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2015年3月 6日 (金)

2月歌舞伎座千穐楽夜の部

226日 二月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
150306kabukiza パスするつもりだった夜の部だが、チケットをくださる方がいて、前日の昼の部に続いて幸いにも見ることができた(夜→昼だったらちょっときつかったかも)。幸いにも、というのは「見てよかった!!」と思ったからで、本当に「幸い」だったのだ。三津五郎さんのこともあり、見られるものは何でも見なくては、という思いもあったが、何よりどの演目もとてもよくて、見なかったら損していただろう(そう言えるのも見たからだけど)。感謝です!!
「一谷嫩軍記――陣門・組打」
作者に騙されて見ようと思いつつ、話を知っているから…。それでも騙される。敦盛を討ったと客に見せつつ心は息子に…熊谷の表情はわからず目が心情を物語っていると感じたのは隈取のせいかと思っていたが、舞台写真では隈取は顔を隠してはおらず、むしろ吉右衛門さんが敢えて表情を作らないようにしていたかのように見えた。また、時々熊谷が客席に背中を向けるのが、エッセンスとして効いていたような気がした。そういう吉右衛門さんは熊谷直実その人であるようで、胸がしめつけられた。敦盛(小次郎)の鎧兜を馬の背にのせるとき、馬の首を軽く叩きながら「どうどう」と声をかける熊谷の姿――リアルに愛情・哀惜の念が伝わってきた。
菊之助さんはまさにしとやか、爽やか、気品あふれる青年(少年?)ぶりで、熊谷の子である果敢さと管絃に心を揺さぶられる繊細さ(小次郎の育てられ方を想像させる。熊谷夫婦にきっとそういう優しさがあったのではないか)を見事に表現していた。それだけに、潔い最期は哀れであった。熊谷と敦盛ならぬ小次郎の最後の遣り取りが戦う者どうしの言葉ながら、心は父子の別れを惜しんでいたのだと思うと、切ない。
芝雀さんの玉織姫も哀れだったが、敦盛の首を掻き抱くところは、母親(あるいは姉)のような母性を感じた。

平山の吉之助さんの線が太くてよい。「又、平山が!!」というタイミングで現れるし、ほんと、憎らしい。
家を継ぐ存在である息子を身替りとして犠牲にする感覚には納得がいかないものの、逆にそういうところが日本人の心の琴線に触れるのかもしれない。
それにしても、この芝居は物語もさることながら、子役を使った遠見による見せ方が実にうまいといつも思う。また戦を表すどんじゃんの音が、効果的にこちらの心に食い込んでくる。菊之助さんの小次郎が海に入ると、母衣の布の裾を黒衣ならぬ青衣(?)が持って風になびかせるようにしていたのが見えた。裏方が見えても興をそがれることはなく、むしろこの1つの場面を美しく見せるために色々な工夫があり色々な人が働いているのだと、歌舞伎の力を感じた。
見てよかった。

「神田祭」
役名が、役者名や屋号にちなんでいて面白い。菊吉(菊五郎。吉右衛門さんの分まで入ってる)、時千代(時蔵)、京香(芝雀)、高千代(高麗蔵。高麗蔵さんの芸者姿、好き)、梅香(梅枝)、駒江(児太郎)。
菊五郎さんと時蔵さんの間に通う空気にはドキドキする。「毛谷村」では初対面の2人の新鮮な空気が素敵だったが、やっぱりこういう息の通じ合った仲が一番好き。芝雀さんと時蔵さんで菊五郎親方を取り合うも、時さまの勝ちって感じ。でも、菊吉という名前が意味深。菊は時でも吉は京ってね。
時さまもきれいだったけど、梅枝クンのきれいさにはうっとり。清楚で上品な色気、ほっそりして千代紙人形みたいだと思った。踊りもうまい。
鯰の神輿は初めて見た(と思う)。今回、鯰神輿が出ると聞いてはいたが、百聞は一見に如かず、こういうものだとは想像がつかなかった。さすがの菊五郎さん、イナセで実にカッコよく鯰の上で決まっていた。
「水天宮利生深川」
幸四郎さんの筆幸は平成183月に初見、233月の上演は歌舞伎観劇日が東日本大震災の後だったため、パスしてしまった。というわけで2回目。初めて見た時の印象がそこそこ残っている。あの時はお霜がまん丸な米吉クンで、こんなにやさしく程よくふっくらな女形に成長するとは思わなかった。
幕があき、背中を向けていたお雪(児太郎)がこちらに顔を見せたとたん、役の心が伝わってきて、涙が出そうになった。体が大きい(背が高い)ので膝を大きく曲げなければいけないのが大変そう。
金貸しになけなしの1円と赤ん坊の着物をとられ、幸兵衛が家を飛び出したところへ大家(由次郎)がやってきて、事情を知ると「着物を取り返してきてやる」と意気込んで花道を引っこむ。店子思いの大家さんに客席から思わず拍手が。胸が熱くなる。ああ、これが観劇の醍醐味の一つよ。
ここで義太夫が入る。
幸兵衛が発狂していくようすがリアルで痛ましい。一方で幸四郎さんは悲惨な場面を可笑しみを交えてじめじめし過ぎないようにする。この兼ね合いがうまいと思った。父親の姿を2人の娘はどういう思いで見ていただろう。お雪にはどうすることもできないもどかしさと悲しみがにじみ出ていたように思う。
金貸しの彦三郎さんと代言人の権十郎さんは本当に無慈悲で憎らしい。赤ん坊の着物を取り上げる場面は、伊右衛門だったか誰だったかを思い出した。でも、2人とも、いかに憎らしく見えるか工夫することを楽しんでいるような感じだった。兄弟だから息もぴったりだったし。
出演のみんながそれぞれ役に合っていて、当時の下町の様子をよく表していた。
<上演時間>「陣門・組打」80分(16301750)、幕間35分、「神田祭」20分(18251845)、幕間20分、「筆幸」75分(19052020

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コメント

SwingingFujisan様
今晩は。夜の部の感想、拝読しました。2月の歌舞伎座、昼夜ともに充実していましたね。望むべくは大幹部立役三人が2人ずつでもがっぷり組んだ芝居を見せてほしかったのですが。なお、私的には、「筆幸」の妹娘の金太郎君がなかなかの演技で楽しめました。
ところで、今日、歌舞伎座の昼の部見てきました。感想をちょっと。「筆法伝授」でしっかり眠りましたので、いつもは寝てしまう「道明寺」はしっかり起きて堪能しました。各役がそれぞれ充実しています。今回、仁左衛門、もちろん素晴らしいのですが、秀太郎の覚寿も秀逸でした。「杖折檻」、声量が弱くてどうなることかと思いましたが、「東天紅」からは持ち直し、大変結構でした。この優は義太夫のハラがしっかりあるので安定しています。また、菊之助の輝国がさわやかでこれも結構でした。

投稿: レオン・パパ | 2015年3月 7日 (土) 19時08分

レオン・パパ様
こんばんは。コメントありがとうございます。2月夜の部の感想、すっかり遅くなってしまいました。
おっしゃるように今月は大幹部どうしの絡みがありませんでしたね。3本の柱がそれぞれ自分の座組でやりたいものをやったという感じでしょうか。
金太郎クン、可愛かったですね。私はつい児太郎クンに目がいったのですが、金太郎クンも妹娘らしさがよかったと思います。

今月の観劇もまた、後半を予定しております。レオン・パパ様でも観劇中おやすみになられるんですね。安心しました。私は(も?)「道明寺」が主眼ですので、体調を整えておかねば、と思っています。レオナ・パパ様のご感想で期待が増しました。

投稿: SwingingFujisan | 2015年3月 7日 (土) 22時45分

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