« 仁左様、人間国宝に | トップページ | 虹と雨 »

2015年7月17日 (金)

歌舞伎鑑賞教室:「義経千本桜」

712日 歌舞伎鑑賞教室(国立劇場大劇場)
ネットでは空席なしだったけれど、そこそこ空きがあって、私の前などほぼ1列空席(1階センターより前のいい席)。おかげで視界を遮られることなく、よく見えた。
「歌舞伎のみかた」
先月も正統派(と便宜的に言わせていただく)、今月も正統派の「みかた」。萬太郎クンが舞台奥で後ろ向きに立ち、盆が回ってせり上がり、徐々に下がって正面へ。
まず、盆・セリ・花道の役割を説明し、揚幕のチャリンは幕開閉の実演で聞かせる。次に舞台上方の御簾・床・竹本について。御簾をあげて、竹本豊太夫・鶴澤翔也さんが萬太郎クンの演技につけて今日の演目の一部を演奏した。それからツケ打ち(金田良祐)さんも加わって、萬太郎クンが侍の走る場合、若い娘の走る場合、見得の3様を実演した。若い娘の時には客席の暖かい笑いが起きた。そして「本朝廿四孝」から、白須賀六郎が主君に意気込みを語る場面――役者・竹本・ツケ一体の実演があった。
さらに、黒御簾内の様々な楽器から大太鼓が舞台に登場し、<自然>の音を叩く。雨は雨が屋根や地面に当たった音、水は雨が地面に落ちて川へ流れる音、川はやがて海となり波が音を立てて打ち寄せる。それから日本古来の戦いとして遠寄せの音が披露された。
そして、今日の演目「義経千本桜」についての説明。源平合戦図屏風がスクリーンに映し出され、源平の旗印がアップになった。旗印はチームカラーにあたり、源平の旗印は運動会の紅白の起源である。「義経千本桜」は江戸時代の人が知っていた義経にまつわる話に空想を加えた話である。平家逃亡の地図、義経逃避行の地図、銀平の家族構成図(ここで、銀平すなわち平知盛であると正体が開かされた)がスクリーンに映し出されたのは、わかりやすい説明がさらにわかりやすくなって、とてもよかった。
萬太郎クンも声、滑舌ともにいいから、短い時間ですっと頭に入ってきた。

「義経千本桜 渡海屋・大物浦」
菊之助さんの銀平は堂々としていてカッコよかった。顔も声も違うのに、見ているうちに吉右衛門さんに見えてくるのが不思議だった。これが芸の継承ってことなのか、と改めて思った。声を低く強く出し(発声の工夫が感じられた)、知盛になってからの動きは大きく勇猛だったが、爽やかな美しさは消しようもなく、たま~にニン違いを感じることもあった。でも、こんな爽やかで美しい知盛も悪くない。いや、とても素敵だった。
梅枝クンのお柳は声が女房っぽくてよかった。典侍の局の時は声を変えていた。お柳のダンナ自慢はいつも眠くなるが、今回初めてまともに聞いた。
萬太郎クンの義経は童顔ながら気品と主君らしさが備わっていたと思う。悲しみが漂っていたのもよかった。
亀三郎さんと右近クンの漫才コンビ(?)は客席を大いに笑わせ盛り上げていた。魚づくしもわかりやすくて終わると拍手が起こった。この日の観客は大人が多かったけれど、高校生はこのコミカルな2人が実は…という部分、わかるかしら。右近クンは勇猛で、兼ねる役者としての有望さを見せた。
全体に感動的で、安徳天皇を入水させなければならないと嘆く典侍の局、幼い安徳天皇の不安、悲しげな様子(子役ちゃんがとてもうまい)にはうるうるした。官女たちが「お先へ」と言って海に飛び込む場面はいつも涙を誘われる。そして局の自害に目が潤み、それを見た知盛のショックに胸ふさがれる思いがした。安徳帝の知盛に向けたセリフが胸にしみる(再び、子役ちゃんうまい)。「知盛さらば」と別れを告げる安徳帝に「ははあ」と平伏する知盛。碇の綱に引かれて海に身を投げる知盛。幕外で手を合わせほら貝を吹く弁慶。みんな泣けた。
すでにこちらへもコメントをいただいたように、弁慶役の團蔵さんが怪我で休演。亀井六郎役の菊市郎さんが弁慶になったため四天王が3人になってしまった。そこで、片岡八郎役の菊史郎さんが亀井のセリフも兼ねて言っていた(亀井→片岡って続いて喋るのが2回、亀井単独のセリフが1回)。菊市郎さんはやや小粒感があったが、知盛への哀悼の念が丁寧に表現されていてよかった。
花形の芝居は大好きだけれど、時としてやはり味わいが薄いなあと思う。しかし今回これだけいい「義経千本桜」だったのは、若手が丁寧に人物の心を演じたからだろう。
最後に、先月は観音を含めてたった3人の芝居、今月は大勢が出演。なんか面白い。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」20分(11001120)、幕間15分、「義経千本桜」115分(11351330

|
|

« 仁左様、人間国宝に | トップページ | 虹と雨 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

今晩は。
国立の ご感想楽しく読みました。私は菊之助の後半のせりふの明晰さに感心しました。三悪道の下りは、今の大幹部、何をいっているかわからないことが多いので、改めてこんなせりふの内容かとも思いました。播磨屋はきっと婿さんの長所を的確に見抜いて、想定外の役を振ったのかもしれませんね。(由良之助あたりも、遠くないうちにやるかも知れませんね・・・)
松嶋屋の人間国宝おめでたい限りです。以前は、人間国宝⇒芸術院会員というルートが普通でしたが、最近はそれも崩れてきていますね。

投稿: レオン・パパ | 2015年7月18日 (土) 20時08分

レオン・パパ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
感想がすっかり遅くなってしまってすみません。
たしかに、おっしゃる通り、大幹部はセリフがはっきりしないことが多いですね。菊之助さんのセリフの明晰さがよりこの芝居を感動的なものにしたのかもしれません。セリフって大事だなとあらためて思います(セリフがわからなくて眠くなることも間々あるし…)。由良之助までやったら、「最強の役者」ですね。
仁左様の人間国宝、本当に嬉しいです。以前のことは存じませんでしたが、仁左様も井上八千代さんも芸術院会員→人間国宝ですね。

投稿: SwingingFujisan | 2015年7月18日 (土) 21時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 仁左様、人間国宝に | トップページ | 虹と雨 »