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2016年2月 4日 (木)

2月歌舞伎座夜の部は幕見で

23日 二月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
色々悩んだ末、今月は昼の部をいい席で見ることにしたため節約を考えて夜の部はパスするつもりだった。ところが、「籠釣瓶」は吉右衛門・菊之助の初共演だってこの前の東京新聞に出ていて、ああそうだっけと今さら気がついて、そしたらどうしても見たくなってしまった。そこで日中外出予定が入っていた3日、一幕見を狙うことにした。籠釣瓶の発売は1645から。私が歌舞伎座に着いたのが1545.発売までは待てるとしても開演の1812まではきつい…なら、いっそ「源太勘当」も見ちゃえと決めた。戸口で歌舞伎座の人に「3B席もあいていますよ」と何度も勧められたけど、最後の踊りまではいられないのでお断りして4階へ。「源太勘当」は35番、「籠釣瓶」は2番だった。入場開始の1610、順番通りに中へ入り、大急ぎで狙っていた席へ。バッチリ‼
夜の部、見える範囲(ということは3B3Aが主)でかなり空席が目立った。戸口で3Bを勧められたのもむべなるかな。幕見席も余裕で、いつもの3Bで見るよりずっと楽、集中して見ることができた。花道も七三は十分見えたし、初幕見はだ~い満足。舞台との距離があったせいか、逆にあ、そういうことだったのかという新鮮な驚きなんかも感じたよ。「源太勘当」も「籠釣瓶」もと~ってもよかった。パスしなくてよかった。
「ひらかな盛衰記 源太勘当」
前半の後半15分くらいちょっと眠くてうつらうつらしてしまったが、全体としてかなり面白かった。この演目を最初に見たのは20054月の勘三郎襲名公演だからもう10年以上も前のことか(あら、その公演、昼の部の最初が「源太勘当」で、夜の部の最後が「籠釣瓶」だったわ)。あの時は勘太郎さんが源太だったことだけは覚えている。内容はなんとなく覚えているようないないような…。で、今回は勘当の理由もはっきりわかって、だから面白かった。それにけっこう笑いを取る場面もあるのね。横須賀軍内、茶道珍斎は10年前も市蔵さん、橘太郎さんだったんだ。この2人が権力におもねり、それを笠に着て源太をいじめる。弟平次も兄をいたぶる。私はいじめの芝居は好きじゃないけど、この3人がアホでコミカルに描かれているせいか(本来深刻になりそうな場面に笑いが入る)、母の源太に対する愛と理解が伝わるせいか、イヤではなかった。そういえば母延寿も秀太郎さんで前回と同じ配役だった。秀太郎さんの大きな母の愛と思慮がとてもよくて、ラストは感動した。
源太の梅玉さんは武士としての気概とやわらかさが「鎌倉一の風流者」にぴったり。ただ、荒縄帯の阿呆払いの姿になってからは、なんか心中ものの町人みたい、なんて思ってしまった。
源太をひたすら恋い慕う千鳥は孝太郎さん。今回4階から見て役のイメージがよくわかるような気がした。孝太郎さんは決して美形とは思わないが、立居振舞が愛らしく源太への強い思い、延寿への孝心が伝わってきた。

「籠釣瓶花街酔醒」
幕見席に関して言えば、「源太勘当」よりは人が多かった。
廓の女の悲しさ:女は「売り買い」の対象であることを今回ほど強く認識したことはない。次郎左衛門は確かに金払いがよく、性格も女を食い物にしたりいじめるようなことはない優しい人ではあるだろう。でも、次郎左衛門がここの女たちを「売り買い」の対象として見ていたことも間違いない。吉原随一の花魁であっても所詮女は商品。それがわずかでも感じられたから、八ツ橋は繁山栄之丞を思い切ることができなかったのではないだろうか。次郎左衛門の面相はさほど問題ではなく、栄之丞が自分にぶら下がっているような男でも…。違っているかもしれないけど、私はそんな感じを受けた。そう思ったもう一つの理由は、菊五郎さんの栄之丞がこれまでのイメージと全然違っていたからだ。私が勝手に思い描いていたイメージに過ぎないが、栄之丞はワルではないがちょっとニヒルで男っぽい感じ。でも菊五郎さんの栄之丞はおっとりしてお人よしで…う~ん、ちょっと違う。八ツ橋がそこまで惚れる魅力は私には感じられなかった。八ツ橋に対する怒りもそんなに強くなくて、だから八ツ橋が栄之丞に対する誠を立てて、という感じがあまり伝わってこなかったのだ。もっとも、そういう男だから逆にいいのかもしれないのかな。
八ツ橋は、縁切は強い意志をもって冷たく、取りつく島もない。でも、こんな形で縁切を持ち出さざるを得なかったことを心の中で次郎左衛門に詫びているのはよくわかった。それにしても、八ツ橋は身請け寸前まで話が進んでいたのに、本当はどうするつもりだったんだろう。

さて、場内闇→幕があくとぱっと華やかな吉原。私の歌舞伎原点であるこの幕開き、いまさらながら見事な演出だと感心した。というのは、次郎左衛門と治六の驚きと同じ効果を客席も受けることがわかったから。これって、今まで気がつかなかった4F効果。花魁道中の美しさ、豪華さも4階から見ると次郎左衛門と同じ物珍しさ、楽しさを味わえた。舞台と4階じゃ高さが全然違うのに不思議だわ~。梅枝クンの九重もものすごくきれいだったけど、菊ちゃんあの八ツ橋の美しさにはゾクっときた(ここも次郎左衛門と同じ気持ち)。謎の微笑みも品よく美しく、す~っと吸い込まれそうで、腑抜け状態にされた次郎左衛門がよく理解できた。一方の治六(又五郎)は物珍しさに圧倒されている様子がいかにも田舎者らしくて、こちらも大いに共感できた。腑抜けの次郎左衛門を見て心配しつつ、その理由に思い当たってニヤっとした顔に嫌味のない実直さが表れていた。
次郎左衛門、2度目の登場(立花屋店先)ではあの田舎者がすっかりお大尽風になっており、デレデレしながらも遊び方はきれい(どんだけ金持ちなんだ、っていつだったか通しで見たんだったっけ)。もうじき身請け、うきうき嬉しい天国からまさかの地獄へ。たしかに八ツ橋は商品かもしれないけれど、本当に八ツ橋のことを思う気持ちが、おろおろと八ツ橋を心配する様子に見て取れた。満座で恥をかかされた屈辱、怒りを外へ向けず、内へ内へとため込んで、表向きは大人の対応をし、絞り出すように言葉を発する次郎左衛門に私、思わずうるっときてしまった。
そんな次郎左衛門に優しい心遣いを見せる九重。それはただの心遣いではなく、九重が本当は次郎左衛門を好きだってことがはっきりわかったような気がした。次郎左衛門も九重を選んだらよかったのに…でも八ツ橋に一目惚れしちゃったんだものね(あんな微笑みを向けられてはね~)。うまくいかないものだなあとため息をつく。
立花屋二階では、次郎左衛門が籠釣瓶を床の間の刀掛けに置いたので、あれっ、すぐに斬りつけられないじゃないと心配した。でも八ツ橋は逃げられなかった。逃げなかったのか。いや、逃げられなかったのか。八ツ橋に恨み言を言う吉右衛門さんは、八ツ橋の裾を膝で押さえる前から着物の裾が乱れていて(記憶があいまい、でもどこかで姿勢を崩して、盃を交わすときにはもう乱れていた気がする)、狂気を感じさせた。でも、八ツ橋が斬られたときには厳粛なものが心の中に漂った。菊ちゃんの海老反り、4階からでも顔がはっきり見えた。
しかし釣鐘権八(彌十郎)は悪い男だ。
好きな新悟クン(七越)、米吉クン(初菊)が出ていたのが嬉しかった。
<上演時間>「源太勘当」72分(16301742)、幕間30分、「籠釣瓶」115分(18122007)、幕間10分、「浜松風恋歌」30分(20172047

 

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