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2014年10月17日 (金)

華あり笑いあり涙あり、面白かった「双蝶々曲輪日記」

1013日 双蝶々曲輪日記(国立劇場大劇場)
せっかくの12時開演なのに、事前に近美に寄っちゃったから、結局11時開演より早い時間に家を出ることになり、眠いのは相変わらず。でも、国立劇場の着到(鳴物)を聞くことができた。休日なのに空席が目立つ。
「新清水の場」
初見だが、2年前の演舞場でこの後の段の「井筒屋」を見ていたので、物語はよくわかった。「新清水」は原作の「浮無瀬」「清水観音」に「井筒屋」も盛り込んであるという。「井筒屋」で大騒ぎになる佐渡七殺しがここに入れられているのだ。ただ、「井筒屋」では殺しの現場はなく与五郎の話でわかるようになっていたが、ここでは佐渡七に襲われて逆に殺す場面がある(殺しの場面、よくわからなかった)。悪役・権九郎が松江さん、佐渡七が宗之助さんというのは珍しい配役だろう。権九郎は何回目を凝らしても松江さんに見えなかった。2人とも愛敬があって、そういえば「井筒屋」の権九郎・松之助さんも愛嬌たっぷりだったなと思い出した。
芝居としては「井筒屋」のほうが面白かったが、染五郎さんの与兵衛⇔与五郎早替りに、桜の清水での立ち回り、宙乗りなどで舞台が盛り上がって楽しかった。宙乗りは清水本堂舞台で平岡郷左衛門(錦吾)・三原有右衛門(錦弥)に襲われ、傘を開いてふわっと飛んで逃げる場面に使われていた(製作発表会見で染五郎さんが「宙乗りをお見せしたい」というようなことを言っていたので楽しみにしていた。あ~これがそれか、と思った。舞台での宙乗りだったから3階席からはちょっと遠かったわね~)。傘の周りには笛がいっぱいぶら下げてあった。今の与兵衛は笛売りだから。この本堂舞台は、はじめ舞台(こっちは劇場の舞台)の高さにあったのがす~っと高い位置にセリ上がったのであった。
「堀江角力小屋の場」
与五郎のつっころばしぶりが色気もありコミカルで染五郎さんに合っている。しかし吾妻(高麗蔵)と与五郎のじゃらじゃらは、のんきなものだ。だいたい、主人や恩人の放蕩のために下の者が殺しやら何やら窮地に陥るっていうのに。2人の話から、佐渡七と権九郎の悪だくみが露見し与兵衛の佐渡七殺しは許されたことがわかる。宗之助さんも松江さんも序幕のみの出演でもったいない。
高麗蔵さんはモテモテというほどきれいではなかったが、立居振舞とか風情とかがよくて、やっぱり好きだ。
濡髪の幸四郎さん、デカい‼ あんまり大きくて、ここではそれしか感想がない。
放駒の染五郎さんも濡髪の大きさに対する若さがよかった。濡髪がわざと負けたことを知った時の怒りが凄まじくて、ちょっとびっくりした。
「大宝寺町米屋の場/難波芝居裏殺しの場」
米屋も初見。
魁春さんは出てきただけで、風情がある。女房や妹、母親に見えてはいけない、とプログラムで語っているが、大丈夫、放駒を心配する姉にちゃんと見えた。
放駒って意外にもワルだったんだ、というかワル仲間とつるんでいても本当はいい子。それがわかるのは「たった1人の姉に頼まれた留守番をさぼるわけにはいかない」というところ。米屋としての仕事もちゃんとしていたし。
姉の留守にやってきた濡髪(放駒が呼び出したのだ)との達引は、幸四郎×染五郎親子の達引となって面白い。米俵を持ち上げて争うのは「賀の祝」の俟つ王vs 梅王を思い出した。
その後、弟をワル仲間から切り離し喧嘩ばかりの生活から立ち直らせたい姉の一心で放駒は改心し、濡髪と義兄弟の契りを結ぶことになるのだが、その姉の打った芝居がちょっと苦しいかなあという感じ。それでも、姉弟の間に通い合う情にはほろっとさせられた。
難波裏では与五郎の吹替えに、後向きの放駒がセリフをつけていたから客席から笑いが起きた。最近、こういう場面(姿は吹替え、セリフは本物)で客が笑うことが多くなってきた。

「八幡の里引窓の場」
繰り返し上演されるだけあって、あらためて見ると、やはり一番面白かった。染五郎さんはどの役もよかったが、ここの十次兵衛=与兵衛がニンも合い、華もあり、やわらかさと郷代官としての気概がうまくミックスされて、また丁寧に演じていて(今まで丁寧じゃなかったという意味ではない)、私は3役の中で一番好きだ。とくにさりげなく濡髪に逃げ道を教える場面ではうるうるし、路銀を濡髪の手に持たせる場面では涙が出た。
染五郎さん、今朝の「あさイチ」のプレミアムゲストだったねえ。いつものように「マッサン」続きでベッド上でのんびり見ていたから、びっくりして飛び起きたわ。昨夜寝たのが3時過ぎだったのでもうちょっとぐずぐずしていたかったんだけどね。それにしても染五郎さん、芝居の前のテレビ出演大丈夫なの?と心配したら、今日は16時開演だったのね。
幸四郎さんはここまでの場面で存在感の大きさを示したが、ここではそれに加えてお幸の子としての濡髪ゆえの苦悩が胸にしみた。セリフももぐもぐしてなくて聞き取れたから、濡髪の気持ちがよくわかった。
芝雀さんのお早は色街の出である色気と、与兵衛の女房としてのこまやかさ、やさしさが身からにじみ出ていた。
東蔵さんのお幸。デカい体の息子を幼子に対するように喜んで迎え入れたそこだけで、母親の愛情が伝わってくる。爪に火ともすようにして貯めた大切な金を十次兵衛に差し出し絵姿を売ってくれという場面からしばらくの間、涙が止まらなかった。
十次兵衛の投げた銭が濡髪の頬に当たり、お早が「濡髪さん、お前のほくろが取れたぞえ」と叫ぶと客席からどよめきが起きた、きっとみんな、息を詰めて成り行きを見守っていたんじゃないだろうか。
でも、一度は逃げると決めた濡髪が十次兵衛へのすまなさから心を変える→どうしても縄にかかるのかと問い詰める母→カミソリで死のうとする母→刀をもって自分も死ぬと言うお早という場面では客席に笑いが漂った。先日の「野崎村」でもお染・久松・久作がそれぞれ死ぬのは自分だと争う場面で笑いが起きたのは記憶に新しい。
趣向の華ではコミカル系担当だった廣太郎クンがおとうさんの友右衛門さん(平岡丹平)と三原伝造役で出ているのが私としては嬉しかった。兄殺しに対する怒りを声を低く太くして表現し、また友右衛門さんとのバランスを取っていたのがとてもよかった。廣松クンは「新清水」に出ていたようなのだが、気がつかなかった。後から、あれがそうだったのかとわかっても、あんまりちゃんと見ていなかったので「遅い‼」
放蕩坊ちゃんへの恩義から運命に翻弄される濡髪、慎ましく生きている家族に起きた波乱――濡髪の行く末を心配しながら、ほろりとした気分で帰途についた。
<上演時間>「新清水」35分(12001235)、幕間15分、「角力場」50分(12501340)、幕間35分、「米屋/難波裏」50分(14151505)、幕間20分、「引窓」70分(15251635

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