« 今年は想像で楽しむ播磨坂さくら並木 | トップページ | 巡業西コース »

2016年4月11日 (月)

四月歌舞伎座昼の部

410日 四月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
全部面白かったからいいんだけど、11時開演の終演が16時近くとは一日仕事だなあ。
「松寿操り三番叟」
操り三番叟は好きなので楽しんだ。三番叟(染五郎)と後見(松也)の息も合っていたと思う。糸で袖を引っ張る時とか人形のほうからは後見の動きが見えないのにどうやって呼吸を合わせるんだろう、後見の足踏みも強さを変えたりして大変だなと、そんなところも楽しんだ。
後見2人が箱から三番叟を引き出した時、三番叟がぺたっとしていて本当に人形のように見えた。糸が引かれると人形に命が吹きこまれたようになって、それからは染五郎さんの身体能力の高さを堪能した。

「不知火検校」
前回公演(20139月)と同じ役者さんがけっこう多い。今回のチラシに名前の出ている主な役どころで変わったのが、生首の次郎(橋之助→染五郎)、指物師房五郎(翫雀→錦之助)、手引の角蔵(橘太郎→松江)、丹治弟玉太郎(亀鶴→松也)、
若旦那豊次郎(巳之助→廣太郎)、娘おしづ(壱太郎→児太郎)、検校女房おらん(鴈之助→秀調)。富の市、浪江、おはん、富五郎、初代検校、因業者師勘次、夜鷹宿おつま、岩瀬藤十郎、鳥羽屋丹治、おもと、石坂喜内は前回と同じ。
富の市が救いようもなく悪いヤツなのに、途中からむしろ爽快な気分にさえなってきたのはどういうわけだ。それはひとえに幸四郎さんという役者が演じたことにある。堂々と騙す、堂々と殺す、悪びれない。大きい。実に大きい。実際にこんな極悪人がいたら許せないけど、お芝居だからね。それに歌舞伎の悪には愛敬がなくてはいけないと言われるが、幸四郎さんの富の市には愛敬もあって、大きさと愛敬に騙されちゃうんだろうな。ラストのセリフにはある意味共感を覚える。極悪人の捨て台詞だとしても、かっこよかった。
富の市の少年時代富之助を演じた玉太郎クンがまたまた大きくなっている。前回公演は20139月で、この時も玉太郎クンの成長に驚いたっけ。ワルの芽が大きく育っているのにすましていい子に見せている怖さがうまい。
富之助の盲目と悪は親の因果だろうか。錦吾さんのニンは善人だと思うし、富之助自身もふとした出来心だったのだろうが、富之助の本心がよくわからずあれよあれよという間に殺してしまっていたという気がした。殺した後の心境も25両の行方もわからないので、ひとさまの金をくすねてきた富の市を叱るのにも説得力がない(25両も盗んであんなに貧乏って?)。それは脚本のせいだろう。錦吾さんからは自分の因果かと考えている様子が伝わってきた。
富の市が因業者師勘次(由次郎)を殺す場面はあたりから「盲長屋加賀鳶」とごっちゃになって、頭が混乱した。でも、この場面がなんと熊谷堤!! ついこの間花見をした場所で、こんな殺人が行われていたなんて。花見の時に思い出さなくてよかった。

この勘次殺しと指物師房五郎殺しは、富の市が肩こりに悩む2人に「楽になるようにぼんのくぼに刺してあげましょう」と鍼を深く差し込むのだが、楽になるならと喜ぶ2人に私は「ダメダメ、ぼんのくぼは急所だから」と思わず心の中で呼びかけずにいられない。藤枝梅安の必殺技なんだから(前回公演の自分の感想にまったく同じことが書いてあった…)。
もう一つ、ダメダメなこと。勘次にしても、富五郎に殺された按摩にしても、見ず知らずの他人に簡単に大金を持っていることを喋っちゃダメでしょ。加賀鳶の江戸時代ってそういう時代だったの?
染五郎さんは心底富の市の生き方に共感していて、富の市を尊敬している感じがよかった。富の市と生首の次郎の関係が意外とさばさばしていたのもよかった(幸四郎さんがもっとベタついた感じになるのかと思った)。
松也さんの玉太郎は、小心者が巨悪の世界に引きずり込まれるとこうなるという恐怖心はわかるが、心の変化にもう少し繊細さがほしいかも。
師匠殺害の二階家の見せ方は前回あまりうまくいってないと感じたようだが(自分の感想なのに)、今回は面白いと思った。ただ、テンポが悪く冗長に思えた。
その他の感想はおおむね前回と同じ。「藪原検校」より「不知火検校」の方が好き。
「身替座禅」
仁左様の品のよさ、ほんのりした色気、愛敬。仁左様の芸には硬質なものを感じることが多いが(それがステキ)が、伊左衛門とか右京とか、男の可愛さがその硬質さと相俟ってさらにステキになる。可笑しさでは、声を立てて笑うというよりは、微笑ましくてクスリと笑う感じかな。
玉の井の左團次さん、不知火検校を捕える石坂喜内から20分で変身(ちなみに、石坂喜内には幸四郎さんの大きさと対抗できるという意味で左團次さんがぴったりだった)。最近の玉の井には、化粧を強調して浮気に対する恐ろしいような怒りよりも化粧は普通で夫への強すぎる愛ゆえの怒りを表現する傾向があるように思うが、左團次さんの玉の井は化粧は普通、怒りは凄まじく怖かった。それが左團次さんの持ち味でもあるから面白かったけれど。
又五郎さんが右京と玉の井の板挟みになる太郎冠者の実直さと小心をなところ見せていて可笑しく、実にいい太郎冠者だった。
<上演時間>「三番叟」18分(11001118)、幕間10分、「不知火検校」一幕目90分(11281258)、幕間30分、二幕目69分(13281437)、幕間20分、「身替座禅」57分(14571554


|
|

« 今年は想像で楽しむ播磨坂さくら並木 | トップページ | 巡業西コース »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 今年は想像で楽しむ播磨坂さくら並木 | トップページ | 巡業西コース »