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2015年9月10日 (木)

必見、美術館の美術展:NO MUSEUM, NO LIFE?

910日 「NO MUSEUM, NO LIFE」(東京国立近代美術館)
150910kinb1 これも13日までの会期で駆け込み。
「これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」とサブタイトルのついたこの展覧会は、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館の5館の所蔵品を集めた画期的な美術展である。しかも写真OKなのだ‼ ほんと画期的!! 美術展好きなら必見‼
「事典」とあるように、AZ36個のキーワードとその解説、そしてそれに沿った作品が展示されている。つまり、展覧会そのものが「事典」になっているというわけ。たとえば、Aは「Architecture」「Archive」「Artist」「Art Museum」の4つの言葉が選ばれている。このように1つのアルファベットについて複数のキーワードがあるものもあれば、キーワードがないアルファベット(KQUV)もある(下記参照)。最初は慣れなくてちょっと見づらかったが、だんだんなるほどとわかってくる。
150910kinbi2 面白かったのはBeholder(観者)。美術館は見る人なしには成立しえない。原初、絵画・彫刻は宗教的なイコンであった。美術館はその礼拝的価値を排除し消し去り、ニュートラルな視点で見せるのである。つまり作品は礼拝的価値から展示的価値の対象となったのである。しかし、それを見る者はそれぞれの経験や生活を通じて作品と関係をもつのである。だから作品に礼拝的価値を見出す人だっているだろう。美術館、あるいは作品のコンセプトと見る側の感情が一致するとは限らない、それでいいんだろうと思った。ここではふっと後ろを振り返った時、こんな人がいてびっくりさせられた(孫原&彭禹の「I am here」)。
150910kinbi3Collection。写真の数字は169が本展の出品点数(資料は除く)、41.882が国立美術館5館合計の収蔵作品数。169点の内訳が東京国立近代美術館46点、京都国立近代美術館46点、西洋美術館43点、国際美術館34点。って、あれ、新美の所蔵品は展示されていないんだ。
Conservation(保存)では、修復例として安井曽太郎の「金蓉」が見られる(写真は最後に)。女性の青い服に入ったひび割れが修復されているのだが、このひび割れは制作後間もなく入ったようで、安井自身が修復を試みたもののうまくいかず、一方でひび割れた状態を面白がったそうでもある。画家の意図はわからないが、一度は修復を試みたという意思を尊重して2005年に修復されたとのことである。修復によって人物の身体が際立ち、どのように構成された作品かがはっきりとわかるようになったのだそうだ。たしかに2枚を見比べてみると、そんな気がする。修復は元の状態に戻せばいいというものではなく、作品解釈が深く関係しているというひとつの例として興味深い。
一番切実に印象的だったのはEarthquake。日本では避けることの出来ない宿命である。しかし日本の美術館の地震に対する危機管理意識は1995年の阪神淡路大震災がきっかけだったというから、ちょっと驚いた。もっとも私の意識は先般の東日本大震災からだけど。関東大震災を描いた絵は記録としても記憶としても貴重なものだと思った。関東大震災は実感がないから客観的にそう言えるが、阪神大震災の写真を見たら胸が痛んで、そんな言い方はできない。美術館の作品を守る努力は大変だ。私は東日本以来、美術展に行くとほとんど必ず、地震対策について意識的に見るようになった。ここでは西美の免震台が展示してあった。

 

 Handling(取り扱い)では、ただひたすら数人の男性が7つの段ボール箱を組み立て、東京国立近代美術館の内外を走って運び、積み、並べ、崩し、投げ、という映像(田中功起:「一つのプロジェクト、七つの箱と行為、美術館にて」)がひたすら面白かった。椅子に腰かけることができたこともあって、10数分全部見てしまった。その映像の隣ではこの展覧会の壁をつくる作業と、ミロスワフ・パウカの150910kinbi5_2 作品(天井から椅子を吊るされた椅子で、題名はわからない。キーワードはHanging)の展示作業の映像があり、これも興味深く全部見た。壁は板で作る、板と板の間にパテを塗り、平らにする、ビニールシートを張る。そうか、展覧会のたびにこうやって壁を作り直すんだ。
Light。カメラがメモリー不足になってしまって(どういうわけか、本体のメモリーに保存されてしまっていた)、携帯で撮影せざるをえなくなった。シャッター音が響くので撮りたい作品をぐっと我慢。でもグエルチーノが撮影可!!!
Money。美術品の保護・管理・維持にはお金が必要。写真の一番上はルーヴル美術館で収入308億円。内訳で最も多いのが政府補助金・交付金。真ん中がニューヨーク近代美術館で190億円。ここは小売り・作品貸出料の割合が大きい。一番下は日本の国立5館合計で121億円。運営費交付金が最も多い。グラフの一番右が展示収入だが、3つを比較すると…。日150910kinbi6_2 本の国立美術館、頑張れ‼
Original。オリジナルとは何か。つい最近もオリジナル、コピーの問題で大きな揺れがあったが、そうとは割り切れない場合もあり、オリジナルというのは複雑で難しい問題を孕んでいるのだなあと思った。
長くなるので最後にZeroで締めたい。ここは展覧会が終わったあとの展示室である。でもここはゼロではない。次の展覧会(この展覧会のこと)の出品作のクレート(輸送用の箱)が積み重ねてある。美術館にゼロは、休みはないのだと実感した。
150910kinbi7

安井曽太郎「金蓉」修復例
150910kinbi8150910kinbi9_2
修復前                修復後

AArchitecture, Archive, Artist, Art Museum
B
Beholder
C
Catalogue, Collection, Conservation, Curation
D
Discussion
E
Earthquake, Education, Event, Exhibition
F
Frame
G
Guard
H
Handling, Hanging, Haptic
I
Internet
J
Journalism
L
Light
M
Money
N
Naked/Nude
O
Original
P
Plinth, Provenance
R
Record, Research
S
Storage
T
Tear, Temperature
W
Wrap
X
X-ray
Y
You
Z
Zero




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