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2015年5月26日 (火)

五月大歌舞伎夜の部

523日 五月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
9時近くまでの長い上演時間だったが、面白かったので意外に長さは感じなかった。でも、昼の部は重い演目、夜の部は立ち回り特集みたいで、演目の配分、どうにかならなかったのかしら。
「慶安太平記」
丸橋忠弥(松緑)の酔っぱらっている姿を見て、数日前久しぶりの多飲でふらふらになった自分を思い出し、酔いが甦ってきた。でも酔っ払いのセリフにはあまりピンとくるものがないというか、意外と聞きづらかった。自分の耳が悪いせいかと思ったら、次の「蛇柳」ではよく聞き取れたから…。松緑さんは顔が鋭くなったのが忠弥に合ってとてもよかった。
この芝居、初めてのような気がしていた(3年前の2月、松竹座で見た「慶安の狼」とはストーリーも切り口も違うし)が、犬に石を投げているうちに濠の深さを測ることに気づいた場面で、以前にも見たことを思い出した。ほかは忘れているのだけど、ここだけ記憶に残っていたのだ。白いブチの犬の鳴き声、名題下の役者さんがやっているのだと思うけど、上手だったなあ。本当の犬に聞こえた。で、結局あの犬はなんだったの? 思わせぶりに吠えて忠弥を誘導するような感じで。濠の深さを測る方法を示唆してあげたの? よくわからない・・・。
江戸城の濠の前で蛇の目をさす菊之助さんが、濠の水の青とよく合って、絵面がとてもきれいだった。
梅枝クンは武家の女房ぶりが落ち着いて、夫への複雑な思いをもちながら気遣いも見せてうまかった。右之助さん、團蔵さんもそれぞれ適役でいい感覚で見ていられた。しかし、團蔵さん(忠弥の妻の父)に秘密の計画を漏らす場面は、いまひとつ緊張感が盛り上がらなかった。忠弥が酒びたりになったり、仲間を欺いたりする態度には大星に通じるものがあると思った。
立ち回りは最初のうちは普通な感じだったが、だんだん激しくなってきて、どきどきしながら楽しんだ。松緑さんは戸板を効果的に使った立ち回り、屋根から捕手のもつ紐に俯せに飛び込む大技、舞台端ぎりぎりまで六方で出てきて、すり足で姿勢を正す(横綱の土俵入りみたい)など、かっこいい。第1幕で松緑さんの生ヒザに傷痕や痣がいっぱい見えたが、この立ち回りの激しさではむべなるかな。
刀投げは「蘭平」の立ち回りでもあったが、ここでも捕手が忠弥の刀を取り上げて屋根の上の味方に投げていた。見事成功。ところで、忠弥の住まいはそれなりに立派に見えたが、立ち回りのある裏手の場面になると、やけに粗末に見えてしまった。
「蛇柳」
ABIKAI
で見た時の記憶はほとんどなく(多分、だいぶ寝ていた)、しかし舞台中央の庵が今回はなかったのと、ABIKAIの時は舞台がもっと暗くて幻想的だったような気がする。海老蔵さんは助太郎の声が高くてふわふわしていて、私はあまり好きでない。その点、押し戻しの金剛丸照忠はよかったが、松緑さんの役が肝心の蛇柳の精魂と対峙する場面で不在というのが中途半端で納得いかず、それなら金剛丸はいっそ松緑さんでもよかったんじゃないかとも思った。
松緑さんが激しい立ち回りの後、高僧の役でその対比が面白かった。先述したが、今度はセリフも聞き取りやすかった。
亀三郎さんの能力がバツグンの声と滑舌、丁寧にコミカルに演じるから面白かった。1人置いて行かれ、恐怖で腰が抜けて動けなくなりこれを克服するために飲んだ高野山の薬のあまりの苦さに悶える場面が可笑しかった。「黒塚」の強力を思い出した。
團菊祭なのに海老蔵さんは昼の部の中途半端な山内伊賀亮(眠かったから中途半端と思ったけど、実際はどうだったんだろう)とこの蛇柳だけ。演目にもう少し配慮があってもよかったんじゃないかしら。
ところで、傳次郎さんだいぶ貫録がついてきて、最初わからず双眼鏡で捜してしまった…。

「め組の喧嘩」
実際に大相撲夏場所の最中だったし、そういえば3年前の平成中村座でこの演目がかかったのも5月だったと、この演目には嬉しさを感じた。相撲ファンとしては、序幕第一場のきっかけとなる場面では角力側にも少しは贔屓心を分けたいところだけど、ド考えても火消のほうが正論でしょ。理不尽とわかっていても、その正論を肚に納めて冷静に相手を立てるのがめ組の親分(菊五郎)。ただの粋じゃない、貫録、かっこよさ。でも身分違いを持ち出されて腹の中は煮えくり返ってるんだよね。この感覚は明治の作品だからだろうか。
親分が四ツ車大八(左團次)らに詫びている間、菊之助さん(藤松)の腕の置き方に悔しさ、怒りが溢れていた。
第二場「八ツ山下の場」では「関東代官領 江川太郎左衛門」の標識(って言わないよね)が立っていて、おおタイムリーなんて。菊五郎、左團次、萬次郎(尾花屋女房おくら)の3人に駕籠でやってきた梅玉さん(焚出し喜三郎)が加わってのだんまり。梅玉さんの存在感すごい。でも辰五郎の煙草入れを拾ったことには気がつかなかった。存在感で言えば、二幕目「芝居前」の彦三郎さんの大きさも特筆しておきたい。
3幕の辰五郎内では、亀三郎・亀寿兄弟の会話になんとなくにやにやしてしまった。子役ちゃんは「あいよ」と尻端折りの可愛らしさで客席の拍手を呼ぶ。
親分、かっこよすぎ。もどかしがって離縁まで口走った時様(火消しの女房としての誇りが怒りを呼んだ、という様子が好もしい)も、親分の覚悟を知って惚れ直したって感じ。この2人にはいつも長年暮らした夫婦の濃密な愛情と信頼関係が漂うが、今回はもっと若々しい夫婦の情感が感じられて、いつもとはちょっと違う新鮮さを感じた。いずれにしてもベスト夫婦だ。
團蔵さんも実にかっこよかった。やっぱり江戸っ子の物語は好きだわ。
立ち回りには気の荒い若いめ組らしさが随所に表れていて、楽しめた。九竜山(又五郎)は結局頭に鳶口を刺されて死んでしまうのかしらとこれを見るたびに思うけど、あの後出てこないところを見ると、絶命しちゃったんだろうな。理知的で理論的な九竜山は割と好きだから、気の毒でならない。
梅玉さんがハシゴにのって仲裁に入る場面は騒がしい中に入っていくので声がやや届かないが、いつもかっこいい。梅玉さん自身も気持ちいいんじゃないかしら。
観劇後は余韻に浸りたい気持ちもあるが、いつも、そして今月はとくに終演が遅いから、ダッシュで歌舞伎座を飛び出した。そういえば、先日の昼の部、木挽町広場から地下鉄改札に向かっていたら、新悟クンとすれ違ってちょっとドキドキしたっけ。
<上演時間>「慶安太平記」71分(16301741)、幕間30分、「蛇柳」49分(18111900)、幕間15分、「め組の喧嘩」100分(19152055
蛇柳からめ組の喧嘩の幕間が15分というのは、21時前に終わらせるため? 演目選びには色々な配慮が必要で大変ね。

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