« 六月歌舞伎座昼の部 | トップページ | 六月大歌舞伎夜の部 »

2015年6月21日 (日)

歌舞伎鑑賞教室:「壺坂霊験記」

618日 第87回歌舞伎鑑賞教室(国立劇場大劇場)
本当は17日に見る予定で、チケットも当日引取りで取っていたのに、チャリで出て半分くらいまで行ったところでモーレツに降ってきた。急いでカッパを着たんだけど、ひどく気持ちが挫けて家に戻っちゃった。家のほうは降ってなかったし、そのまま出かければよかった…。見ないのはもったいないからあらためてチケットを取り直し、前日のチケットも取りだした。このままパスしてチケットを引き取らなかったらどういう処理になっていたんだろう。
「歌舞伎のみかた」
久しぶりに正統派の「みかた」(正統派ってなんだ、って気もするけど)を見た。暗闇の中、スッポンから亀寿さんが上がってくる。声よし、滑舌よし、簡潔・的確、テンポよく花道、定式幕、回り舞台、セリの説明をする。舞台が回りながら大ゼリが上がると、客席がどよめいた。
上手の御簾が上がり、竹本の2人が紹介された。翔太夫さんと鶴澤祐二さん。今日の芝居の一部の実演があった。
このあと、片岡當史弥さんによる女方が出来上がるまでの実演。何しろ3階席だから見えないわ~と諦めかけたら、ちゃんとスクリーンに写してくれてありがたかった(当然といえば当然の配慮だけど、嬉しい)。亀寿さんはこの実演の間、適度な解説と當史弥さんや衣裳さん、床山さんへの質問をして、より分かりやすく興味深い実演となった。
顔はびんつけ油→水ときおしろい。これをハケで塗り、スポンジで素早く叩く(早く叩かないとおしろいが乾いて固まってしまうんですって)→ぼかしの紅(ぼかしを入れることによって女性らしい顔になる)→粉おしろい→まつ毛を拭く(まつ毛におしろいが残っていると、目を開いていないように見える)→目尻に紅の目張りを入れる(立役は茶色や紫、黒だったりする)→口に紅(自分の唇より小さく、丸みをもたせる)→目頭に墨でアイライン→墨で眉描き(眉で印象が変わるので、神経使ってていねいに。本来は紅で下描きをしてから墨で描くが、今回は時間の都合で直接墨で)。これで顔は完成。女方の役者さんは自分の眉の上に描くが、自分の眉が邪魔になるので剃っている、立役は自分の眉も利用するので剃らないのだそうだ(いろんな役者さんの素顔が思い浮かんだけど、女方さん、そうだったかなあ)。
顔の後は衣裳と鬘をつけて、最後に腕・手におしろいを塗る(衣裳を汚さないために最後ね)。
見事な赤姫が完成して、今度は会場から男子2人が舞台へ上がり、女方をやってみる。女方の最初は必ず肩甲骨をくっつけるようにして肩を下げて、って言われるけど、これ実に難しい。できたとしてもその姿勢維持できない。衣裳をひっかけて、膝を曲げて歩く(昔は膝の間に挟んだ紙を落さないようにという訓練をしたとか)。細身で背の高い2人の男子は会場の笑いを受けながら、當史弥さんと花道を引っこんでいった。
最後に、演目紹介として、壺坂の画像がスクリーンに映し出されたのはグッドアイディアだと思った。お里沢市の像を見に行きたくなった。
オーソドックスな解説でもこんなに楽しめたし、40分が短く感じられた。

「壺坂霊験記」
眠かった。そもそも眠くなるこの演目にしては珍しく面白いと思ったのに、やっぱり眠かった。
眠気をこらえながらも面白く見られたのは、孝太郎・亀三郎の2人の演技がわかりやすくて夫婦愛が伝わってきたからだ。とくに亀三郎さんはニンではないと思うのにそれを超えるわかりやすさ、お里への感謝、悲しみや諦め、お里を疑ったことへの悔いといった気持ちが直球で表現されていたのが好もしかった。孝太郎さんのお里も年上女房に見えてしまったが、沢市への愛情と出過ぎない女性の美しさに好感がもてた。深い愛情をもってつましく静かに暮らしている夫婦のこれまでが切々と伝わってくる。
沢市の疑いから始まったこの1日の出来事は静かに控えめに描かれているが、実はドラマチックだと思った。2人が救われて、沢市の目が開いた時の2人の喜びが静かにあたたかく胸にしみた。ただ、沢市がお里を見て「おまえはどなたじゃぞえ」と訊くのはいつもなんか変だなと思う。死から甦ったばかりで現実のこととはまだ認識しきっていなくて、そばにいる女性が誰だかわからないということなら、そういうこともあろうかと思うし、「お前の女房じゃわいな」と言われた直後に、目をつぶってお里の声を聞いたらすぐわかったという展開もわからないではないのだが(台本だと違和感はない)、芝居でその場面を見ているとなんか変なのである。それはともかく、こういうハッピーエンドは後味よく帰れるので嬉しい。
私の見た日、3階はけっこう空席が目立ったが、外国人のための歌舞伎鑑賞教室はどうだったんだろう。なかなかいい試みだと思うし、ちょっと見てみたかったな。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」40分(14301510)、休憩20分、「壺坂霊験記」65分(15301635

|
|

« 六月歌舞伎座昼の部 | トップページ | 六月大歌舞伎夜の部 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんばんはー。

以前壷阪寺に行ったとき。
壷阪寺までは最寄り駅?からバスで行くのですが、乗ったバスの運転手さんに
こんなところまでどうしたの…?という感じで聞かれたことがあり、
歌舞伎の演目でこういうのがあって云々とお話ししたことが思い出されます。
その後も奈良市内の知人他と同じようなやり取りを何度かしました。
奈良市内ならともかく、壷阪寺まで走っているバスの運転手さんもご存知ないとは…と少々寂しく思いましたが、そんなもんなんでしょうかね?

お寺の中には沢市の使っていた杖なんかも飾ってあり、
あの演目を知っている者からするとなかなか興味深いお寺でした。

亀三郎さんの沢市、よかったですよね。
亀寿さんの解説もまさに正統派でしたし。
あの、男性の状態からお姫さまの拵になるのは
以前りき彌さんか誰かがなさっていたように記憶しています。
スクリーンに大きく映し出してくれるのは親切ですよね。
1階にいたとしてもあまり細かいところまでは見えないでしょうしね。
七月の鑑賞教室も演目も良いし、楽しみですね!

投稿: あねご | 2015年6月22日 (月) 21時23分

あねご様
こんにちは。コメントありがとうございます。
あねご様はあちこちに出かけられて、壺阪寺(「坂」じゃなくて「阪」なんですね。ちなみに江戸時代までは「坂」だったとパンフレットに書かれていました)にも行かれたのですね。地元の方、それもバスの運転手さんがご存知ないとはね~…。そんなものなのかも、と思うしかありませんbearing でも、やっぱり行ってみたい所ですわ~。

歌舞伎鑑賞教室は地味ながら、「みかた」もお芝居もとてもよかったですね。そうそう、以前、りき弥さんも鑑賞教室で女方の実演をなさったんでしたね。私は松也クンのトークショーでも見たことがあります。
歌舞伎を見慣れている者にとっても、女方が出来上がっていく様というのは不思議なものですよね。

コメントの公開とお返事が遅くなってごめんなさい。

投稿: SwingingFujisan | 2015年6月23日 (火) 17時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 六月歌舞伎座昼の部 | トップページ | 六月大歌舞伎夜の部 »