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2015年6月15日 (月)

人間の営みは変わらない:大英博物館展

611日 大英博物館展(東京都美術館)
ロンドンの大英博物館に行ったのは1998年のちょうど今ごろだったかしら。とにかく駆け足で、かいつまんで見ただけなので、だいぶ忘れている。覚えているのは、建物入口の階段に大勢の人が腰をおろしていたのと、売店と、内部では巨大な彫像やら…。ロゼッタストーンは見たんだったっけ??? でもレプリカは2013年の「地中海展」で見たような。
さて、最近の美術展は展示になかなかの工夫が施されていると、以前にも書いたが、この展覧会も①すべての作品にキャッチコピー(?)がつけられている、②各章の最初に主な出来事を挙げた年表が掲げられ、その中に展示作品が時系列で並べられている(章はテーマ別なので年代が重なっていることもある)、③各章の最後に地図が掲げられ、出土あるいはつくられた場所がわかるようになっている、というように、最後まで興味を失うことなく見ることができた。
まず、最初に大英博物館長のメッセージが流れているのを聞いて、「プロローグ」へ。古代エジプトの棺(BC600年頃)の頭のてっぺん部分にはスカラベが描かれていて、当時信じられていたことの実証を見た思いがした。足の裏部分には牛の背に仰向けに乗せられた人物像が描かれていた。これとの対比でライオン型の現代ガーナの棺の模型が展示されていた。共通点は彩色を施した木で作られ、死者を讃えることを目的としていることだそうだが、ガーナの棺は鋭いヒゲと爪に立てた尾が生き生きとしていた。埋葬された人は生前ハンターだったとか。
「第1章 創造の芽生え」(200万年前~BC2500
「大英博物館、最古のモノ」のキャッチコピーはタンザニア、オルフォヴァイ渓谷の礫石器である。人類はやっぱりアフリカで誕生したのだ‼ そしてBC200万~180万年前という時代に人類は道具を作って使っていたのだ‼ 高さ9.3cm、幅8.8cm、奥行7.2cmというこの掌におさまる道具で人は動物の死骸を叩き潰して、骨を割り、骨髄の中の脂肪を取り出していたそうなのだ。なんという智恵‼ 解説によれば「人間の脳は体重のわずか2%を占めるに過ぎないが、摂取した全エネルギーの約25%を消費する。骨髄のような高カロリーの食糧が入手できる道具を作りだしたことで、人間の脳はより大きく複雑に発達し」たのだ。この道具を作り使っている当時の人の様子が見えるような気がして、私はこのシンプルな道具に感動し、すっかり魅了されてしまった。
「人類、アメリカ大陸進出の証」のキャッチコピーはクローヴィスの槍先。14000年前に完全な現生人類が北アメリカに移住した確かな証拠なのだそうだ。どうやってアフリカからアメリカに渡ったのだろう。2万年前頃にはシベリアとアラスカは地続きだったそうだが、それにしても遥かな長い旅に思いを馳せると、人類の素晴らしさを感じる。
ここには紀元前5000年頃の日本の縄文土器も展示されていた。「世界最古の土器を作ったのは日本の縄文人であった」。
「第2章 都市の誕生」(BC3000BC700
又長くなりそうだから、急ごう。ここでは「ウルのスタンダード」(BC2500年頃)が目玉。メソポタミアのウルから「軍旗(スタンダード)」のようなものが発掘されたことからこの名がある。戦争と平和が表裏に描かれているのが実に興味深い。平和からは王様を中心とした階級社会の様子がわかり、戦争からは残虐な行為が見て取れる。
紹介したいものたくさんあるけど、飛ばします。
「第3章 古代帝国の出現」(BC700AD100
ロゼッタストーンのレプリカは欠かせないよね、という感じ。でも私の興味は「アレクサンドロス大王を表した硬貨」と「アウグストゥス帝の胸像」。アレクサンドロスは実際どんな人だったんだろう。会ってみたい歴史上の人物海外篇第1位かも。

「第4章 儀式と信仰」(AD1AD800
これは人類の歴史ではずせないテーマだろう。中国の六博ゲーム(関係あったかなかったか、日本人プロギャンブラー森巣博さんの名前を突然思い出した)、アメリカ先住民のパイプ、メキシコはマヤ文明の儀式用ベルトが興味深い。それからついこの前「インドの仏」展で見たものに近いガンダーラの仏像、ターラー菩薩像には親しみを感じた。
「第5章 広がる世界」(AD300AD1100
シルクロードとインド洋。東西の交易網が確立した中での展示品が見られる一方で、南米最初の国家モチェ族(知らなかった)の様々な壺(100700年)が目を引いた。戦士の色々な表情や体勢を象った壺で、とても魅力的。戦士はエリート階級だったそうだ。
イギリス「ホクスンの銀製胡椒入れ」(350400年)はまさに香辛料交易の象徴のように思えた。ローマの貴婦人の上半身を象っており、底を覗くと胡椒の量を調節する仕組みがあるのが見えた。
「第6章 技術と芸術の革新」(AD900AD1550
宗教的な展示物に加え、陶磁器など時代が上がって精巧な技術によってつくられた美しい作品が見られる。その中で見事なのは「イフェの頭像」(13001400年初期)。イフェは800年頃に出現した西アフリカの大王国の1つ(これも知らなかった)。この頭像はイフェの王を表しているらしい。ヨーロッパ人を驚かせたという技術の高さに納得。「ヘブライ語が書かれたアストロラーベ」のキャッチコピーは「中世ヨーロッパのスマホ的存在」であるが、アストロラーベには通信機能がないんだから、このコピーちょっと無理がない? それはそれとして、時刻がわかり、日の出日没の時刻もわかり、星図の働きもするマルチな道具は素晴らしい。
デューラーの「犀」があった‼ 
「第7章 大航海時代と新たな出会い」(AD1500AD1800
「世界一周記念メダル」なんてものがあったんだ、とまず驚いた。これはドレイクの世界一周成功を記念したもの。片面には世界地図が、もう片面にはアメリカ大陸が刻まれているということだったが、よく見えなかった。
「柿右衛門の象」は彩色が美しい。中国の古典的な染付をもとに日本独自の発達を遂げた上絵がヨーロッパ人好みだったというのはわかる気がする。
ぎょっとさせられたのは「ナイジェリアのマニラ(奴隷貨幣)」。そういう暗黒の時代にがあった事実に引き戻された。
「第8章 工業化と大量生産が変えた世界」(AD1800~)
ミーハー的には「アメリカの選挙バッジ」が面白かった。大統領候補の顔写真を焼き付けたバッジでレーガンのものが一番多かった。
ここでの目玉は「銃器で造られた『母』像」だろう。19761992年モザンビーク内戦で廃棄処分された銃器だけを使っている、このアイディアはすごい。
最後に再び大英博物館長のメッセージが流れていたが、「人間の営みはずっと変わらない」という言葉に大きく頷いた。というか、まさに第1章から見てきて私が最も感じたことそのものだったので、驚いた。人間社会は変化・進歩する一方で、恐らく根本は変わらないのではないだろうか。

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