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2014年11月12日 (水)

11月明治座昼の部②:「女團七」

1110日 十一月花形歌舞伎昼の部(明治座)
去年竹三郎の会に行かれなかったのでもう見られないんじゃないかと悲観的だった「女團七」、明治座で願いがかなった。
「夏姿女團七」
書き替えもの、パロディものとしての面白さを堪能した。猿之助さんと竹三郎さんのためにある芝居みたいに2人がぴたっとはまっていた。
そして何と言っても竹三郎さんのパワーが途轍もない。寿猿さんといい、昭和ヒトケタ世代恐るべしである。
以下、あらすじを追いながらなので長くなります。
「序幕 柳橋草加屋の場」
まず芸者たちが花道で團七縞のお梶を褒め契り、最後に「おもだかや~」。芸者たちが去ると、草加屋に喜八(國矢)がやってくる。駆け落ちした遊女琴浦がここにいるのではないかと疑って来たのだった。応対をする女中お松は段之さん。どうも段之さんが出てくるとコミカルなことをするんじゃないかと思ってしまうが、今回は普通に普通だった。國矢さんは抜け出した遊女を詮議する吉原の<若い者>らしく見えてうまいと思った。
お松が喜八をごまかして追い返したところへ清七(門之助)と琴浦(右近)が出てきて、互いの身の上を語り合う。ここで観客は清七が元は玉島磯之丞という侍であり主家の重宝である刀を紛失、その詮議のため道具屋に奉公するうちに養子になったこと、琴浦が実は「はつ」という名の娘で清七のいいなずけであったが父に入り用な金のために吉原に勤めるようになったことを知る。この場面は本家「夏祭」では三婦内で人目につく表座敷で2人がじゃらじゃらしている場面に通じていて(痴話げんかと身の上話の違いはあるけれど)、2人はこんなところにいたら目立って危ないでしょとお松に叱られる。
この2人、門之助さんと右近クンは今年7月の「夏祭」でも磯之丞・琴浦で共演した間柄。こちらの磯之丞はつっころばしではなく、様子を窺っていた喜八を突いたりして元武士らしさを見せる。門之助さんが上品できりっとしていてかっこよかった。右近クンは左斜め横顔を見せた時、頬から首にかけてのラインがとても艶めかしかった。
そんなこんなで揉めているところへ、供侍・森下甚内(猿三郎)を連れた大家のお局が駕籠でやってくる。竹三郎さんの打掛がステキ(猿三郎さんのブログに写真が)。お局は、琴浦は実は播州高砂家の姫君で、証拠の品も持っており、磯之丞との仲も心得ていると言う。主命により迎えに来たと琴浦を連れて行こうとしたその時、奥から声がかかり、お梶(猿之助)が現れる。白地の着物に赤い帯。なんとスッキリとかっこよく美しい‼ この登場シーンだけでお梶の粋、義俠心が見て取れて劇場中がどよめく(このカメちゃんも猿三郎さんのブログに出ています)。このお局、とんでもない食わせモノで、本当はお梶の義母おとらなのであった。おとらは琴浦に横恋慕する大鳥佐賀右衛門に頼まれて一芝居打ったのだった。
いかにも大家のお女中らしい貫録と品格を見せていた竹三郎さんが正体を見破られたとたん、べらんめえ口調に豹変する(すげぇ)。甚内とのコンビでの豹変ぶりは、弁天小僧を思わせる。おとらの開き直りのセリフに、明治座周辺の地名がたくさん入るのが楽しい。まあその凄みの迫力ときたら、年齢のことを何度も出して申し訳ないが80歳を超えているとは思えない。
おとらが帰った後、戸口に佇み花道へ目をやるお梶の姿がかっこいい(この芝居、何度でも「かっこいい」という表現が出てしまう)。

「二幕目 両国橋橋詰錨床の場」
清七を追ってきたおはつ(清七はなんでおはつと別行動になったんだっけ)が、大鳥佐賀右衛門(欣弥)につかまりそうになって錨床へ逃げ込むと、お梶が中から現れる。衣裳は序幕のスッキリ白から團七縞に変わっている。ここは本家「夏祭」と違ってお梶はもちろん出牢とは関係ないけれど、「住吉鳥居前の場」にあたる。お梶がおはつに道案内する時に大鳥の身体を使うのも同じ。
床屋の暖簾は團七役の役者によって違うようで、そういえば海老蔵さんの時は文字も「碇床」だった(今回は向かって右下に「ひゐきより」の文字も入っていた。これも猿三郎さんのブログで見てね)。
おはつが心配になって後を追おうとするお梶を、お辰(春猿)が呼び止める。お辰の衣裳は本家の一寸徳兵衛と同様、藍の弁慶格子。2人の達引(隅田川岸に立つ「川開」「開帳」の立札を抜いて争うのも本家と同じ)を止めに入ったのは釣船の三婦(猿弥)。洒落たセリフ(聞き逃したところもあるが、「○○な猿之助、テレビの露出度も高い春猿、止めるも何かの縁や」っていうような…)で止めようとするが2人はやめない。そこで三婦は逆にけしかけ、大鳥の差している刀を借りたお辰はお梶と刃を交える。ところがこの達引は実はその刀が例の重宝であることを確かめるためのニセ達引で、本当はお梶とお辰は仲良しだった。それが明らかになった時、客席ウケていた。
だまされたと知った大鳥が、おはつをおびき出すためにおとらが磯之丞を連れ出したことを口走る。お梶は止めるお辰を振り払っておとらを追いかける。
「大詰 浜町河岸の場」
いよいよ舅殺しならぬ義母殺しの場である。祭りの櫓(?)の前に駕籠が止まり、駕籠かきと甚内が休んでいる。駕籠を追ってきたお梶(裸足だった。達引の時に草履を脱いだまま駆けつけたのだ)が駕籠の中の磯之丞に声をかけたら、聞こえてきた返事は磯之丞ではなくおとらの声。ここも客席ウケていた。ここからのおとらの意地悪ぶりがめちゃくちゃいやらしくて面白い。
この時はまだ駕籠かきも甚内もいて、これじゃ殺せない、どうなるんだと心配していたら、石の30両を見せる段になってやっとおとらが彼らを追い払った。甚内の猿三郎さんは「何から何まで夏祭り、女に書き替えて」とか言いながら花道を引っこんで行った。
おとらに額を傷つけられても辛抱に辛抱を重ねていたお梶(片方の腿に両手を置いていたのは辛抱立役の心)だが、揉み合ううちにおとらを斬ってしまう。はっと花道へ出たところで、本水を使った雨が降り出す。雨の量はすごく、すぐに舞台に水がたまった。その水を猿之助さんがおとらの帯でびしゃっと叩いたりして客席に散らし、客席がきゃあきゃあいっていた。降る雨に泥まみれ、びしょびしょの身体での立ち回り、竹三郎さんの体力すごい。それに、あらためてあの上品なお局を思い出すと、この薄汚いバアサンが同じ人だっていうのがすごい。本家の義平次以上の存在感と迫力だ。
ついにおとらは力尽き、お梶はとどめをさす。神輿が近づいてくる。急いで井戸に駆け寄る。本家では刀はなかなか團七の指から離れてくれないが、こちらはすんなり刀を置いて、汚れた体と刀に水をかけて洗う。体には2回水をかぶっていた。おとらがつけた頬の泥汚れは1回では落ちず、はらはらしていたら2度目にはきれいになってほっとした。でも、今の季節が季節だから、水をかぶるのはちょっと寒そうに見える。
神輿が来た時には雨はやんでいたが、恐らく神輿の連中も雨の中をかついでいたんじゃないか、だったら彼らの浴衣も濡れていなくちゃ――、多分濡れていたと思う。神輿は本家よりあっさりとさっさと通り過ぎて行った(担ぎ手の1人、やゑ亮さんが腕を骨折されて休演中のようだが、代役のお知らせは出ていなかった。早く回復されますように)。お梶は顔を隠す手拭の端を口でくわえ、刀身を鏡にして髪を直し、袖の水を絞って、神輿を追う。猿之助さんのまさに水もしたたる色気である。
「悪い人でも舅は親」は「悪い人でも義理ある親」。
猿之助さんはやっぱり女方、しかもこういう勝気な女がぴったりで、生き生きしている。懇願する声に本当に情があふれていて優しい。その優しさは唐突に、お君をいたわる袖萩あるいはお蔦に重なった。ただ、絶叫の声は女としてちょっと苦しいかも。それでもその絶叫に込められた心がぐっと伝わってくるからそれでいいと思う。
「夏祭」の主人公を女にしただけでなく舞台を江戸に置き換えた芝居だが、さほど空気の違いがわからなかった。言葉は江戸弁だったかなあ。まあ、脳にこってりの大坂、あっさりの江戸とインプットされているその程度には感じたかも。いずれにしても私がニブいんだろう。
上演時間が短いという意見もあろうが、私にはちょうどいい。
<上演時間>「高時」55分(11001155)、幕間30分、「女團七」序幕25分(12251250)、幕間5分、二幕目20分(12551315)、幕間25分、大詰30分(13401410

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