« 12月歌舞伎座昼の部 | トップページ | 2014マイベスト3:独断と偏見 »

2014年12月28日 (日)

十二月歌舞伎座夜の部

1226日 十二月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
141228kabukiza 海老蔵さん初演の演舞場以来5度目の上演だが、初演以外は全部地方であり、私は今度が2度目。見るか見ないか迷った末、歌舞伎座初登場なので見ることにしたが、見てよかった!!
「雷神不動北山櫻」
初演以来久しぶりのこの演目だが、こんな場面あったっけ???の連続。
まずは口上人形が「大序」よろしく配役を紹介する。色々総合すると口上の声は猿三郎さん?らしいけど、それを言ってはいけないようだからあくまで推測。初演では海老蔵さん自身の口上でこの物語の説明があった(ってことも忘れていた。自分の記録見てもあんまり思い出せない)。
幕があき、やはり大序と同様に全員息を吹き込まれていない人形のようになっている。大薩摩で早雲王子の海老蔵さんに息が吹き込まれると、他の人もみな顔を上げる。
序幕第一場「神泉苑の場」は初演では見ていない。物語が展開されている間、八剣数馬(道行)と家臣たちはずっと片膝ついてもう片膝はやや上げて座っている状態で大変そう。でも誰もぴたっとその姿勢のまま動かないのはさすがである。
早雲から「玄蕃のために役立てよ」と数馬に下された品が、あの「毛抜」の櫛笄である。棒磁石とセットである。数馬がわけがわからず不審そうに早雲王子の家来の山上官蔵(新蔵)を見たところ、官蔵に目配せされ、「あっ、そういうことか」と納得するのが面白かった。
初演では「鳴神」の前日譚として鳴神が朝廷に裏切られる場面が序幕だったが、今回は「毛抜」の前日譚ということになる。こちらのほうが面白いかも。
小野春道の右近さん、関白基経の門之助さん、文屋豊秀の愛之助さん、みんな烏帽子・直垂が似合ってすてきだった。
第二場「大内の場」では、鋭く悪の陰を垣間見せる海老蔵さんの早雲が安倍清行に早替り。この安倍さん、光源氏ばりの美しい顔なのにふなふなしたセリフで笑わせる。干ばつの原因を占わせるために文屋豊秀が連れてきたのに「ふは~っ」といった感じでへなへな。「若く見えても」100歳を超しているのだ。そのくせチョ~女好き。私は海老蔵さんのふなふなした声のセリフは好きじゃないのだが、この清行にはほとんど違和感を覚えず、声とそのキャラを楽しんだ。
今度は清行から早雲への早替り。化粧は眉を変えただけで一緒だと思うけど、表情が全く違って見える。眉だけでも大きいんだろうが、人物の性格を顔つきでも表していたんじゃないだろうか。
この場面では、小野家の腰元小磯が殺される場面があって、早雲と家臣石原瀬平(獅童)が小磯のもっていた小野家の重宝「ことわりや」の短冊を奪う。「毛抜」で小磯の兄小原万兵衛になりすますのがこの瀬平であることがここで明らかになる。そんな経緯すっかり忘れていたわ。初演でもこの経緯は描かれていたが、今回の演出は前回と多少違ったようだ。

二幕目が「毛抜」。錦の前の髪の毛が逆立ってびっくりした海老蔵さんの顔がとても浮世絵的だった。初演時の粂寺弾正はよかったと思ったが、今回、海老蔵さんはあまりニンじゃないような気がした。セリフは声を張り上げるところなど團十郎さん的だったが(私はこの点に関してはあまり感心しない)、團十郎さんの陽気な大らかさが海老蔵さんには感じられなかったのだ。それは次の「鳴神」を見た時に、エビちゃんは弾正よりも鳴神だと思ったことによって、自分の中ではより強くなった。
錦の前の髪の毛を逆立てていた磁石は序幕一場で見たのと同じ棒磁石であった。あの時、「あれ?」と思ったのだが、ここでいつも見る丸い方位磁石ではなく棒磁石が出てきたので安心した。磁石についてはいつも、方位磁石はおかしいよなと思いつつ、ビジュアルを重視して磁石としてわかりやすい形のものにしているのが歌舞伎らしいと納得していた。でもやっぱり方位磁石はおかしいよね。
弾正の引っこみではエビちゃんが千穐楽のお礼を述べて盛大な拍手を受けていた。
三幕目第一場「木の島明神境内の場」では、行方不明になった清行を探す家臣紀定義に「欣弥」の声がかかり欣弥さんの好きな私は嬉しかった。ここへやはり清行を探す文屋豊秀が通りかかり、2人で捜すことにして、2人は客席へ下りて歩く。3階席からは見えないのでつまんな~い(やっぱり少し高くても東席を取るべきだったか…)。この間、舞台では巫女たちによる雨乞いの神楽が舞われる。女の匂いに誘われたか、清行が現れる。
ところで、清行は「大内の場」で小磯を口説こうとして小磯が誰か(って早雲なんだけど)に殺された時に姿を消してしまっていたのだ。初演では官蔵に落とし穴に落されたことになっていたけれど、今回はいつの間にかという感じでいなくなっていた(私が見落とした? でも今回この場に官蔵はいなかったし)。安倍さん、どこに行っていたんだろう。
第二場は「鳴神」。亀ブラザーズの白雲坊・黒雲坊が嬉しかった。こういう共演はあまりなかったような気がするから。聞いたか聞いたか、何を聞いたかは「本日千穐楽を迎えた鳴神の評判を聞いた」。
亀三郎さんの白雲坊は、鳴神のいる岩屋の向こう側に座するので、岩屋の前を通るときに頭を下げていたのが印象的だった(今までの白雲坊では気がつかなかった)。喧嘩する2人に対する海老鳴神、怖かった。
玉様の雲の絶間姫、美しさといい上品な色気といい、鳴神が堕落するのももっともである。そして海老蔵さんもはじめは疑いながら女の駆け引きにひっかかり、徐々に堕ちていく「女」を知らぬ男をよく演じていた。絶間姫が最後に鳴神をだましたことを詫びる姿に真情が溢れていて感動した。
竜は立派だった。いつもは「えっ」というくらい小さい竜だったと思うので。今回はしかも立派な竜が2体も飛んで行ったし。これくらいだと、やっと降った雨の迫力に見合ってよい。
大詰の立ち回りは面白かった。海老蔵さんを中心にして四天がハシゴで三升を作ったり、両側からの同時返り越し、六人返り越しがあったり。また花道に大ハシゴが立てられ、海老蔵さんが中ほどまでのぼり、そのままハシゴが倒されるという大技も。ハシゴは海老蔵さんをのせたまま舞台中央へ。そしてそこから海老蔵さんは朱雀門の上へ。という場面は私の席からも見えて満足。激しい雨音のような音と太鼓の重い音が響く。どきどきわくわく。早雲を諌める不動明王の重々しい声が聞こえ、早雲は最期を迎える。
やがて不動明王が制多迦童子(市蔵)と衿羯羅(こんがら)童子(道行)を従えて姿を現し、燃え盛る火を背景として宙に浮かび上がるのであった。赤い火の粉を表す紙吹雪がきらきらしてとてもきれいだった。
12
月千穐楽、歌舞伎座で、不動明王を見られていい1年の締めになった。
カーテンコールを期待する空気が少し感じられたが、歌舞伎座はさっさと明かりをつけ、アナウンスも入った。時間も少し押していたし、カーテンコールがなくて当然、よかったと思う。
<上演時間>「序幕」35分(16301705)、幕間20分、「二幕目60分(17251825)、幕間30分、「三幕目・大詰」105分(18552040

|

« 12月歌舞伎座昼の部 | トップページ | 2014マイベスト3:独断と偏見 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

おはようございます
実は昼の部だけ観る予定が、知り合いから「?」があり、夜の部だけに急遽変えました

やはり絶間姫が気合が入っていて「眼福」でありました

人形口上は良いとしても、大序のように人形の態でいるのにはかなり抵抗がありました
人形浄瑠璃で義太夫(ちょぼ)で人間に戻るというのは人形浄瑠璃への配慮というかリスペクトがあって成立する演出であると思いますので、義太夫狂言でない本作品に大薩摩で行うと言うのはわたしは反対です

海老蔵は鳴神上人が仁の適っていて良かったです
亀三郎・亀寿兄弟はもったない配役でしたが行儀よく愉しく演じてました
この二人が良いので絶間姫の惚気(のろけ)話が引き立つのです

粂寺弾正は、おっしゃるように姿形は12世にそっくりでそれだけで観る価値はあります
お芝居の流れはまだまだですが、実はこうした大らかなお芝居は難しいのだと思います
玄蕃が成敗するときに首が出てきませんでしたね(いつもは錦の前らの前に出されると思いますが)

秀太郎役の尾上右近の前髪を観ていたら18世勘三郎が急に浮かんできました・・・親類とは言え似ているなぁと・・・

最後に「石」について
戸板康二氏は「天井から忍びの者がかかえておりる磁石は、普通羅針盤である。(中略)鉄を引くのならば、本当は磁石の石でなければならない。
ところがそんなことを超越して、千石船にでもついていそうな丸い文字盤をかかえているところに、大まかなおもしろさがあると思う。
もっとも馬蹄形の磁石、三角の石を持って出る型もある。前進座はこの演出である。」
と指摘されております(戸板康二著『歌舞伎十八番』より)
今回の石はいずれでもなく「新工夫」ということになるのかもしれませんね

投稿: うかれ坊主 | 2014年12月29日 (月) 09時37分

うかれ坊主様
おはようございます。
歌舞伎座どちらかだけご覧になるのでしたら夜の部にされたのは正解だったと思見ます。

なるほど、「大序」は人形浄瑠璃へのリスペクトなんですね。初演にはこの部分はなく、「慙紅葉」と同様の口上でしたが、いつから変えたんでしょうね。試行錯誤でしょうか。

弾正は、初演時においてもやはり團十郎さんのほうが好きだと自分で書いておりました。
そういえば、首、今回はなかったですね。スルーしていました。ご指摘ありがとうございます。

亀兄弟、私ももうちょっといい役がついてもいいのにとも思いましたが、丁寧に演じていてとてもよかったですね。連獅子の宗論をこの2人で見てみたくなりました。

歌舞伎の血筋は濃いんですねえ。直系はもちろん、親戚宇筋でもふと似ているなと思うことがありますものね。

戸板氏の文のご紹介、ありがとうございます。磁石には色々なバージョンがあるんですね。歌舞伎ならではだなと面白く思いました。

投稿: SwingingFujisan | 2014年12月29日 (月) 11時42分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 12月歌舞伎座昼の部 | トップページ | 2014マイベスト3:独断と偏見 »