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2015年5月 8日 (金)

必見‼ まさにインパクト、「ダブル・インパクト」

57日 「ダブル・インパクト」(東京藝術大学美術館)
150508impact1 これは絶対見たい、見なくちゃの展覧会。この日は上野を歩いても汗はかかないだろうということで、仕事をちょっと押しやって出かけた。でも行きに歩くのはなあ…芸大、遠いんだもの。そこで「めぐりんバス」を利用。トーハクに行くときにいつも時間が合わなくて、今回初めて乗った。ちょっと待ったけど、らくちんらくちん、待っても歩くよりは早く着いたと思うよ。
150508impact2_4 さて、まずは入口の撮影ポイントでパチリ。みんな気がつかないのか、素通りする人ばかり(私がミーハーなのかも)。中に入ると、芸大美術館でこんなに混んでるの初めて、というくらい人が多かった。と言っても、11つの作品を十分ゆっくり堪能できる程度の混雑。
この展覧会は明治時代、日本人が受けた西洋文化からのインパクト、そして来日した西洋人が受けた日本文化からのインパクト、その両方を紹介するもので、芸大とボストン美術館の所蔵品のみを展示して6セクションから成り立っている。各セクションには、左官職人の源さんと西洋人のベティさん(足元の写真の2人です)の会話が吹き出しに書かれたイラストがある。2人の会話はたった一言二言ずつなの に、そのセクションの時代背景や日本人・西洋人それぞれの印象が的確に表現 されていて感心する。展示品のすべてに解説がついていて、「藝」または「B」の文字でどちらの所蔵品かがわかるようになっている。芸大の古田亮先生たちの熱意が伝わってくるうえに、作品たちのどれもが素晴らしいこと素晴らしいこと。コーフンしながら見て回った。
ちなみに、ベティさんはボストン生まれのアメリカ人。貿易商の夫とともに1860年来日、横浜に住んでいて、1862年にコレラで夫を亡くすが、英語教師や来日外国人の通訳・ガイドとして日本で活動したそう。実在の人?みたいな紹介だけど…。

「プロローグ 黒船が来た!
河鍋暁斎の「蒙古賊船退治之図」は劇画チックで、黒船来航当時の混乱を蒙古襲来に置き換えたようなリアリティがある。私が好きなのは「どきやうのはらの上、あわてといふ手」という風刺版画。暁斎の錦絵には江戸幕府の混乱が感じられるが、こちらは庶民の反応が「さもありなん」と頷けて面白い。どれほどの衝撃だったことか。衝撃が落ち着いた後は、当時の横浜港の様子や近代的な建物、船を描いた浮世絵が興味深い。
西洋人から見た日本もどれだけの衝撃だっただろうか。イギリス人ジャーナリストのワーグマンは、時事ネタのほかに庶民の暮らしにも興味をもっていろいろスケッチしたという。彼らにとってショックの1つは公衆浴場で、大勢が裸で風呂に入り、あまつさえ男女混浴だったことはどんなに衝撃だったか想像に難くない。入浴風景を描いた「浴湯図」は高橋由一の作であるが、ワーグマンの原本をもとにしたものだそうだ。原本は伝わっていないとのことだが、美術作品としてだけでなく歴史的資料としても貴重だ。
ほかにアメリカに渡った日本人留学生や木戸孝允、森有礼、岩倉具視などの写真も鮮明に残っていて、それぞれから受ける印象と歴史で習った功績などを重ねあわせて見るのも一興だ。
「第1 不思議の国JAPAN
ここでの圧巻は工芸品。「水晶置物」は水晶(とてもとても大きい見事な水晶)の台座を鈴木長吉が制作したものだが、水しぶき、波、竜がダイナミックかつ繊細に表現されていて圧倒される。いったいどうやって作ったんだ‼ 「十種香箱」は八重垣姫がすぐに頭に浮かんだけど、それはともかく、こういう道具は初めて見たし、見事な作りに目を凝らした。明治天皇がルイス・プラングに贈ったものだそうだ。誰? プラングって(調べたら「アメリカのグリーティングカードの父」ですって。多色石版技法に熟達していたんだそう)。
私にとって必見中の必見は「人体骨格」(旭玉山)。実物をもとに根付を作るよう依頼された玉山は、解剖学者に弟子入りして人体骨格研究を極めたという。33.7cmという小さな骨格にして、すべての関節が動かせるんですって‼ 根付を作るのにそこまで研究する真摯さに頭が下がるし、この作品が模型ではなく美術品とされるのも納得である。
西洋人の日本趣味を満足させた画家たち、河鍋暁斎、柴田是真、渡辺省亭の作品を素晴らしいが、長くなるので飛ばします。
「第2 文明、開花せよ」
棟梁の言葉「洋装で洋館に洋楽を聴きに行けば、文明開化の音がする。鉄道、馬車、鉄橋、ガス灯、イルミネーション。あっしらの日常は様変わりいたしやした」。
ここでは「洋装する日本」のテーマのもと、服装の変化に注目。1878(明治11)年頃に描かれた「泰平有名鑑」(豊原国周)では明治天皇はじめ男性の多くが軍服であるのに対し、昭憲皇太后たち女性陣は和装(平安貴族みたいな)。それが1886年に描かれた「チャリネ大曲馬御遊覧之図」(楊州周延)では男女とも全員洋装になっている。また、髪の毛も1874年には髷がほとんどなくなり、日本の洋装文化への移行がわかる。
もう1つのテーマは「近代都市の出現」。「高輪鉄道蒸気車之全図」(昇斎一景)は高輪・品川あたりを走る蒸気機関車を描いているが、線路のすぐ向こうは海‼ 東京は海辺の町だと私はよく思うのだが、まさにこの絵はそれを実感させてくれる。
「立憲国家へ」というテーマでは、「大日本帝国議会之図」(後藤芳景)で当時すでに傍聴人席が設けられていたのが見られて興味深かった。
小林清親の浮世絵がとてもいい。「九段坂五月夜」が好き。「川口鍋釜製造図」は川口住民として嬉しく鑑賞した。
ところで、美術館という名の建物は、第1回勧業博覧会(1877年、明治10年)にパビリオンの一つとして初めて登場したそうだ。

「第3 西洋美術の手習」
ここでは、ワーグマン、フォンタネージ、ラグーザという、日本人に絵画や彫刻を指導した西洋人とその弟子たちの作品が紹介されている。絵画では五姓田義松の自画像がいい。フォンタネージの絵には明らかにコローの影響がみられるようである。ラグーザは彫刻の教師として来日した。彼の「日本婦人」「日本の大工」は穏やかな生き生きとした表情をしている。大工さんの方は半身を脱いでいて背中に入れ墨が入っているのよ。
「第4 日本美術の創造」
150508impact3 フェノロサ登場。
西洋の真似、西洋美術偏重から脱皮して伝統美術を見直すことにより西洋美術と日本伝統美術が融合した「日本画」が生まれた。フェノロサと岡倉天心がこれを推進する。狩野芳崖、橋本雅邦、横山大観、菱田春草、下村観山等々、錚々たる日本画家の絵画が並んでいる。
その中で異彩を放っているのが「菅原道真天拝山祈祷の図」(小林栄濯)(写真のポスター)。まるで劇画、「こりゃ、なんだ」という衝撃を受けた。道真の鼻が高すぎて、私にはそれだけで十分なインパクトだ。これが明治時代の絵とは。
下村観山の「大石内蔵助」がいい。歌舞伎のいろんな場面における内蔵助(由良之助)が思い出された。
私はここで橋本雅邦の良さを初めて認識した。奥行の表現がこんなにいいって、今までなぜ気がつかなかったのだろう。
菱田春草の「海老にさざえ」は今回前期展示ですでに終了、後期は「寡婦と孤児」が展示されていた。なんと去年の春草展で私が見たのはやはり前期展示の「海老にさざえ」で、後期の「寡婦と孤児」を見逃したのだった。今回の展覧会は後期を鑑賞したので合わせ技で両方見られてラッキー。プラス「月の出」が見られた。
平櫛田中の「鶴氅試作」は岡倉天心の像。20118月にやはり芸大美術館で展示されていた田中の「五浦釣人」像も岡倉天心像だった。
「第5 近代国家として」
「神武天皇立像」(竹内久一)‼ デカい‼ かっこいい‼ 迫力たっぷり‼ 圧倒される‼ この大きさは実際に見て確かめないと(これも上のポスターの写真)。
ここには天皇像、神話、日清・日露戦争に関連する絵画(時代ですなあ)や西洋留学の成果としての西洋絵画が展示されている。西洋絵画もいいなあと思うけれど、こちらの力が尽きたのでここまで。
展覧会は517日(日)までです。

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