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2014年10月27日 (月)

錦秋名古屋顔見世夜の部

1020日 錦秋名古屋顔見世歌舞伎夜の部(日本特殊陶業市民会館)
141027nagoya1 事前に調べた終演時刻815に合わせて、金山→名古屋→東京の時刻表を自分なりに作っておいたのだが、会場では805終演になっている。それで昼夜の間にまずは会館から金山までの所要時間をシミュレートし、それから乗換案内と前日もらっておいた新幹線時刻表を突き合せ、23通りの時刻表を作り直した。
実際の終演は数分遅れたので焦ったが、金山まで走りに走り、一番早い中央本線にぎりぎり間に合った。おかげで東京に一番早く着く「ひか141027nagoya2 り」(「のぞみ」よりも早い)にも余裕で乗れた。「ひかり」はがらがらで楽だった~。御園座じゃこうはいかないわね、金山は便利、とつくづく思ったのでした。
「十種香」
苦手な演目で、とにかく大半寝てしまう。今回はかなり気合を入れ、何とか頑張ることができた。とはいえ、動きのない時間が多いし、きつい。
菊之助さんの勝頼が美しい!! 出てきた瞬間その美しさにため息が出る。赤い着付に紫の裃姿勝頼を真ん中に、下手に黒い着付で正面を向いた濡衣、上手に赤い衣裳で後ろ向きの八重垣姫と、絵として実に美しく、ビジュアル的によくできているとあらためて感心した。
時さまの八重垣姫は人形振りではないのに、文楽人形みたいな動きに見えた。濡衣のほうが年上かもしれないことを考えると、梅枝クンとのバランスがちょっと…なところもなくはないのだけど、じゃ逆がいいかというとそうでもない。時さまはやっぱり赤姫の人なのだ。そして梅枝クンは声も低めに抑えて落ち着きがあり、年長者だと言われればそうかもしれないと思える。腰元として、姫との身分の違いも感じる。3年前、「頼朝の死」で孝太郎さんの小周防に対し年長の腰元音羽を見事に演じたことが思い出された。バランスがちょっと気になったのはこちらに父子だという意識があるのが邪魔しているのだろう。
謙信は團蔵さん。これまで、團蔵さんのこういう役にはあまり大きさを感じなかったのだが、今回は謙信が大きく見えた。
毎度、こういう演目をもっと楽しみたいと思うのだけど…。
「身替座禅」
「十種香」で頑張ったしわ寄せがこっちへ来て、不覚にも途中寝てしまった。
右京(菊五郎)が花子の許へ出かけるとき、「いってらっしゃい」の声が2度かかった。1度目は3階からでわずかにタイミング早かったねえ。2度目は1階から聞こえてきた。
本当のことを知った玉の井(左團次)が悔しさのあまり「イヒイヒイヒ」と泣くと、客席は共感を覚えたのか微笑ましく(っていうのも変な表現だけど)思ったのか、そういうあたたかい拍手が起きた。
昼の部の松王でつらそうに見えた権十郎さんは、太郎冠者でも少しそんな感じを受けたが、こちらはかなり頑張っていた。
菊五郎さんは花子のもとから帰ってきた時がなまめかしかった。
左團次さんの迫力凄い!! 右京でなくても怖いわ。
蔦之助さんがきれいで踊りもさすがにうまかった。立ち回りもやる人とは思えない。

「伊勢音頭恋寝刃」
歌舞伎座との競演となったこの演目、東京と名古屋とでは色々な違いがみられた。音羽屋型と松嶋屋型の違いらしい。ちなみに音羽屋型は多分初めて見ると思う(見ていたとしても、覚えていない)。そういえば、この演目、名古屋はほぼご当地と言っていいんだね~。
まず、舞台。上手側に部屋があるのは両方とも同じだが、たしか歌舞伎座では座敷に続いた一間であったと記憶しているが、名古屋ではその部屋は2階になっていた。
北六実は岩次が刀をすり替える場面は、名古屋では衝立の陰で、客からもその様子が窺えるようにやっていた。歌舞伎座では舞台に出てやったか暖簾(?)の奥でやったかよく覚えていないが、名古屋とはちょっと違っていたような気がした。
腹を立てた貢が刀を手にしようとして喜助に預けたことに気がついた時の見得は、歌舞伎座では後ろに両手をまわすが、名古屋では扇を引き裂いていた。ここは音羽屋型のほうが「見せる」なと思った。
びっくりした違いが2つある。その1つは、青江下坂の折紙が早々と貢の手に入ること。刀を間違えて渡されたと思って戻ってきた貢が他の刀を調べて全部違うと絶望しているところへ、お紺が2階の一間から投げた去り状が実は折紙であった。えっ、こんなに早く折紙が手に入ってお紺の真意がわかっちゃうの? 最後の最後までもたせる松嶋屋型のほうがドラマチックではないだろうか。さんざん人を斬った後で、貢の持っている刀が本物の青江下坂であることがわかり(ここはどちらも一緒)、なおかつ折紙が揃うということで有難味が増すのではなかろうか。折紙は既に入手しながら「喜助、よくも違う刀を渡したな」「それが本物でございます」「ナニ、かたじけない」ではちょっと肩すかしを食った気がした。しかしここでお紺が折紙を投げるから上手の一間は2階でなくてはならなかったのか、と納得。
斬られた万野は歌舞伎座では舞台の上に美しく倒れていたが、名古屋では上手奥へ引っ込んで死んだ。また、万野を殺した貢は2階へ行き、岩次実は北六の首を切り落すが(ここは歌舞伎座版にはなし)、その時寝ていた首が客席のほうへと回って向きを変えた。妙にリアルな首だなと思ったら、布団に穴があいていて、本物(左升)が穴から出ているのであった(「盟三五大切」の小万の首みたいに)。貢の殺人は歌舞伎座のほうが派手で、意外と立ち回り要素が少なかったように思う。
もう1つびっくりした違いは、伊勢音頭の踊りがなかったこと。終演時刻が近づくにつれ、ただでさえ遅れ気味なうえに、ここまで踊りがないってことは、ラストに踊るのか、それじゃあもっと遅くなっちゃう、とやきもきしていたら、結局踊りの場面は入らなかった。時間的には助かったが、「伊勢音頭」とタイトルにもあるのだから、やっぱり物足りない気がした。
菊之助さんの貢は柔らかく美しく素敵だった。キレるところは、徐々に腹が立つというより突然爆発したように見えた。お紺の縁切を聞いている間の貢は怒りよりも悲しげ、寂しげであった。万野を斬ったことで妖刀に魅入られるスイッチが入ったことが鮮明にわかった。
お紺の梅枝クンは貢のために何が何でも折紙を手に入れるという肚の据わった様子が見えた。
萬太郎クンの今田万次郎は、歌舞伎座の梅玉さんと比べるのは気の毒としてもちょっと無理があったかも。
右近クン(お岸)はとてもきれいで、廓の女の雰囲気も感じられてよかった。
菊三呂さんの千野はリアル意地悪風だった。そういえば歌舞伎座ではこの役は小山三さんで、意地悪そうに見せない意地悪さで年輪を感じさせたっけ。
亀三郎さんのお鹿は、あか抜けない顔がかわいくて体もそんなに大きくないから万野にだまされていたのが可哀想だった。これまで、お鹿は笑いを取る三枚目として捉えていたが(そういうことが多かった)、亀三郎さんのお鹿は決してコミカルではない。このお鹿を見ていたら、そのほうが貢の置かれた立場がくっきり浮かび上がり、物語の進行としてもしっくりくるように思った。貢に貢いだ(シャレじゃないよ)証拠を箱から出すとき、最初に手にしたのはお約束の顔見世番付であった。ここだけは笑いが起きたよ。
松緑さんの喜助は、いかにも包丁が似合いそうでかっこよかった。
時さまの万野はもっと大らかに意地悪するかな、あるいはケンのきつい陰湿な意地悪になるかな、と思っていたら後者であり、歌舞伎座でみられたような万野のいじめに対する笑いは起こらなかった。ここで笑わせるのがいいのかどうかはわからないが、おかげで緊迫感が盛り上がった。
歌舞伎座と名古屋、両方見たことで型や雰囲気の違いがわかって興味深かった。全体的にはわかりやすく気軽に楽しめる演目が多かったので、昼夜通しでもそれほど疲れることはなかった。
<上演時間>「十種香」50分(16001650)、幕間30分、「身替座禅」55分(17201815)、幕間30分、「伊勢音頭」80分(18452005

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コメント

時さまの八重垣姫について
「人形振りではないけれど」とありましたが
おそらく「糸にのる」お芝居だったのでは・・・
お爺さんの3世時蔵が、この糸にのるのがとても上手かったと聞いています
そうした血のようなものが受継がれているのかもしれません

万野は、名古屋の方が良さそうですね
やっぱり、貢がかっとするような突っ込んだ芝居の方がリアリティがあると思います
東京の玉さんの方は、若い勘九郎に対して、配慮(遠慮)があったのかもしれません

投稿: うかれ坊主 | 2014年10月28日 (火) 06時51分

うかれ坊主様
おはようございます。コメントありがとうございます。
「糸にのる」--なるほど、そうですね。時さまの八重垣姫は何回かみていますが、ミーハー観劇人の私はこういう演目は苦手でこれまでほとんど意識していませんでした。3世の血は梅枝クンのほうに受け継がれているように感じていましたが、時さまにも当然ながらその血は流れているんですものね。

ユーチューブで、孝夫・貢、玉三郎・万野、雀右衛門・お紺、喜助・勘三郎、お鹿・田之助を見ました。やはり笑いが起きていました。あの玉三郎があんな意地悪しているというギャップが可笑しいのかなとも思いましたが、玉三郎さんの万野には貢を小バカにしたようなところが感じられて、それが笑いを呼んでいたのかもしれません。それはそれで面白いし、人はバカにされれば腹が立つと思いますので…。ただ、個人的にはぐいぐい押していく名古屋のほうが芝居に入れて好きです。

投稿: SwingingFujisan | 2014年10月28日 (火) 09時23分

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