« スリルミー、初心者です | トップページ | 「四天王楓江戸粧」、千穐楽 »

2014年11月28日 (金)

コーフン、国宝展

1126日 日本国宝展(国立博物館平成館)
前日に明治座夜の部を見ているのだけど、こっちのレポのほうが先にできちゃったので。
あまりに混雑しているとの情報にビビり、行くつもりのなかった国宝展、チケットをいただいたのでそりゃあ行かなくっちゃとなった(ゲンキン。でも行かなくちゃのプレッシャーもある。ゼイタク)。112130日に土偶5体と金印が同時に展示されているとHPで知り、27日に予定したら家の事情で26日になった。それが幸いした。この日は冷たい雨風で出かけるのも億劫になるくらいだからきっとすいているだろう、との予想通り。札は30分待ちだったが実際は20分程度で入れた。おなかと腰にカイロを貼り、全身ユニクロ保温コーデ、防水スプレーも怠りなく、待ち時間に読む本も2冊持って出かけたのだが、トーハクまでの歩きで身体はさほど寒くなく、傘の中に吹きこむ雨で本は読めず。それでも20分だからそんなに苦ではなかった。

先日西洋の宗教画を見て、宗教はわからん、解説みなくちゃ芸術もわからんとほざいたのだが、この国宝展は信仰をテーマに形成されており、よくよく考えれば日本だってずっと仏教なり神道なりが生活に密着していたのではないか、とはっとした。現代の我々の宗教観は薄れてしまっているとしても、冠婚葬祭、年末年始と形だけでも宗教は残っているではないか。いや地獄極楽思想は案外深く我々の心に根付いているのではないか(神道にも地獄はあるんだろうか…)。そう考えれば、信仰をテーマとしたこの国宝展はやはり私たちの心に深く感じるものを与えてくれているのではないだろうか。でもね、やっぱり展示作品、とくに書画は解説読まないとわからんのだ(前にも書いたが、絵巻は解説を読むと実に面白い。夢中になってしまうが、人の動きを遮るから一応理解したところで移動)。文字さえ読めない。日本人なのに…(古文書を読む専門家がいるんだから、一般人が読めなくてもヘコむことはないか)。歴史はちゃんと勉強しておこう。
以下、とくに印象に残ったもののうちいくつかを順不同で。私にしては珍しくメモ無しで記憶に残っているから、薄れないうちに。
第一展示室を入るとすぐの目玉は「玉虫厨子」。本物の玉虫の羽が使われているのだそうだが、暗くてよくわからなかった。光るから本当はわかってもいいのにね。いつも思うのだが、現在黒くくすんだ文化財は当時はきっと金ぴかで鮮やかな色彩に溢れていたんだろう。それは権勢の証を誇示するためなのか、人々を信仰に誘うためなのかわからないが*1、当時の姿の復元も見てみたい。でも今の我々(って敢えて言っちゃう)は長い時を経てくすんだ姿に価値を見出しているのかもしれないから、当時の姿を目にしたら案外がっかりするのかもね。でも、遷都1300年で見た奈良の美しい色彩はその当時へタイムスリップさせてくれたな。
聖徳太子の「直刀」は輝いていた。錆び錆びの太刀もあるのに、この美しさには驚く。そばで見ていたオジサン2人組が「なんでこんなにきれいなんだ」と声をあげていたのも頷ける。この2人は展示物の前がちょっと混んでいると「○○ちゃん、見える?」「うん、ちゃんと見えた」などと互いを気遣っているのが微笑ましかった。
「土偶」5体。素晴らしい!! 見に来た甲斐があった。農業国日本の美だ。ミロのビーナスなど西洋の彫刻もすごいが、この素朴で美しい農業の象徴は本当に感動的なほど見事である。「中空土偶」はその名の通り中が空洞になっているのだが、そういう技術がすでに縄文時代(BC2000BC1000)にあったとは!! 「合掌土偶」も同時代のものだが、当時の修復跡がみられる。きっと大事にされていたのだろう、と解説に書かれていた*2しかし、縄文の時から祈りは手を合わせていたんだなあ、と妙なことに感心してしまった。それとも縄文の合掌には別の意味があって、祈りっていうのは後付けなんだろうか。いや、やっぱり祈りと思いたい。
よくぞ展示してくれました!!のは「元興寺極楽坊五重小塔」5.5メートルもある建造物である。これがすごいのは、まず建物の中心を貫く心柱。<心柱>と聞いてすぐ思い出すのは東京スカイツリーである。最先端技術で造られたスカイツリーにさえ心柱が通っているのである。その発想が8世紀にあったことに感動を覚える。また、これは実際の10分の1の大きさなのだが、外面はもちろん内部も実物を忠実に再現しているそうなのである。で、何のためにそういうものを造ったかというと、聖武天皇が全国に寺院を建てることを奨励するにあたって、その五重塔建造のモデルにしたらしいのである。この小塔は解体できて、その構造がちゃんとわかるのだ。実際、元興寺からトーハクへ運ぶのに一層ずつ解体したそうだ。この小塔のコンセプトも技術もすごいではないか。
「土佐日記」
の現存最古の完全写本は藤原為家によるもの。流れるような文字が素晴らしいです(もちろん、読めないっす)。自分がイメージしていたものとは全然違っていた。女の子たちが「竜馬? 竜馬?」と言っているのが可笑しかった。貫之さんも為家さんも苦笑しているかも。

「観音菩薩坐像・勢至菩薩坐像」1148年)。2体とも少し前かがみになっている。勢至菩薩は手を合わせ、観音菩薩は蓮の入れ物を持っている。そこには亡くなった人の魂を入れて浄土へ導くらしい。観音様に導かれて死ねると思ったら死に対する不安も和らぐだろう。何か厳かな気持ちになった。
「善財童子立像・仏陀波利立像」12031220)は、一番最近(平成25年)に国宝に指定されたのだそうだ。まずこの「善財童子」という名前が目を引いた。というのは最初の方に展示されていた「華厳五十五所絵巻」(12世紀)が、善財童子の仏道を求めるたびを描いたものだったからだ。その名にまた出会えたので「おお」と思ったわけ。この像は海を渡る文殊菩薩を振り返っているところだそうで、そのリアルな躍動感(ちょっと表現が違うかな)が素晴らしい!! 表情にも信仰の道を進む純粋さが表れていてとてもいい。快慶作らしい。国宝指定前は重文だったのかしら。どういう経緯で国宝に指定されたのかしら。
「沖ノ島祭祀遺跡出土品」は、一度見たことがある。20135月に見た「大神社展」だった。あの時は祭祀遺跡そのもののレプリカも展示されていたような…。今回の展示品が同じ物かどうかはわからないけれど、ここはさっと見ですませてしまった。でも、沖ノ島の祭祀遺跡がとても重要なものであるということが、あらためてわかった気がする。
「金印」は第二展示室を入ってすぐのところにある。金印はびっくりするほど小さい(子供たちが小学生の頃、何かの雑誌の付録で金印のレプリカをもらったことがあったから、大きさは何となく頭に残っていたけれど、あらためて展示を見ると、やっぱりビックリするほど小さい)。そして美しい輝きを放っている。金印の下に置かれた鏡に文字を写して読むことになる。というわけで、それを目の前で見たい人だけ並ぶ。2列目以降で見てもいい人は並ばなくてよい。当然並びました。この日は20分待ちと出ていたが10分もしないうちに順番がきた。もっとも金印の前にいられるのはほんのわずかな時間。鮮やかな金色と、その小ささと文字に感動する間もなく退出。それでも絶対並んだ方がいいよ。
「支倉常長像」17世紀、教皇パウロ5世の命でローマで描かれたものだそうだ。もちろん西洋絵画である。帰国した時にはキリスト教禁令が出ていて、この時はそんなことを予想もしなかっただろうに*3。穏やかな表情の中の強い目を見ると、結局は徒労に終わった支倉の長旅は何だったんだろうと思うが、本人にとっては貴重な信仰の旅だったんだろうな。
中国や朝鮮半島から招来した国宝も何点か展示されていた。そもそも日本文化は大陸・半島文化の影響を無視しては語れないわけで、本場の宝の実力を目にできる機会は貴重である。

展示物は絵巻や経典などは別として、おおむね全方向から見られるように置かれているのが展示方法として優れていると思った。彫像は必ず脇や後ろへ回って見たい私には有難かったし、その他の展示物も様々な角度に見ることによって模様やふくらみ加減などがわかり、興味深い。また全方向から見られるから、人の数も分散されて見やすいのである。
とにかく、当然ながらいいもの尽くしなので紹介しきれないから、ぜひご自分の目で堪能してほしい。もっとも会期も127日までと迫り、混雑はますます厳しくなるかもね~。

追記
*1
 予習するつもりで録画しておいた「日曜美術館」。このレポを書いてから見た。取り上げているものが重なり、私もちゃんと「見て」きたんだと安心した一方で、私ってやっぱり平均的な日本人なんだなとも思った。で、当時の「美」であるが、貴族たちが仏への捧げものを作る際、美しければ美しいほど極楽浄土へ近づけると考えていた、と日曜美術館では言っていた。
*2
 通常は土偶って壊して埋められるそうなんだが、このように修復された形で出土するのは珍しいんだとか。日曜美術館では、怪我や病気の回復を願ったのではないかと推測していた。
*3
 伊達藩でキリスト禁教令が出た時に、常長の息子もキリスト教信者であることがわかり支倉家はお家断絶となる。その際この肖像画は折り畳まれて評定所に保管されたらしい。折り畳んだ跡がはっきり残っているこの絵にはそういう歴史があったわけだが、本来なら燃やされるなり捨てられるなりという運命だったと思うこの絵がどういうわけか残っていた。本当によくぞ保存されていたものだ!! 残しておいてくれた人の気持ちに感謝したい。

|

« スリルミー、初心者です | トップページ | 「四天王楓江戸粧」、千穐楽 »

展覧会」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« スリルミー、初心者です | トップページ | 「四天王楓江戸粧」、千穐楽 »