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2014年11月14日 (金)

ルネサンス絵画を堪能&宗教画に圧倒される:ウフィツィ美術館展

1111日 ウフィツィ美術館展(東京都美術館)
発音しにくいウフィツィがオフィスの意味であることを知ったのは23年前。自分では現地に行くことはないだろうから、都美へ。
大半が宗教画。これだけ宗教画が集まると独特の厳粛な雰囲気となり、圧倒された。小学生の時、クラスメートの家の近くの教会に連れて行かれ、そこで初めて見たキリスト磔刑の図、それは私のトラウマとなったが、そこで感じた厳粛な空気、また後に、東京カテドラルに遊びに行った時の空気を思い出した。
宗教画はキリスト教を知らない自分には解説がないとむずかしいが、今回の展示では比較的多くの作品に解説がついていて、ああそういう場面が描かれているのね、と理解の一助になった。ただ、解説にカタカナが多い。とくに固有名詞が多いと読みづらくて飛ばしたくなる(私もトシだね)。
でも、作品はよかった。第1章「大工房時代のフィレンツェ」は1400年代の作品、第2章「激動のフィレンツェ、美術の黄金期の到来」はボッティチェリ、バルトロメオを中心に1480年くらいから1525年くらいまでの作品、第3章「マニエラ・モデルナ(新時代様式)の誕生」は1510年頃から16世紀後半までの作品、そして最後第4章「フィレンツェ美術とメディチ家」は1528年以降の作品(年代は第3章とかぶる)。
「工房」というとまず第一に浮かぶ2つの本がある。1つは「デジデリオラビリンス」(森下典子)。杏のドラマにもなったけれど、この原作は前世の自分であるデジデリオの生涯を追究する過程を描いていて、ミステリアスであると同時に、とにかく真摯なのである。大変好感のもてる本であり、これを読んでポルトガル熱が大いに高まった。これは今回の展覧会に関係ないが、もう1つの「ダヴィンチの愛人」(藤本ひとみ)ではまさにこの時代の工房が描かれている。ダヴィンチは美貌の少女に置き換えられ、なんとボッティチェリは私にはちょっと卑怯感を覚えるような人物とされており、あのボッティチェリが、とショックなのであった。というわけで、「工房」時代はそんなことを思い出しながら鑑賞した。
そのボッティチェリ、最初期の作品が「聖母子と天使」。所蔵はステゴ養育院美術館。そういう美術館があることにも驚きだが、そこに所蔵されていることにこの作品の意味がありそうだ。「ロッジャの聖母」は、絵そのものは後世の修復によりボッティチェリのタッチが損なわれているそうだが(そう言われるとそうかも)、額が当時のオリジナルで大変貴重なものらしい。
工房としては私も名前くらいは知っているリッピ、そのリッピの作品らしい(「リッピに帰属している」っていう表現は、よくわからないけど、要するにリッピの作品と思われるってこと?)「老人の肖像」はなかなか印象的であった。
工房時代の「聖母の幼児キリスト礼拝(中央)、磔刑と聖フランチェスコと聖ヒエロニムス(上部)」は1861年の洪水により下4分の1が損傷していてびっくりした。1枚の絵に複数の場面が描かれている絵もあり、それは解説とひとつひとつ合わせて見ないと何がなにやら…。
141114uffizi1 さて、「美術の黄金期」、ボッティチェリの「パラスとケンタウロス」(←coldsweats01)を目にしたとき、衝撃を受けるくらいよかった!! 何も前知識をもたずに見たこの展覧会であるが、この作品が一番よかった。そうしたらこれが目玉だったのね。さすがにそれだけのことはある。女神が獣神を支配するこの作品の寓意は、肉欲に貞淑が勝つということで、誰とかの結婚のために描かれたらしい。「聖母子と洗礼者ヨハネ」は十字架降下を暗示する構図となっている。マリオット・アルベルティネッリの「キリストの礼拝」は、左手に3本の釘をもつ幼児が描かれており、キリスト受難を暗示している。十字架降下や受難を暗示する絵画はけっこう多くみられ、宗教画として重要なテーマなんだということがわかる。この時代の幼子って、意外と可愛くなく描かれている(可愛いという概念はその時代によっても違うし、この時代は別に可愛く描く必要はなかったのかもしれない)。
「マニエラ・モデルナ」では、アンドレア・デル・サルトの「ピエタのキリスト」がよかった。「ピエタ」は通常、キリストを中心に聖母マリアやマグダラのマリアが描かれるが、この絵で描かれているのはキリスト1人のみである。やわらかい光と荒涼感たっぷりの岩の対比、モノクロの中で色彩はキリストの腰の赤い布と岩の上に置かれた黄色い布のみである(黄色い布には多分釘とかが置かれている)。
ポントルモの原画に基づく「聖母子」は、オリジナルが存在しない複製だというのが興味深かった。
最後、メディチ家の当主の小さい肖像画が並べられていたが、やはり創始者ロレンツォ・イル・マニフィコとコジモ1世が突出していた。ジュリアーノ・デ・メディチ、教皇レオ10世、教皇クレメンス7世、フランチェスコ1世と、すべてブロンツィーノの作になるものだが、この2人の顔が他と違ってよかったのはその実力が絵にも表れていたのだろうか。
その是非はともかく、文化の爛熟と時の治世者との関係は切り離せないものだと思った。

 

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コメント

宗教画を見ると、ほんとに自分の知識のなさに、愕然としてしまいます。他の絵も(仏像なんかも)たいていはそうなんですが、宗教画は特に、拒絶されてるようにさえ感じたりして。
それでも一度にたくさん見ることで、だんだん慣れたりもしてくるんですよね……。慣れるだけで、相変わらずわかんないままですが。
青山ブックセンターの講座に、「聖書と美術」に関するのがあって、いざ申し込もうとしたらすでに満員(年明けなのにぃ) 。出遅れにがっくりしています。自分で少しは努力しろってことかしら。

投稿: きびだんご | 2014年11月15日 (土) 11時44分

きびだんご様
こんにちは。コメントありがとうございます。
宗教画は難しいですよね。私は知識のなさなどとっくに諦めていて解説頼りです。ま、解説で知識を得ても、次回見るときには忘れちゃってたりもするのですが。
でも、絵画は感性だけに頼るより、絶対理屈をわかって見たほうが面白いと思います。そのくせ音声ガイドは借りない…。そこにだけ人がたまっちゃうんですもの。

「聖書と美術」の講座(面白そう!)を受けようと思われるだけ、すごい‼ 今でも十分すぎるくらいお忙しいのに、ほんとそのバイタリティはどこから? もうただただ頭が下がります。それにしても、そういう講座が満員って、人々の学習意欲にも頭が下がります。あ~あ、最近年齢のせいにして怠けてばかりの私…、反省しなくてはbearing

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月15日 (土) 15時00分

SwingingFujisan様のレポを拝読して、「見るべき方が見ると、違うわ~!」とカンゲキしてしまいました。絵画は、その時代背景や、宗教文化、権力者などと深く結びついていて、それらの素養がないと、ワカラナイものですものね~。(だから私は絵を見ても、大概、「綺麗だな」とか「スゴイ」とかしか浮かばない…。) SwingignFujisan様の洞察力、素敵だなぁ~と、レポのほうにカンゲキしました!
私、本当に偶然、昨夜録画していた「ぶらぶら博物館」(正確なタイトル忘れてしまいました…。山田五郎さんとおぎやはぎさんのBS番組)で、この美術展をテレビで見たところだったのです! それで、改めてSwingingFujisan様のレポを拝読してカンゲキ!した次第です。 番組では、「ルネサンス」の変遷や画家の師弟関係を中心に構成されていて、とても興味深かったです。
お写真にもある、「パラスとケンタウロス」も時間をさいて紹介されていました。圧倒される絵ですよね。パラスが着ているドレスの柄は3つの指輪で出来ていて、メディチ家の紋章のひとつなんですってね。お写真のパネルは、後ろから顔が出せるようになっているんですか?(笑)

<おまけ>
タイトル違いでゴメンナサイ! 昨夕、大相撲中継を見ていたら、花道横にトヨエツ(豊川悦司さん)を発見(笑)。SwingingFujisan様、ご覧になってるかな~?と心のなかで叫んでおりました(笑)。

投稿: はなみずき | 2014年11月16日 (日) 08時22分

はなみずき様
おはようございます。コメントありがとうございます。
大変なお褒めに与って光栄です。でも私なんてそれに値するようなことは何にもないんですよ。ただ解説を読むとなるほどと面白く見ることができるだけで…しかも、そのうち全部忘れちゃうし…。本当はお恥ずかしい限りですbearing
「ぶらぶら」(「ぶらぶら美術・博物館」が正式名称ですが、私はいつも「ぶらぶら」と言っています)は録画して、後で見ました。おっしゃるように「ルネサンス」を視点に据えての解説でしたね。本当は「ぶらぶら」を先に見てから展覧会を見ればなおよかったのですが、復習も悪くはなかったかな。
トヨエツ情報ありがとうございますhappy01 昨日は外出したので大相撲は録画して、今朝早送りをまじえて見ましたが、トヨエツには気がつきませんでした。九州場所はなかなか有名人がいないなあ、なんて思っていたんです。幸い録画はまだ消していませんから、もう一度見ます!!

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月16日 (日) 09時56分

こんばんはhappy01
この夏にウフィツィ美術館に行ってまいりましたので
なんとなく嬉しくなってコメントしちゃいました!
(今年は先輩と女2人旅、フィレンツェ・ミラノでのんびりしてきました)
宗教画は、母も私たち姉妹も、カトリック系のミッションスクール出身なので
物心ついた時から身近な存在ですが
時代背景とか、よくわかっておらずcoldsweats01
Swingさまのような素敵な感性があればな〜lovely
美術より芸術より食、なダメダメな私ですcoldsweats02


投稿: 七子 | 2014年11月18日 (火) 19時20分

七子様
こんばんは。コメントありがとうございます。
現地でご覧になったなんて羨ましい限りです。それにフィレンツェ、ミラノでのんびりなんて‼ よかったですね、ステキな旅をなさったようで。

ミッションスクールだと聖書の勉強もするし、宗教画をご覧になると描かれていることがおわかりになるんでしょうね。私なんか解説のおかげで何とかついていってるだけですよ。
もちろん、私も芸術より食ですbleah

投稿: SwingingFujisan | 2014年11月18日 (火) 21時20分

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