« 来年4月中日劇場 | トップページ | 満足だから次の公演に心が揺れる:「ジュリアス・シーザー」 »

2014年10月20日 (月)

満足、10月演舞場昼の部

1015日 十月花形歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
本当は千穐楽を狙いたかったのだけど、チケットを取った時にはそのあたりの予定が立たず、前半で演舞場は昼も夜も見終わってしまった。夜の部は席があまりよくなくストレスがたまったが、昼の部は花道七三は見えるし舞台が見切れることもなく、かつ宙乗り目の前といういい席だったからか、夜の部よりずっと楽しめて満足。
「俊寛」
一時期、また「俊寛か」とうんざりしたような記憶があるが、久々の「俊寛」。右近さんのは20077月の巡業で一度見ている。当時どう思ったかは覚えていないが、今回は義太夫的なこってり感はなく、薄味な気がした。
俊寛が姿を現した時、長く伸びた黒髪がとても印象的で、そういえば俊寛はそんなにおじいさんではなかったのよねと思い出した。顔だけ見ていると右近さんじゃないみたいだった。右近さんの俊寛は形がきれいで、常に寂寥感が漂っていて、とくに丹波少将成経と千鳥の結婚を祝って舞う中よろけて転び照れ笑いをするところにそれが強く感じられた。
笑三郎さん(成経)はおっとりと貴族らしく、笑也千鳥とのカップルは悪くない。弘太郎さん(平康頼)は単独で、あるいは右近さんとの絡みで見ると情もあり、とてもいいのだが、笑三郎さんとの絡みになると年上に見えずちょっとバランスが悪いような気がした。そういう意味では弘太郎さんが成経でもよかったかもしれないが、そうすると今度は笑也さんとのバランスが悪くなるかもしれない。
笑也さんの千鳥はきれいでかわいくて、流人にとっては癒しの魅力だろうなあと思った。
右近さんと猿弥さん(瀬尾)のぶつかり合いは見応えがあった。猿弥さんは憎たらしいけれども職務に忠実な武士の貫録があった。瀬尾が俊寛に斬りつけられたのに丹左衛門が傍観して助けてくれないことを嘆く時、私はちょっと瀬尾に同情してしまう。
丹左衛門の男女蔵さんには猿弥さんに対抗する大きさがほしかった。瀬尾のほうが立派に見えてしまい、捌き役としてのニンではないのかもしれないなと思ってしまった。
浪布が広げられる場面は、何度見ても歌舞伎の工夫の素晴らしさに感動する。右近さんは、転がりつ滑りつ岩をのぼり、ラストは何かをじっと見つめるような目をしていた。去りゆく船を見ているというわけではなさそうだった。未来を見ていたのだろうか。こちらが3階から見ているせいなのかわからないけれど、視線はほんのわずか下方に向けられているような気がした。
「金幣猿島郡」
博多座で上演されたのを見ていないので、楽しみにしていた初見。
開演5分前に席へ戻ろうと廊下を歩いていると、3階左側の奥から白煙(ドライアイス?)が立ち込めている。演出?と思ったら、あとで使われるものが誤って流れてしまったらしい。客席内にももや~っと白煙が広がっていた。3階の客席では扇風機で煙を散らしていた。そのため開演が5分ほど遅れ、後でお詫びのアナウンスが入った。

以下、ごちゃごちゃになりそうなので箇条書きで。
・桜の下の制札は、書かれている内容はまったく関係ないけれど「熊谷」を、清姫(猿之助)が桜のそばで縛られる場面は雪姫を、障子に映る安珍=頼光(門之助)と七綾姫(米吉)のラブシーンに清姫が嫉妬する場面は「染模様」を、如月尼(歌六)が後ろから組みついた武士(猿三郎さん?)を自分の身体ごと刺して自害する場面は「大物浦」の丹造とか義賢とかを思い出させた。
・カメちゃんははじめ声がかすれていてあんまりきれいじゃなかった。
・歌六さんの女方は気概と貫録があってよかった。母(歌六)が娘(猿之助)を殺すときの帯の使い方が効果的。うろこ模様で、猿之助さん宙乗り前の火の海を泳ぐ竜と、幕切れに同じ帯が使われていた。
・橋姫社前で藤原忠文(猿之助)が七綾姫からもらっという赤い縁取りのある手紙を首に巻いている姿が色っぽくてよかった。
・木津川土手で、寂莫法印(猿弥)が寝返って頼光と七綾姫を忠文の手から逃がしてやるとき、「経済効果のいいほうに付く」「アベノミクスも考えて」とか言っていたが、時事ネタにしてはイマイチだった。
・頼光と七綾姫は舟で逃げるのだが、姫が癪(?)を起す。頼光が薬を飲ませようとしても姫は飲もうとしない。そこで頼光が口移しで飲ませるのだが、覗きこんでいた船頭(欣弥)がテレて顔を隠し、土手で見ていた寂莫法印もアテられた様子だったのが面白かった。
・ここではカメちゃんが吹替えを使い、その間に青隈を入れて鬼になっていた。
・忠文は寂莫法印を殺して川に沈める。逆さになった猿弥さんの落ち方がきれいだった。そして忠文もまた川へ沈む(階段を下りて沈んでいくのが見えた)。
・社が燃える。白い煙も出て、本当に燃えているかのように見えた。舞台は真っ赤な火布で覆われ、清姫のうろこ模様の帯が阿流れてきて、忠文と清姫の霊は合体するのであった。顔は忠文、衣裳の袖が清姫。
・その間、宙乗り小屋から滑車が花道上方へ向かってゆっくりとすべっていった。気が付くと、ロープに吊るされたカメちゃんがスッポンから浮かび上がっていた。
・宙乗りは青隈の合体霊だから、夜の部よりはいいけれど、やっぱりきれいなカメちゃんで見たかった。宙乗り小屋からきらきらした金紙がたくさん吹き出され客席に舞い落ちてきれいだった。
・頼光の門之助さんはまさにぴったりの貴公子。七綾の米吉クンはきれいでかわいくて色っぽかった(何かの場面で時蔵さんに顔が似ていると思った。親戚だから似ていても不思議はないけど、そんなこと初めて思った)。

・「双面道成寺」は聞いたか坊主の白雲が隼人、黒雲が弘太郎という珍しいコンビ。隼人クンはいつも言うようだが、どんな舞台でも真面目に取り組んで上手になった。
2人が鐘を上げると、中に七綾姫が入っていた。
・白拍子花子実は清姫の霊(猿之助)がスッポンから舞台へ。三つ猿の紋の入った紫の幔幕の後ろに控えている長唄・鳴物連中の頭が見えた。やがて彼らがセリ下がったらしく見えなくなった。上手の常盤津演奏に合わせて猿之助さんが一踊りすると、幔幕があいて長唄・鳴物がセリ上がってきた。
141018tegata1 ・カメちゃんは手首が柔らかい。手指の動きがきれい。したがって扇の扱いがとてもなめらかだった。写真はさいたま芸術劇場付近に展示されているカメちゃんの手形。合わせてみると「大きい」と驚くが、そうではなくて、指を思いきり広げているから大きく見えるんだと思う。他の人の手形はこんなに広げてないよ。カメちゃんらしい手形かもね。
・カメちゃんが烏帽子を取ると男になり、「女人禁制の場所に男が女に化けてくるとは」と呆れる白雲・黒雲。「これが流行りの女装男子」と白雲が言えば「女装男子とは何?」と黒雲が問う。「ゲイボーイ」との答えだったけど、そうなの? ゲイと女装男子は違うと思ってた。
・このやりとりの間に赤い消し幕の向こうでカメちゃんは狂言師升六に変身。三つ面踊りでは後見(段一郎)との息もぴったりに、おかめ・太鼓持ち・お大尽とめまぐるしくお面を変える手際も見ものであった。お面とカメちゃんの動きがぴったり合って、本当にそれぞれ3人が踊っているようだった。
・三つ面の終わりのほうで段之さんが持ってきた赤い着物で前を隠して面を取り、合体霊になった。頼光と七綾姫が鐘に入り合体霊はセリ下がり。場内暗くなって、白雲・黒雲が「おきゃがりこぼし」をごろんごろんとコミカルに踊ると、先ほどの赤い衣裳にウロコの衣裳を重ねたカメちゃんがセリ上がる。
・鱗四天との立ち回りは楽しい。四天の4人返り越し(どなただかわからなかった)、カメちゃんの引き抜き、七三でのスピン(これ、すっごい‼)等々。
・押し戻しの俵藤太は錦之助さん。「猿之助によく似た化物め~」。形がきれいで迫力もあった。錦之助さんは昼の部のラストと夜の部のオープニングだけの出演だ。
・カメちゃんは頼光と七綾姫が出てきた鐘にのぼる。大蛇の尾の先端(末端?)の2人、1人が1人の上で逆立ちして尾が反っている様子を見せる。逆立ちするのも大変だが(1回目失敗、2回目で成功)、その姿勢を幕が閉まるまで維持しているのはもっと大変なんじゃないだろうか。何しろ、一番最後まで幕が閉まらない位置にいるのだから、途中で崩れるんじゃないかとはらはらした(なんとなく、プルプルして見えたから)。幕が閉まり切った時にはこの2人に大きな拍手を送った。
昼の部は「双面道成寺」でカメちゃんの踊りがたっぷり見られたことも満足の一因かな。昼はもう一度見たいところだけど、見たい気持ちだけで終わってしまうだろう。
<上演時間>「俊寛」80分(11001220)、幕間30分、「金幣猿島郡序幕・二幕目」88分(12501418)、幕間25分、「双面道成寺」57分(14431540

|

« 来年4月中日劇場 | トップページ | 満足だから次の公演に心が揺れる:「ジュリアス・シーザー」 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こちらにチョットコメント。
「俊寛」結構元気に動く俊寛ですが、これは先代の猿之助によく似ています。
 ところで、私の見た日は、最後の岩の上で、木の枝をおらなかった気がしたのですが、Fujisanの見た日はおりました?私がぼーっとしてただけですかね。実は演劇界の批評に枝を折ってとでてくるのでアレ」と思ったのです。最近はこの類のことが多いのです

投稿: レオン・パパ | 2014年11月 5日 (水) 20時18分

レオン・パパ様
こちらにもありがとうございます。
私は先代猿之助さんの俊寛は見ていないのですが、右近さんはやはり先代と同じように、と演じているのでしょうね。

松の枝のこと、実は私もはっきりとは覚えていないのですが、折っていたような気がします。私はいつもぼんやりなので、はっきりしなくてごめんなさい。

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月 5日 (水) 23時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 来年4月中日劇場 | トップページ | 満足だから次の公演に心が揺れる:「ジュリアス・シーザー」 »