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2014年10月 5日 (日)

3代目の精神を4代目の肉体で:獨道中五十三驛

103日 十月花形歌舞伎初日夜の部(新橋演舞場)
発売日にぽちっと決済ボタン押した瞬間、はっと不安になった。名古屋行きとダブった? 慌てて後援会へのお願いメールを見ると、やっぱりその日にチケット依頼してあった。急いで友人にあたったら、チケット引き取ってくれることになって感謝感謝。あらためて探した日は初日しかなくて、同じ席を取った。これが大失敗。宙乗り狙いで取った席は花道どころか舞台下手側が見切れて、ないよりましのモニター(照明の関係で花道七三が光っちゃって、恐ろしく見づらい)に映る部分、映らない部分を頭の中でつなげるのに疲れちゃった。
でも、全体としてはスピーディーな展開で面白く、5時間(!! の長丁場も退屈することなく楽しんだ。展開が早い分少しあっさりしている感じもしないではなかったが、あまり重くても疲れるから、私にはこれくらいでよかったのかも。しかし巡業明けで連日徹夜の稽古、昼も夜も奮闘、そして来月も奮闘のカメちゃん、身体大丈夫なのか!!
「獨道中五十三驛」
右近さんで2度見ている。1度目は20076月、中日劇場まで見に行ったのだが、すっかり忘れていた。2度目は20093月演舞場。こちらは部分的に記憶に残っている。3回目ではあるが、前2回とはずいぶん違うところがあり、とても新鮮な気持ちで見ることができた。
最初は「新橋演舞場芝居前の場」。芝居茶屋女房(春猿)が今月は澤瀉屋のおかげで大入りだというようななことを言い、「澤瀉屋の姿が見えた、呼びましょう、お~い」と声を張り上げると、花道から澤瀉屋(猿之助)が悠々と出てくる。さらには鶴屋南北(錦之助)も茶屋から出てきて、3人の口上があった。
まず錦之助さんが、「33年前に猿翁にいさんとこの芝居を演じた。思い出話は色々あるが長くなるので1215日の私のトークショーで」と笑わせた(このトークショー、行きたいけどまだ迷ってる)。それから猿之助さんが「錦之助さんこと鶴屋南北が書いた芝居である。1人旅とは言いながら、1人ではできない。1840数回の早替りがあり、表方、裏方、獅子奮迅の活躍である。猿翁時代のスタッフに照明の原田保さんを始め新スタッフを加え『なつか新しい』芝居を上演する。連日の徹夜稽古、いつもより53倍のご声援を」と述べた。初演に戻し、かつスーパー歌舞伎的要素が強かったから、確かになつか新しいのかも(まさに3代目の精神を4代目の肉体を使って表現する、なのかもしれない。既にこの場面が前回と違う)。
春猿さん、ここだけの出演なのはもったいない。
実は丹波与八郎である自然薯の三吉(猿之助)、重の井姫(笑也)という3つの名前からも「重の井子別れ」を下敷きにしたお話なんだとわかる。右近さんの時は出てこなかったバカ殿・由留木馬之助が出てきたのは、初演に戻したポイントの1つだろう。由留木家のお家騒動の話なんだから、バカ殿(すぐに殺されてしまう)とその弟の調之助(猿之助)が出てきたほうがわかりやすいと思った。
与八郎と重の井の道中で2人がはぐれるのは定番か。姫は悪徳人買い・赤羽屋次郎作(寿猿)の手に渡り、葛篭に押し込められてしまう。次郎作が姫の入った葛篭を背中に背負って歩く姿は、先月見たばかりの「法界坊」のパロディか。寿猿さん、頑張るなあ。
石部宿→水口宿→土山宿→坂の下→関宿のどこかで、猿之助・男女蔵(お久しぶり~。老け役専門になっちゃった感あり)・右近・門之助・寿猿・猿弥・弘太郎のだんまりがあって嬉しかった。
弥次喜多の猿弥・弘太郎さんは草津野路の玉川で初めて登場。その後、狂言回し的にところどころに顔を出す。右近さんの前回公演時は弥次喜多ではなく2人の女房(笑三郎・春猿)が活躍していたが、これも初演時に戻したのかな。2人の個性が活かされた役だと思ったが、猿弥さんの悪役も見たかったような気がする。
桑名七里の渡口では舞台が海中となる。ぶくぶくと泡が立ち、ヒトデ、イセエビ、タコが出てきて、見事な海中世界。悪役・赤堀水右衛門(右近)、赤堀官太夫(男女蔵)と与八郎が由留木家の重宝・九重の印を巡って争う。右近さんは舞台での宙乗り、猿之助さんはクレーンの先に吊るされて客席上にまでせり出てくるから客席は大喜び。与八郎は大クジラの背中に乗って浮上する。クジラの潮吹きまで見せてくれてウケた(クジラも前回はなかったような)。

池鯉鮒八ツ橋村では「當世流小栗判官」の浪七住家みたいな家が出てきたから、展開もそれに近いのかと思ったら全然違い、「天竺徳兵衛」の「小平次内」の場も連想したが、それとも違った(なんか、イメージとしてどうしてもそういうものが思い浮かんでしまう)。「すし屋」がちらっと入っている? ここでは米吉クンのお袖が可憐だった。お袖とその姉お松(猿之助)の両方と契っていた色男・由井民部之助の隼人クンは丁寧に演じていてよかったが、猿之助さんと恋仲というのにはちょっとムリがあるような気がしたのは、役者としての経験の差によるものだろうか。この3人の関係(お袖の恋人なのに江戸吉原で遊女お松をはらませた民部之助)がわかると、客席が思わず笑った。お松が母親のための50両と引き換えに身を売る場面は六段目のパロディか。この池鯉鮒八ツ橋村の場は、前回上演時にはなかったと思う。
お楽しみ岡崎無量寺では、お袖・民部之助にいつの間にか赤ちゃんがいた(前の場ではいなかったような…)。おくらは段一郎さん(前2回は猿琉さんだった。でも、おくらといえば辰巳さんを忘れられない…)。ここは段一郎さんと猫の化物の猿之助さんのダブルアクション。「四の切」でおなじみの欄間抜けも猿之助さんが見せてくれた。大暴れした猫の怪は宙乗りで去っていく。宙乗り狙いの席だったからそこはバッチリだったけれど、やっぱりきれいなカメちゃんを見たかったな。そもそもネコは苦手なんだもの。
この後、日本駄右衛門(猿之助)や赤星十三郎(寿猿。コミカルな化粧)まで出てきちゃうから面白い。前回はこの2人は出てこなかった(駄右衛門は人相書きだけ)。
「大井川」では江戸兵衛と与八郎の早替りが早い!!
江戸兵衛の銃に撃たれた与八郎がいざり車に乗り、重の井が引いて歩くのは小栗判官と照手姫の姿に重なる(実際、3年前の「當世流小栗判官」は亀治郎×笑也だったし)。竹三郎さんの悪婆風小屋頭おなみがわずかな出番ながら存在感があり、かっこよかった(箱根賽の河原)。この辺も前回とは違ったかも。
大滝では滝の背景画が前に倒れてきて本水となる。1階前方席の人たちはビニールを配られていた。以前は私もビニール席を夢中で取ったものだが、もう何年も水がかかる経験はしていない。手前の水槽にポンプか何かが2台置かれていて、グレーのカバーがぐしゃぐしゃっとかけられていたが、ポンプは2台ともカバーから顔を出していたし、カバーのかけ方も中途半端で作業途中のように見えてしまった。水中では男女蔵、猿四郎(赤堀源吾)、猿之助、門之助(石井半次郎)、亀鶴(奴逸平)がばしゃばしゃ!!
そういえば、逸平は前回には雲助逸平として賽の河原に出ていたけれど、今回の逸平は与八郎・重の井姫を助けるべく、あちこちに登場する。亀鶴さんの奴は似合うし、うまい。
大詰「浄瑠璃 写書東驛路」。弥次喜多が演舞場の番付を懐から取り出し、役名読み上げ口上を行う。とざいとぉ~ざい。ここは「お染の七役」みたい。中では土手の道哲の願人坊主がとてもよかった。手にもった桶の底が「三社祭」の「悪」になっていた。カメちゃんで「うかれ坊主」見たいぞ。お半と長吉が傘と筵の中で入れ替わるところは、今回は上からのせいか、またほんのわずかながらもたついたせいか、少しからくりが見えた。見えたところでよくわからないんだけど…。五段目の稲藁みたいな場面もあった。
最後日本橋では赤堀水右衛門(右近)vs 奴逸平(亀鶴)・石井半次郎(門之助)・与八郎(猿之助)で「これぎり~」。この時カメちゃんは「大入」といくつもの文字が入った白い着物姿であった。
猿之助さんの18役の中では私はやっぱり女形がしっくりくる。とくにお松、芸者雪野、江戸兵衛女房お六といった仇っぽい役が好きだ。
序幕の出だし、猿三郎さんがセリフに詰まってしまい、はらはらした。セリフが入っていないというよりは、一度詰まったために頭が真っ白になって出てこない、そんな感じだった。心の中の応援が通じたか、どうにか乗り切ってほっとした。
<上演時間>「序幕」60分(16301730)、幕間15分、「二幕目」70分(17451855)、幕間30分、「三幕目」60分(19252025)、幕間25分、「浄瑠璃」45分(20502135
実際は2130頃終演した。上演時間は4日現在、序幕が58分、二幕目が67分、三幕目57分、浄瑠璃43分と少しずつ短縮されて、終演が2125になっている。

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コメント

おはようございます
演舞場は昨日昼の部のみ観て来ました
ロビーのチラシに、第18回みつわ会公演のものがありました
ご存知かもしれませんが
12/9~12/14(六行会ホール)
そこに市川春猿さんが出演します
配役は書かれていませんが
川口松太郎の「遊女夕霧」で夕霧を演じられると思います(演出は大場正昭さん)
(夕霧は正月三越での一世一代の波乃久里子さんと連続となりますね)
「みつわ会」は久保田万太郎作品を上演してしてきた会ですが、今回は「万太郎と松太郎」というタイトルとなっており、観比べという趣向かと思います

投稿: うかれ坊主 | 2014年10月 8日 (水) 09時21分

うかれ坊主様
おお、演舞場ご覧になりましたか。私は昼の部は来週です。
みつわ会のチラシ、私も見ました。一度見てたいと思うのですが、スケジュールがどうなりますか…。

1月の三越で夕霧かかりますでしょうか。「大つごもり」と「寒菊寒牡丹」では? この公演は見に行くつもりでおります。

投稿: SwingingFujisan | 2014年10月 8日 (水) 14時35分

うっかり八兵衛でした
「大つごもり」と「遊女夕霧」を混同していました
申し訳ありません
今回の帰国の観劇はこれで終了の予定です
新国立劇場の「ブレスオブライフ」を観たいのですが、夜7:00開演で翌朝が4:00起きなので流石に二の足を踏んでいます・・・

投稿: うかれ坊主 | 2014年10月 8日 (水) 16時45分

うかれ坊主様
再度のコメントありがとうございます。
久里子さんの夕霧はまだ見たことがないので、もし今後機会があるようでしたら見ます。

今回も精力的にご観劇なさって充実した休暇をお過ごしになられたようですね。どうぞお身体第一で無事に戻られますように。

投稿: SwingingFujisan | 2014年10月 8日 (水) 16時56分

今日、歌舞伎座の夜の部を見て参りました

「みつわ会」の公演ちらしをもらったのですが、春猿さんは遊女夕霧でなく、舵(かじ)の方に出演されます(市川笑三さんも共演)
てっきり、夕霧をされると思っていましたが意外でした(10/8の予想コメントを訂正させていただきます)

取り急ぎご連絡致します

投稿: うかれ坊主 | 2014年11月 2日 (日) 00時03分

うかれ坊主様
おはようございます。

ご観劇、お疲れ様でした。

みつわ会の訂正情報、ありがとうございます!!

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月 2日 (日) 10時04分

今日は明治座の昼の部を観て、夜は新派でした
「女團七」結構でした
竹三郎さんには頭が下がります
四代目が将来「四十八撰」を選定するとすれば、「女團七」きっと選ばれると思います
(終演が2時10分過ぎとかなり早かったですね夜の部と比べると時間当たり単価が相当違うなぁと思ったりしました・・・時間空いたので、演舞場に行く間を利用して神保町の古本祭りに顔出してきました すごい人出でした)
さて新派は、口上のゲストは池畑さんでしたが、なかなか良かったです!!
思わずもらい泣きしました
「鶴八鶴次郎」も「京舞」も何回となく観ていますので、物故された方を思い出しながら観ておりました
大向こうさんがいなかったようで少し寂しかったです「みずたにぃ」「なみの」「あおやぎぃ」と言った大向こうがやっぱり新派にも欲しいです
東京も四箇所で公演していると大向こうさんも手薄になると思いますから仕方ないですかね
わたしの方は2日間で3公演の強行軍でした
あすは朝8:30には成田着ですので、早めに寝ます
コメントがまたしばらくできなくなりますが、さまざまな情報は愉しみに拝見させていただきます!!(長々と失礼しました)


投稿: うかれ坊主 | 2014年11月 3日 (月) 00時09分

うかれ坊主様
こんばんは。お疲れの中、またお忙しい中、コメントありがとうございます。
明治座夜の部終演はほとんど9時近くですね。10月の演舞場もそれくらいでしたから、猿之助さん、身体こわさないといいのですが。
女團七はこれまで見たことがないので、とても楽しみです。

新派は久里子さんに勘九郎・七之助兄弟というだけで泣きそうです。日替わりゲストに惹かれて何回か見たいところですがそうもいかず…(演舞場も上演時間5時間ですか‼)。

そうか、今月は都内4座なんですね。演舞場でも時には大向こうかかってほしいですね。

そういえば先週から古本祭だったんですね。昔はよく行ったものです。何を買うわけでもないのに、ただ本を見ているだけで楽しかった思い出があります。

どうぞお気をつけて。

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月 3日 (月) 02時16分

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