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2015年5月 4日 (月)

平成中村座千穐楽夜の部

53日 陽春大歌舞伎千穐楽夜の部(平成中村座)
150504nakamuraza1 中村座だから千穐楽夜の部を狙ってしまった。もちろん桜席。18カ所の勘三郎さんの目は結局全部で13カ所(東京新聞の特集で取り上げられていたお茶子頭さんの背中も含めて)。絶対あるはずなのに前回見つけられなかった大提灯にもあった‼(写真)。一番わかりにくかったのは非常口マークの上(写真)。これを探すために開演30分前に着いたら、入口前には長蛇の列ができていた。
「妹背山女庭訓 三笠山御殿」
この場面だけだと話がわかりづらいということで、「七之助クンオススメ」の「良い子のマンガ 妹背山女庭訓」が特別付録として筋書巻末に載っている。タイトルページにある七之助さんの小学校時代の写真が可愛くてウケた。この漫画では三笠山御殿の前段にあたる「杉酒屋の150504nakamuraza2 段」「道行恋苧環」のストーリーがマンガチックに解説されていて(漫画だから当たり前か)、なかなか面白いのである。でもそれを踏まえてこの芝居を見ると、漫画のノリの軽さと芝居の重さのギャップにちょっととまどうかも。
さて、私が最初に思ったことは…橋之助×七之助の叔父甥コンビによる恋人どうしは前に見たけれど、今回は児太郎は叔父さんの恋人をやるようになったのか、児太郎も大きくなったんだなあ、ということ。
橋之助さんの求女はさすがの二股男、かっこいいけれど貴族という感じがあまりしないのにそれらしさを出そうとするのか声が甲高く(それは橋之助さんの欠点でもあると私は思っているのだが)耳障りだった。ハッシーは鱶七でしょ。ただ、入鹿討伐のためには好きな女も利用するという冷淡さが感じられたのはよかったと思う。
七之助さんのお三輪は、花道七三で立ち止まり、苧環の糸が切れちゃって「ん、もう!」という感じがとてもよかった。御殿では一途な勝気さと心細さがうまくマッチしていた。花道で嫉妬に燃えるお三輪は怖かった。鱶七に刺されて客席に背中を向けて横向きに倒れると、七之助さんは鏡を見ながら青みを顔に入れていた。頭をあげたままの作業は大変そうで、終わるころには腕がぷるぷるしていた。「この世で縁は薄くとも未来は添うてくださりませ」のセリフは哀れでウルウルした。そういえば、歌舞伎を見ていると「未来」という言葉が耳に残る。未来という言葉に現代性を感じるせいか、古風な歌舞伎でそこが強調されるのかもしれない。
いじめられる場面はこちらが慣れたせいか、立役の官女が荒っぽ過ぎたせいか、初めて見た時に比べいやぁ~な気持ちにはならなかった。
獅童さんの鱶七はお三輪を哀れむ気持ちもあって悪くないと思った(ひいき目?)。
豆腐買のおむらの勘九郎さんが作り過ぎることなく自然でとてもよかった。お三輪に「よい殿御を知らないか」ときかれ、おむらが「よい殿御?」で連れていた娘(七緒八)を見ると七緒八クンが頷く。大拍手‼ 花道ではおむらの「そなこ、そなこ」に続き、「なかむらや」と可愛い声で叫び、再びの大拍手‼ 「おじゃ」「あいあい」に三たびの大拍手の中、2人は引っこんでいく。18カ所の勘三郎さんのきりっとした目も下がっていたかもね。
「高坏」
幕間、大道具を変え、演奏家たちが準備する中、舞台上に次郎冠者の扮装をした勘九郎さんと着替えをすませた七緒八クン、そして哲之クンがいた。3人で座って七緒八クンは小道具の徳利を持ち、哲之クンはお父さんの持つ盃に手を添え、記念撮影。それを五色幕の内側で前田愛さんが見守る。勘九郎さんはご機嫌でにこにこ。ミーハー的にはおいしいワンシーンだった。哲之クンがあんまり大きくなっていてびっくり。ついこの間生まれたばかりだと思っていたらもうじき2歳になるんだね~。
高足売の国生クンは顔とか動きが橋之助さんそっくり。体がちょっと硬いけれど、小ずるさに大らかなコミカルさがあって悪くなかった。声も出演の4演目の中では一番気にならなかったし。ただ、あんまり若くて「酒」に関して違和感を覚えた。成人してる? 調べたら、今年の12月に20歳になるのね。別に成人してない役者が酒を飲む役をやっちゃいけないわけじゃないけど、ふっと気になってしまった。
勘九郎さんの次郎冠者は、いいねえ。柔軟かつキレがいい。コミカルだけど崩しすぎないところに好感がもてる。そういえば、勘九郎さん、昼も夜も酔っ払いなのねえ、と可笑しくなった。でもこちらの酔っぱらいは気分よく春の風情を楽しんでいるのが感じられて、こちらも楽しい。
鶴松クンの太郎冠者、亀蔵さんの大名が、「らしく」て芝居を盛り上げた。
終わり近く、舞台奥の扉が開き、桜の木から桜吹雪が。大道具が置いてあるのが見えたのがやや興ざめだが、正面の席からは見えなかったのかもね。外の空気が入ってきて、気持ちよかった。
扉があいて客席がどよめく中、次郎冠者のタップに思わず大名もタップを踏む。すると大名、次郎冠者が黙ったまます~っと視線を太郎冠者に向ける。2人の視線を受けた鶴松クンはしばらくじ~っとしていたが、やっと「自分?」と気づいたように指で自分をさす。弱ったなあという風情でいたが、にっこりとタップを踏み、くるっと回転して最後は両手を広げてポーズに大きな拍手。鶴松クン、順調に成長している。

楽しい3人のタップに客席は手拍子で合せる。そして幕。手拍子は長いことやまず、カーテンコールを要求していることがわかる。でも、次の演目があるし、幕間20分だし、幕は開かない。だけどね、幕の内ではまだ踊りは終わっていなかったのだ。亀蔵さんの手振りで桜席が全員立ち上がり手拍子を送る中、3人がもう一度タップを踏むという大サービス。桜席でよかったぁ!! 幸せ。
「極付 幡随長兵衛」
「公平法問諍」がちゃんとした芝居になっていて、とてもよかった。いてうさんの公平はきっちりつとめていたし、芝居の邪魔をされたあと、舞台番に再開を促されて「困っちゃうなあ、いいところだったのに」も自然な可笑し味がにじみ出ていていい公平だと思った。ここで、いてうさんの名題披露の口上があった。あらためておめでとうございます。中村座での披露は嬉しいだろうな。
そういえば、公平のセリフからも「未来」っていう言葉が聞こえてきた。
乱入の酔っぱらいは花道手前までお茶子頭さんに注意されながら登場した。舞台番の橋吾さんのテンポがよかった。しかし侍には勝てない。背中の上に乗っかられ、侍が刀を抜くと慌てて花道に飛び降り、通路で震えている様子。これもまた町人らしくてよかった。
水野(彌十郎)と近藤(亀蔵)はどこから出てくるのだろう。夜の部はあまり好みでないこの演目があるからパスしようか迷ったのだけど、水野と近藤がどう現れるのかという興味だけで取ったみたいなもの。開演前、私の隣が2つあいていたので、まさか、とどきどきしていたら、ぎりぎりになってお客さんが座った。ほっとしたような、ちょっとがっかりしたような。でも水野は大名なんだから、貧乏席にいるわけないよね、どう考えたってお大尽席でしょ。という予想が当たり、お大尽席の左に水野、右に近藤が立っていた。
村山座が終わり二幕目になると、「宗五郎」の時みたいに座席2つ移動があった。
橋之助さんの長兵衛はカッコよかった。私が何よりよかったと思ったのは、水野からの迎えに応じて女房に新しい着物を用意させている間の1人の場面。男としての死の覚悟と、親分としての子分たちの心配、そして1人の夫・父親としての家族の心配がセリフだけでなく全身に表れて、しみじみ男の生き様を思った。駆けつけてきた唐犬に「早桶をもって俺を水野の屋敷へむけえに来てくれ」と長兵衛が言った時にはぐっと胸に迫るものを感じてうるっとした。たまにちょっとうるさいと思うセリフもあったが、全般に男らしくカッコよく大きな長兵衛で、あらためて橋之助さんの存在の重要性を感じた。
七之助さん、宗五郎の女房もよかったが、長兵衛の女房お時もよかった。夫の覚悟を呑みこみ、悲しみの中、そういう男の女房であろうとする心にじんときた。
子役ちゃんが可愛いくてうまかった。
酔っ払いの玉雪さん、坂田金左衛門の山左衛門さん、慢容上人の大蔵さんと脇も芝居を盛り上げた。
水野と近藤の明らかな策略にいつもは不快感を覚えるが、今回は意外と納得するものがあったのは、両方とも悪役に見えたからだろうか。

このあとのカーテンコールは期待通りだし、期待してもいいでしょう。
座頭の橋之助さんが「勘三郎の兄が作った中村座をこんなに早く」と口を開いたとたん涙に声を詰まらせて、客席も涙を流した。中村屋兄弟、彌十郎、亀蔵、獅童、新悟、児太郎、国生、鶴松、勘之丞の面々が1人ずつあいさつをした。児太郎クンだけスーツ姿で、「中村座は初めてで、こういうことがあるとは知らず着替えてしまいました」って。「父から中村座には絶対出た方がいいと言われていた。大変勉強になってありがたい。今度は父と共演したい」と語っていたが、父との共演に期待したい。勘九郎さんだったかどなただったか、三津五郎さんの話が出た時、彌十郎さんが泣いているように見えた。
今回の中村座は十八世中村勘三郎を偲んでというサブタイトルがついており、勘三郎さんの亡くなったあと最初の中村座だからそれは当然として、これからは勘三郎さんをさらに乗り越える中村座を作ってほしいなとも思った。
<上演時間>「三笠山御殿」70分(16301740)、幕間30分、「高坏」30分(18101840)、幕間20分、「湯殿の長兵衛」90分(19002030

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