込まれました。澤瀉屋は本当に役者層が厚いと思いました。中車さんが加わって、ますます充実の澤瀉屋ですね。

投稿: SwingingFujisan | 2014年8月 9日 (土) 10時31分

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