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2014年11月29日 (土)

「四天王楓江戸粧」、千穐楽

1125日 十一月花形歌舞伎夜の部(明治座)
平成8年、三代目猿之助が200年ぶりに上演したという「四天王楓江戸粧(してんのうもみじのえどぐま)」は昼夜通しで全編を上演したそうで、その再演は不可能と言われていた。しかし、不可能と言われれば言われるほどやりたくなる当代である。正味4時間弱の面白い芝居に作り上げていた。
スッポンから黒紋付きの猿之助さんが上がってくる。「私、四代目」で間を置く。当然観客は「市川猿之助でございます」と続くと思っている空気になる。すると猿之助さんの口から出たのは「鶴屋南北でございます」(先月の南北は錦之助さんだったね)。で客席爆笑(うまい具合に両方とも四代目だったね‼)。そして南北先生は「こちら側(花外)のお客様にはしばしお邪魔でしょうが」と花道七三に腰をおろして観客気分で芝居を見ようと言う。ところが幕があいたのに口上の席には誰もいない。慌てて南北先生、口上の席につき、黒紋付きを脱ぐと、鮮やかな水色の裃姿になった。上演の経緯を語った後、「昼夜で上演したものを夜の部に縮めたので筋など二の次」と笑わせる。筋を追っていたのではレポも大変になるので、省略。簡単にまとめれば、序幕が藤原純友の妻辰夜叉御前が甦り、その弟である左大臣高明とともに天下を狙う悪事、二幕目は平井保輔、その母幾野、兄嫁和泉式部、その妹橋立の物語、三幕目は「暫」「土蜘蛛」のパロディ、大詰は平将門の息子相馬太郎良門と妹七綾姫が出てきて…。とまあややこしいと言えばややこしい。四天王は渡辺綱(序幕)、坂田公時(三幕目)、碓井定光(三幕目)、卜部季武(大詰)。
王朝あり、世話物あり、パロディあり、妖術あり、チャリ場あり。そういえば、大向こうさんはいなかったみたいで、かかる声は女性ばっかり。澤瀉屋の公演では本当に女性の声が多い。
以下、箇条書きで。
「序幕 岩倉山の場」
・悪役、左大臣高明の亀三郎さん、なんて言ったって声がよい。三幕目の「暫」のパロでも出てくるが、花形が花形でなくなるころには不気味な公家悪もできる大きな役者になっているだろうと思った。
・高明の命で盗み出された天皇の遺文には何も書かれていなかった。高明は特殊な墨で書かれたもので、お湯を書ければ文字が浮かぶはずだと見抜く。しかし、盗んだ本人(段一郎)が「悪事を見た。頼光公に告げよう」と口にしたため、辰夜叉(猿之助)はその遺文を燃やしてしまう。どうして、声に出して言っちゃうかねえ。
辰夜叉は渡辺綱(右近)が現れると「やられるわけにはいかない。明治座に出て20分で消えるとはお客も望まない」と嘯いていた。綱は「客を味方につけるとは…」。
・渡辺綱は巨大蜘蛛(辰夜叉の化身)に羽交い絞めにされ、蜘蛛と一緒に舞台上で宙乗りをし、大屋根の上におりるが、取り逃がしてしまう。「取り逃がしたか。残念だあ」は男之助と同じである。
・辰夜叉が吊るされた形でスッポンから出てきてそのまま宙乗り。狙った席を取ったつもりだが、宙乗り小屋の真下過ぎた。でも、とにかくこちらへ向かっての宙乗りだから満足満足。
「二幕目第一場 一條戻橋の場」
・なんと、男夜鷹が出てくるという珍しい場である。竹三郎さんの遣手さぼてん婆(?)が、女團七のおとらに続いて凄まじい。
・さぼてん婆が2人の夜鷹に名前を聞くと「弥次郎兵衛に喜多八」と答え、「それは先月だった」。そう2人の夜鷹は猿弥さんに弘太郎さんなんである。おまけに2人に加えて猿之助さんまで男夜鷹。これが可笑しいのなんのって。弘太郎さんには坊主(澤路)、猿弥さんには子守(喜昇)、猿之助さんには後家(寿猿)と客がつく。
・寿猿さんの後家が大ウケ。女形が珍しいうえ「来月、亭主の忘れ形見が生まれるが、男日照りで(とは言わなかったがそういうこと)云々」。ことが終わって大満足めろめろの寿猿さん、セリフが怪しいのはそのせいかしら。手拍子に合わせて踊りながら花道を去る。竹三郎さんが向こうを向いて手拭で口元を隠し、マジで笑っていた。猿之助さん、「あれで86歳だから」と呆れると竹三郎さんが自分もだという風情で何か言う。「あんたもか」と猿之助さん。
・猿之助夜鷹(名前は袴垂の安)は実は男から小金を巻き上げる盗賊で、もう1人ひっかけようとした相手がなんと母親(秀太郎)であった。この安、さらに実は平井保昌の弟保輔なのであった。ここでは、「助六」とか「番町皿屋敷」で母親あるいは伯母に意見される場面を思い出した。
「二幕目第一場 平井保昌館の場」
・母親の手で兄の館に連れ戻された保輔をさぼてん婆が訪ねてくる。安を足蹴にして刀を突きつける場面がある。「昼の部に続いて2度までも(中略)。婆のくせに」との猿之助さんのセリフに客席ウケる。安は刃物を見ると身がすくむという奇病の持ち主(奥田英朗「空中ブランコ」に先端恐怖症のヤクザが出てきたのを思い出した。その前に、刃物を見ると乱心する蘭平を思い出さなくちゃね)。さて、安すなわち保輔の母が何かを日の中に投げ込むと、その奇病は治るのであった。

「三幕目 花山御所の場」
・立役の官女たちが出てきたから「三笠山御殿」かと思ったら、いじめはなかった(ほっ)。猿四郎さんの女方が一番迫力あった。官女たちのセリフは先月の公演とかけたり、楽屋落ちみたいなことが入って笑いどころたっぷりだった。
・頼光許婚花園姫の笑野さんがきれい!!
・花園姫、平井保昌妻和泉式部(笑三郎)らが高明の命で危うくなった時、鎌倉権五郎ならぬ碓井定光(右近)の「しばらく~」。
・二幕目で「十握の宝剣」が宮中で紛失したことが問題となっており、三幕目のこの場面で高明がそれを見つけたと言っていたのを定光がそれは偽物だと言い、鬼童丸に本物を持ってこさせる。ここは「寿曽我対面」風? 
・この鬼童丸が團子クン。とても立派だった。どうしても刀を捧げ持った腕が動いてしまうが、体は動かさないように頑張っていた。
・そこへ辰夜叉が「しばらく~」。で、右近さんが「しばらくにしばらくとは」。すると、辰夜叉は超特大蜘蛛に乗って姿を現した。猿之助さんが團子クンのことを「従兄の小セガレ」って言っていた。定光の刀で辰夜叉は骨になった(「再岩藤」みたい?)。
・團子クン、立ち回りも魅せた。右近さんと動きを合せてすり足をしたり、1人で6人を相手にしたり、回転したり(軸が大きくずれることはなかった)、見せ場たっぷりで、子どもって成長早いなあと驚くとともに、ちっとも舞台に出ないなと心配していたから嬉しかった。決まりもきっちりしていたし、見得もとても上手。六方までやったんだよ!! これで体が動かなくなればもっとよくなる。
・やっと頼光(門之助)登場。頼光が蜘蛛幕を切ると舞台には土蜘の巣が設えられていた。蜘蛛の精=辰夜叉に頼光、公時(弘太郎)、定光がとどめを刺す。やっぱり門之助さんは貴公子だ。
「大詰第一場 地蔵堂の場」「大詰第二場 紅葉ヶ茶屋の場」
・寿猿さん2役目は紅葉ヶ茶屋の大家。お尋ね者の絵姿を持ってきたのだが、そこにセリフが書いてあったのか茶屋主人の卜部季武(猿弥)に「何もかも書いてあっていいですね」と言われていた。
・第一場で猿之助さんの狐が出てきたが、なんで出てきたんだか…と納得いかない気持ちでいたら、第二場で話がつながった。長くなるから詳細はやめておく。狐は忠信に繋がるから、客はみんなそういう目で見ていたと思う。狐姿で二度目の宙乗り。紙ふぶきが宙乗り小屋から勢いよく吹き出された。きれいな紙ふぶきを持ち帰ることは控えた。記念品はもう増やさないからね。
・七綾姫(先月の「金幣猿島郡」でも七綾姫が出てきたよね。あの七綾姫は将門の妹。ここでは将門の娘。ややこしい)の尾上右近クン、雪の中での立ち回りが実にカッコいい。パワーもすごい。形もとってもきれい。
4人返り越し、花道から舞台への刀投げ(相当な距離があったけど、ナイスピッチでナイスキャッチ)、花道では猿之助さんがハシゴに乗り、平らになったハシゴの中間点に乗ったまま本舞台へ。雪がどっと落ち、海辺の風景になる。
・上手から猿四郎、猿弥、猿之助、右近、亀三郎が並び、めでたしの中、朝日が昇る。「又の日を」「さらば」で5人は座り、猿之助さんが「東西。奮闘公演はこれぎり」の後、三段で刀を高く差し上げて見得。幕。
1回目のカーテンコールは四天、猿四郎、右近、猿弥と團子(手をつないで出てきた。團子クンは蜘蛛の糸を投げた。やりたかったんだろうな)、亀三郎、猿之助。2回目は上手から右近、亀三郎、猿之助、團子、猿弥、猿四郎で、花道まで出てきて挨拶した。お疲れ様、カメちゃんの奮闘公演。

あんまり長く書いて、我ながらくたびれた。書きなぐった状態なので文が変だったらごめんなさい。
<上演時間>「序幕」30分(16001630)、幕間5分、「二幕目」65分(16351740)、幕間30分、「三幕目」55分(18101905)、幕間25分、「大詰」65分(19302035

 

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コメント

明治座、楽しい公演でしたね!(尾上)右近丈の立廻り、今までにないほどソロでの長い内容で印象に残りました!特に大梯子が2本出てきて、そのうち1本が2階席に掛けられた時にテンションMAXでした…個人的に。今月は花形舞踊公演(2日間3公演)を含め、浜町に通った1か月でしたー。

投稿: aki | 2014年11月30日 (日) 17時14分

aki様
こんにちは。コメントありがとうございます。
ほんと、明治座楽しかったhappy02 
右近クンの立ち回り、とっても素敵でしたね!! 右近クンは見るたび成長していますよね。
大梯子2本‼ そのうちの1本は2階席に‼
猿三郎さんのブログに3階からは見えないハシゴの仕掛けがあると書かれていたのはそれだったんですか‼ くぅ~っbearing ケチって3階取って失敗したぁ。宙乗りも2階からのほうが最後まで見えたでしょうし。

花形舞踊公演、私も2日目のみですが見ました。aki様は全公演ご覧になったのね(こちらも3階席でした…)。さすが‼です。舞踊のレポ、今日アップするつもりです。

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月30日 (日) 17時32分

私も3階でした。しかも右横の席、つまり一番お安い。。。舞台の半分近くは見えませんでしたが、そのかわり、運良く梯子の仕掛けはバッチリ見えました!あれはまた是非やってほしいです!!舞踊公演も全て3階の左右席!お目にかかりませんでしたね。2日目はご宗家がやや暴走していたような。。。四谷怪談は8月の趣向の華のすぐあとに内幸町ホールでやったものとキャスティング&ストーリーがだいぶ変わっていて複雑になっていました~。1日目は古典舞踊もあり、様々な試みが楽しめました♪終わってしまって寂しいです。

投稿: aki | 2014年11月30日 (日) 19時27分

aki様
あら、そうだったのですか! 私は3階正面2列目でしたので舞台はよく見えましたが花道は…。まさか、そういう仕掛けがあるとは。事前にわかっていれば考えたんですのに。どの席が安くて一番いいかというのは難しいところですが、舞台が見切れても、そういうおまけがあるなんて素敵なサービスですよね。
舞踊公演、意外とお近くだったんですね。けっこうキョロキョロしたつもりなんですけれど、どうしてお目にかかれなかったのかしら。私も本当は全公演見たかったのですが、体力的に諦めました。内幸町ホールの四谷怪談は別の観劇が入っていて見られませんでした。あれから練り直したんでしょうね。
去年も花形舞踊公演をやったので、きっと来年もこの公演ありますよね。楽しみに待ちましょう。

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月30日 (日) 20時09分

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