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2015年9月28日 (月)

約5時間も意外と疲れを感じなかった九月歌舞伎座昼の部

920日 秀山祭九月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
もう10月の初日が迫っているというのに今ごろ感想で、ちょっと印象が薄れてきてしまった(毎度繰り返す悪いクセ…)。この日は家を出るのがかなり遅くなったので、いつもの遠回り(長時間座れるから眠れる)とは違うルートで行った。銀座で日比谷線ホームへ下りたらちょうど電車が来ていた。「乗換案内」では2分くらい余裕があるはずだったのに、目の前の電車に脳が引かれて急いで車内へ。2秒くらい後、次が日比谷であることに気づいた。飛び降りようと思えばできたかもしれないが、ドアに挟まれるかも…遅刻覚悟で日比谷へ。運の悪いことに日比谷のホームは対面式。息せき切って階段を上り下りし、1本遅れでやっと東銀座に。なんと開演5分前までには3階に到着できた。私の席は通路際だからそれで十分。これまでは開演30分前までに到着していたが、とくに昼の部はそんなに早く出なくてもいいんだなとわかった。とはいえ、電車の遅延とか考えてこれからも早く出るんだろうなあ。前置きが長くなった。
「双蝶々曲輪日記 新清水浮無瀬の場」
去年、国立の通しで「新清水の場」として見ているのをすっかり忘れていた。むしろ、都・時蔵、吾妻・梅枝で見た「井筒屋」(201211月新橋演舞場)のほうがすぐにピンときたのは、今回「小指の身替り」が取り入れられていたからだ。「新清水の場」は国立のプログラムを見て、記憶が甦ってきた。佐渡七殺しの経緯が国立とは異なる。
与五郎(錦之助)と吾妻(芝雀)のいちゃいちゃでれでれがとても微笑ましかった。ビジュアル的にもきれいだし。私は錦之助さんは骨太な役のほうが好きだけれど、この与五郎はかなりいいと思った。
芝居好きの丁稚・治郎吉の梅丸クンがかわいかった。与五郎とのやりとりで、「好きな役者は萬屋錦之助」と梅丸クンが言うと、錦之助さんがお約束のセリフ「そんな役者は大嫌い」続けて「それよりセガレの隼人のほうが」で笑わせた。治郎吉の芝居好きの場面はなんか落語みたいだった(そういう落語、あったよね。それと「趣向の華」の「明烏」での梅丸クンを思い出したから。まじめな芸風の中にそういう空気を醸し出すものがあるのかも)。
太鼓持・佐渡七の宗之助さんは、ここのところコミカルな役が続いている。それはそれで面白いのだけど、そろそろきれいな役も見たくなってきた。
梅乃さんのセリフややることが多くて嬉しかった。
小指の身替りは、「井筒屋」では都が計画を吾妻に打ち明け、それはよいアイディアだと2人がニンマリしている感じだった。当時も思ったことだが、この場面はなんとも後味悪い。番頭・権九郎は悪い奴には違いないが、松之助さんに愛敬(「井筒屋」でも松之助さんだった)があるだけに、よけいに権九郎が気の毒になってしまう。ま、このおかげで与兵衛は救われるわけで、「引窓」で濡髪が「同じ人殺しでも運のよしあし」と嘆く理由がよくわかる。濡髪を逃がしてやるのも良運の罪滅ぼしなのかもしれない。「引窓」は「引窓」で芝居が成立しようものの、前の段があったほうが物語に深みが出るような気がする。
梅玉さんは柔らか味と強さがほどよい塩梅でとても素敵だった。新清水の舞台からの傘をもって宙乗りはちょっと「手順」っぽいところもあったが、梅玉さん自身は気持ちよさそうで華やかな感じを楽しんだ。

「紅葉狩」
一面の紅葉、下手に常盤津、上手に長唄、浄瑠璃とそれだけでも舞台が華やかで豪華でウキウキする。
松緑さんは顔が小さいが烏帽子や衣裳に負けることはなく、おひげも似合って素敵な貴公子だった。染五郎さんはきれいでやんごとなきお姫様らしさが漂っていたが、やはりどうしても声が…。女方ではないから踊りに柔らかさはあまり感じられないものの、とても頑張っていて魅力的だった。国立で扇雀さんのを見た時に、姫は男になって引っこんでいたような記憶があるが、染五郎さんはちらっと鬼の本性を見せながらもあくまで女として引っこんでいったのがとくにいいなと思った。
吉之助さんの岩橋、一昨年の12月、伝統歌舞伎保存研修発表会「乗合船恵方萬歳」の女船頭が思い出された。あの時と同様、腕の動きが大きくて可愛かった。
山神の金太郎クンがしっかりダイナミックに踊っていて、その成長にびっくりした。
「競伊勢物語」
幕開き、茶店の床几に旅人と子供が座っていたが、すぐに立ち上がって下手へ引っ込んだ。拍手が起きたので、え?何?ととまどった。そしてすぐに思い当った。そうか、桂三さんの息子さんの井上公春クンだったのか。あの子は誰?と思いつつ、あっという間だったのでよく見ないでしまった。初お目見得だというのに失敗したわ。
全体に面白かったのだけど、さすがに4時まではもたないだろうと幕間に軽くサンドイッチを食べたのが眠気を誘ってしまい、はったい茶のところでちょっとだけ沈没してしまった(見どころなのにね~)。
序幕一場、又五郎さんの鐃八が最初いい人そうなのにすっかりだまされた。又五郎さんだし、と思っていたら、たっぷりと悪くて。殺されたはずの茶店亭主(桂三)が立ちあがったのにも驚いた。2人はグルだったのか。
二場のだんまりの立ち回りでは信夫(菊之助)の振袖の片袖が切れて鐃八の手に入った時、これが後々まずいことに使われるんじゃないかと懸念したら、案の定そういうことになってしまった。
大詰第一場では、母に勘当されようとする信夫=菊之助の心が哀れで泣けた。そして娘が本当に可愛くて仕方ない母・小由=東蔵の心に泣けた。この2人がとてもよかった。菊之助さんは立役ももちろん水もしたたるいい男で素敵だけれど、やっぱり女方がいい。小由の娘として、豆四郎の妻として、思いの丈が伝わってきた。小由の求めに応じて琴を弾く場面はサービス場面と思いきや、義太夫の三味線とのシンクロだったため、ちょっと物足りない気がした。
信夫を思う東蔵さんがほんと、よかった。
豆四郎(染五郎)は寝てしまったせいもあるが、やや印象が薄かった。
吉右衛門さんの紀有常は貴族としての品格に、一時は百姓暮らしをしていたという捌けたところがあった。娘の髪を梳く父親の姿はなんか胸にしみた。身替りものというのは歌舞伎の定番だが、どれもつらい。長年小由に預けていた娘に再会したというのに井筒姫の身替りにしなくてはいけない父親の気持ちは痛いほどわかるけれど、やっぱり納得できなくて…。最後、豆四郎と信夫が身替りとなった業平、井筒姫が染五郎・菊之助で出てくるが、ほっとしたような、そうでないような複雑な気持ちだった。
様子を窺っていた鐃八が訴人しようと駆けだすが、紀有常が投げた手裏剣で絶命する。梶原みたいに鳥屋から「わぁ~っ」という声が聞こえるのだが、又五郎さんの素敵な悪役ぶりを見ると、鐃八の最期はもっとドラマチックだとよかったのにと思った(弾正とまでは言わないから)。
2
時間7分という長丁場(開演からは約5時間)の割にほとんど疲れることがなかったのが意外(お尻がちょっと痛くなったけどね)。途中居眠りが出たとはいえ、それだけ舞台に引き込まれていたんだと思う。
<上演時間>「双蝶々曲輪日記」48分(11001148)、幕間30分、「紅葉狩」65分(12181323)、幕間20分、「競伊勢物語」127分(13431550

 

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コメント

こんにちは! 歌舞伎レポにお気持ちが向くようになって、ほっとしています(笑)。でも、スポーツ(特に、ひいきの人、チーム)で一喜一憂するお気持ち、よっく分かります。本人を差し置いて、どん底に落ちた気持ちになりますよね。
「だてくらべ」の「又五郎さんの鐃八が最初いい人そうなのにすっかりだまされた。又五郎さんだし」! 「又五郎さんだし」というところがかなりツボでした! 分かります、わかります(笑)。又五郎さんの悪役は、どこか愛嬌がありますよね。舞台に又五郎さんがお出になると何故か安心しますし。
紅葉狩は、季節にぴったり(ちょっと早いけど)で、豪華でしたよね。だから、「双蝶々」も、敢えて「引窓」でも、ちょうどお月見で良かったんじゃないか、なんて思っちゃいました(イジワルな私!笑)。

投稿: はなみずき | 2015年9月29日 (火) 20時08分

はなみずき様
こんばんは。コメントありがとうございます。昨日いただいていたのに、今頃になってしまってすみません。
スポーツは思い入れが強すぎると身体によくないわ、なんてこの度思いました。照ノ富士関は怪我が心配で来場所も又毎日ハラハラしそう。気持ちをわかってくださってありがとうございますhappy01
「又五郎さんだし」は、まさにそうなんですよね。歌舞伎の悪役には愛嬌が必要だから、又五郎さんは悪役にも向いているのでしょうね。存在感も大きいし、これからも善人、悪人両方で楽しませていただきたいなと思いました。
「引窓」は言われてみればまさに時節でしたのね。「浮無瀬」も面白く見たので、そこまで考えが至りませんでした。歌舞伎座ではしばらく上演されていないようですので、そろそろあってもいいですね(来年の9月までお待たせかしら)。

投稿: SwingingFujisan | 2015年9月30日 (水) 21時09分

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