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2014年10月26日 (日)

錦秋名古屋顔見世昼の部

1020日 錦秋名古屋顔見世歌舞伎昼の部(日本特殊陶業市民会館)
141026nagoya2_3 19日、「GOEMON」の上気を貯め込んだまま大阪から名古屋へ。翌20日は顔見世を昼夜通しで観劇。日本特殊陶業市民会館のある金山は名古屋からJR(東海道線または中央本線)で34分、会館は金山駅から地下道で直結されており、東京から行くには御園座より便利だ。た141026nagoya1_5 だ、行きは初めてなので地下直結を知らず、上から行ったら、まねきに釘を打って補強しているところが見られた。
「車引」
金棒引(荒五郎)の「片寄れ片寄れ~」を聞い て、「GOEMON」で秀吉が通るときにも「片寄れ片寄れ~」と言っていたっけと思い出した。
亀三郎さんの梅王丸は、よく透る声を張り上げるうえ、体の動きも大きくい勢いがいいから舞台が小さく 見えた。
梅枝クンの桜丸は死を胸に秘めている哀愁が感じられた。
萬太郎クン(杉王丸)は幼さと赤っ面の悪役っぽさがまじって不思議な魅力だった。
権十郎さんの松王丸は声にあまり勢いがなく、やや精彩を欠いたような気がしたが、体調不良だったのだろうか(ちょっとつらそうに見えた)。
團蔵さんの時平は不気味な魔物チックな感じじゃなくて、より人間的に見えた。
この芝居、「あーりゃぁ、こーりゃぁ」の化粧声が実に効果的に車の引き合いを盛り上げているんだな、とあらためて認識した(化粧声がなかったら面白さ半減かも、でしょ)。
「棒しばり」
亀寿さん(曽根松兵衛)、菊之助さん(太郎冠者)、2人とも口跡がいいから、まずは爽やか。亀寿さんは主人としての鷹揚さの中にちょっと悪戯っぽさも感じられて魅力的だった。
しばられた2人が酒を汲み飲み始めた時から客席は笑いに包まれ、最初全然盃が届かなかった次郎冠者(松緑)がやっと飲めるようになると大きな拍手が湧いて、客席と舞台がひとつになった気がした。さらに、大盃で酒を汲んだ次郎冠者が重さでよたよたし、なかなか太郎冠者の口に合わせられなかった大盃がやっと口に入った時も拍手が起きた。松緑さんの扇渡しもばっちり成功、もちろん大きな拍手で場内も大いに沸いた。私がこの演目を好きなのは、両手が使えないという状況で知恵を出して酒を飲む面白さもだが、どちらかが酒を独り占めにすることなく互いに助け合って飲む点だ。棒術を使うことを主人に教えてしまったうえに自分を縛って嘲笑った太郎冠者を恨みもせず、酒を先に飲ませてやる。その次郎冠者の人のよさを松緑さんが素朴に見せていた。
松緑さんと菊之助さんは行儀のよいコミカルさというか、歌舞伎としての分を保ったうえでのハラハラさせてはほっとさせる面白さ、連れ舞の楽しさを見せてくれた。また2人だけでなく、亀寿さんも合わせた3人の息がぴったり合って、ご本人たちも楽しそうだったからこちらも楽しく見応えある舞踊劇になっていた。

「文七元結」
大好きな菊五郎×時蔵夫婦。2人のやりとりがめちゃくちゃ可笑しくて笑い転げそうになった。いつも書いているように、この2人の夫婦は何も心配することなく見ていられるし、夫婦の間に漂う空気が実際に江戸時代の長屋の、ケンカばっかりしているけれどその実互いを大切に思っている夫婦の愛情そのもので大好きなのだ。角海老に行くのに女房の着物を無理やり剥ぎ取る長兵衛(菊五郎)の身勝手さ、五十両をめぐる大喧嘩、着物を亭主に取られちゃったから屏風の後ろに隠れて首だけしか出せないお兼(時蔵)の可笑しさ、笑って笑って笑った。
逆に泣かされたのが右近クンのお久。平成17年の尾上右近襲名公演で初めて見て以来4度目のお久はすっかり持ち役として定着した感があるが、今回が一番よかった。自分以外の役者の公演(自主公演も含めて)をよく見に行ったりして真面目に研鑽を積んでいる右近クン、その成果が色々な役で実を結びつつあると思う。今回は、とくに角海老で、非難された親をかばって「いいえ、おっかさんやおとっつぁんが悪いんじゃありません」と顔を上げた時のお久があんまり可愛くていじらしくて泣けた。ここは確か、ひしがれてうつむいたままこちらに半分背中を向けていたのが初めて顔を見せる場面だったと思うが、その摑みだけでこのお久のうまさ、良さがわかる。
角海老女将という意外な役の菊之助さんは貫録があって、女将らしい大きさを見せていた。菊之助さんがお久の事情を長兵衛に語っている時も、女将の懐の深さ、情けにうるうるした。
菊五郎さんは、身投げしようとしていた文七(梅枝)に無理やり金を摑ませて、「死ぬなよ」「死んじゃいけないよ」と励ましながら立ち去る心にほろりと泣かされた(江戸っ子だなあ)。そして、なんだいバカにしやがってとムカッとしていた文七が本当の金だとわかって「ありがとうございます」と泣くその心にも泣かされた。
文七が店の主人(左團次)とともに長兵衛の貧しい長屋にやってきてからの大家(松太郎)の捌きも達者でなかなか味があって面白かった。
いっぱい笑って泣いて、いい気持になった昼の部であった。
<上演時間>「車引」30分(11001130)、幕間30分、「棒しばり」40分(12001240)、幕間35分、「文七元結」80分(13151435

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コメント

相変わらず精力的ですね!
羨ましい限りです
「文七元結」落語ではお久は実子でないことになっているのですね
そうなると歌舞伎とはまた違う人情が絡むわけです
また文七の主人と番頭の楽しいやり取りも落語では聴きどころですがそこは歌舞伎ではカットされます

広州からのお便りです
上手くつながれば良いですが・・・

投稿: うかれ坊主 | 2014年10月27日 (月) 17時39分

うかれ坊主様
こんばんは。
広州からのコメント、無事にいただきました。ありがとうございます!!
かなり久しぶりの遠征だと思っていましたが、4月の南座、7月の松竹座、そして今月と3カ月ごとの遠征になり、案外頻繁でした。

文七は、落語を素材にしているだけあって、落語を「見て」いるような楽しさでした。落語を歌舞伎としてアレンジしたことが見やすさ、楽しさにつながり、成功しているのだと思いました。落語のほうはまだ聞いたことがなく、一度聞かなくては(聞いてみたい)と思っています。

投稿: SwingingFujisan | 2014年10月27日 (月) 19時17分

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