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2015年8月19日 (水)

日本の画家って素晴らしい:「前田青邨と日本美術院」

816日 「前田青邨と日本美術院」(山種美術館)
速水御舟の「炎舞」狙いで娘と出かけた。「炎舞」は2年ぶりの公開で期日は23日までと知り、日程的にはきつかったけれど、この日しかないもの。
で、「炎舞」は第二会場に展示されていたから、先に第二会場へ。第一会場は混んでるというわけではないけれど、それなりに人もいたし、この人たちが移動する前に行っちゃえというわけ。
闇の中に炎が激しく立ち上り、煙が渦巻く先に蛾たちが飛んでいる。蛾は正面から描かれているにもかかわらず、炎の渦に引き込まれ、あるいは向かっているように見える。炎の、蛾の、闇の美しさ、じっと見ていると私も炎に引き込まれそう。関係ないけど、炎と蛾っていうと必ず「緑の館」を思い出す。以前「蝶の道行」を見た時もそうだった。
第二会場の入り口前にベンチが置いてあり、そこに腰かけると正面に「炎舞」が。第二会場に入る人は意外に少なく、しばし、ほとんど視界を遮られることなく「炎舞」を独り占めすることができた。
第二会場の作品を眺めてから、第一会場へ。
まず青邨の「異装行列の信長」がぐいと心を摑む。派手な衣装をまとい斎藤道三との対面に出かける信長を描いた作品で、うつけ者と大物らしさが混在した信長に惹きつけられた。
青邨中心の展覧会であるから、その作品は全部で13点と一番多く展示されている。中で目を引かれたのは「大物浦」とその小下図。青邨は<線>の重要性に気づいたと書いているが、下図と完成された絵を見比べると、確かに<線>が活きていることがわかる。仕事柄関心をもったのは「腑分」。この絵で最初に目に入ったのは腑分けされる遺体に手を合わせる人だった。学問として真剣に遺体を見つめるだけでなく、そういう人もいたことになんだかほっとした。「鶺鴒」は大海原をただ1羽飛ぶ鶺鴒を上から描いたもので、海の広さと凛とした鶺鴒が、清々しい静謐を感じさせる。
「ダブルインパクト」で初めてその良さを認識した橋本雅邦はやっぱりいい。「日本武尊像」の力強く威厳に満ちた立ち姿、前をじっと見据えた目が好きだ。「児島高徳」は、桜の木の下で何を思うかじっと前を見て立っている高徳に、後醍醐天皇を救おうとする忠臣の心意気というか覚悟が表情に表れているようでこの作品も好き。雅邦の絵には品位が感じられる。
今回初めて見た(と思う)梶田半古は「高尾図」「赤いショール」など4点が展示されていた。半古は高潔な人柄だったらしいが、それが清潔感をたたえた絵からも感じられる。各画家にはその人となりや絵に対する考えを表したコメントが添えられていて、それを読みながら絵を見ると興味深い。残念ながらこの展覧会には図録がなくて、忘れっぽい私はたいがい忘れてしまった。
安田靭彦の「平泉の義経」は、兄頼朝の合戦に加わろうという義経が秀衡と別れの盃を交わす場面だそうだが、2人は向き合っておらず、斜め前を向かせて前後に並べて描かれているのが面白い。義経が若々しい。
御舟は第一会場にもあって、「埃及土人ノ灌漑」が面白い。あの時代にエジプトに行ったんだなあ。
「炎舞」狙いの美術展だったが、他にも大観、観山、春草、古径、土牛、紫紅、平山郁夫と私でも知っているとにかく錚々たる日本の画家たち、さらには浅学につき知らなかった木村武山、小茂田青樹、守屋多々志、月岡栄貴、小山硬の作品が全部で58点。日本美術院の歴史や画家たちの信頼関係・熱意などがわかったし、見てよかった‼ 山種、ほんといい作品もってるよね~。
2日続きで日本の絵画の素晴らしさを堪能しました。

美術館のカフェの隣でビデオが流れていた。一番前で見なければ音声が聞きとりづらい。で、ざっと見た後、この展覧会にちなんだオリジナルメニューに惹かれてカフェ「椿」へ。
150819embu 娘は「炎舞」にちなんだ「ほの穂」(黒糖風味大島あん)。写真じゃわかりにくいかもしれないけれど、黒の懐紙に蛾が描かれている。私は小堀鞆音「那須宗隆射扇図」から「やしま」。青い海、白い浪、那須与一の矢があしらわれている。中は黄色い柚子あん。セットのさくらんぼ茶が本当にさくらんぼの風味がして、と~ってもおいしかった。ほかに青邨「蓮台寺の松陰」にちなんだ「こころざし」、古径「菖蒲」の「花涼やか」、大観「作右衛門の家」の「青葉」があっ150819yashima て、どの絵も好きだったから全部トライしてみたかったけれど、私としてはやっぱり「やしま」でしょ、というところ。
山種は駅からだらだらと登り坂を歩くのが難だけど、帰りはちょうどバスが来て、下りとはいえ楽しちゃった。

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