« 爆笑2時間:段之、徳松ふたり語り | トップページ | 「忘れえぬ慕情」または「長崎の台風」 »

2016年5月18日 (水)

わくわく楽しい国芳・国貞:「俺たちの国芳、わたしの国貞」

517日 「俺たちの国芳、わたしの国貞」(Bunkamura ザ・ミュージアム)
国芳は何度も見てるし、何より渋谷だし、今回はパスと決めていた。ところが、「ぶらぶら美術館博物館」を見たら俄然行きたくなって、ついに重い腰を上げた日は雨。これなら渋谷の町も美術館もすいているかなあ…まあまあ普通の人出だった一方で、都美の若冲はみんな同じことを考えるようでお昼過ぎで210分待ちになっていた(午前中はもっと混んでたかもね)。今日18日は65歳以上無料とのことで午前1045分に320分待ち!! もう恐ろしいとしか言いようがない。
さて、国芳・国貞展は行ってよかった、見てよかった!! 各章じゃなくて、ここでは各幕のタイトルがわくわくさせて楽しいの。このアイディアが浮かんだとき、してやったりと思ったんじゃないだろうか。
一幕目の一「髑髏彫物伊達男(スカル&タトゥー・クールガイ)」
国芳の水滸伝ものに、国貞の「当世好男伝(とうせいすいこでん)」松竹梅は役者が演じるクールガイたち。国芳は躍動感と力強さにあふれ、国貞は役者のカッコよさを描き出している。どちらも人気があったのがわかる。とくに役者絵は当時のブロマイドとしてさぞ売れたんだろうなあと思う。
一幕目の二「物怪退治英雄譚(モンスターハンター&ヒーロー)」
国芳の「相馬の古内裏」をはじめとする色々。国貞は里見八犬士。国芳はダイナミックだ。私はちょっとユーモラスなところもある「岡部猫石」が好きだな、やっぱり(以下、絵のタイトルは長いので一部のみ採用。たとえば「相馬の古内裏」は「相馬の古内裏に将門の姫君瀧夜叉妖術を以て味方を集むる 大宅太郎光国妖怪を試さんと爰に来り 竟に是を亡ぼす」)。国貞の八犬士は芳流閣の場面で、12枚、4階までの8枚で成り立っており、もちろん全部揃ってその場面になるのだが、11枚を別にしても絵として成り立っている構成が素晴らしい。
一幕目の三「畏怖大海原(ホラー・オブ・ウォーター)」
ここは国芳のみ4点。椿説弓張月とか大物浦とか。やっぱり国芳のダイナミズム、躍動感には心躍るね。
一幕目の四「異世界魑魅魍魎(ゴースト&ファントム)」
国芳には物語性が感じられる。国貞は清玄を在原業平に見立て、モデル(?)は八代目團十郎。恨めし気な表情が印象的。
一幕目の五「天下無双武者絵(サムライウォリアー)
6
点全部、国芳の合戦もの。私がとくに興味深く思ったのは「宇治川合戦之図」。有名な場面だし、佐々木四郎高綱に梶原源太景季だもの。首ぎりぎりまで川に浸かった馬の表情がリアルに緊迫感を醸し出している。すげぇーと思ったのは「水瓶砕名誉顕図(みずがめをくだいてめいよをあらわすのず)」。馬に乗った柴田勝家が敵を蹴散らし斬りかかり、やられた敵は体をのけぞらして宙に飛んでいる。国芳の絵って、国芳ばかりがすごいって言われるけれど、彫り師と刷り師はもっと凄いんじゃないかっていつも思う。

二幕目の一「三角関係世話物(トライアングル・オブ・ラブ)」
全部が全部というわけではないけれど、国芳の方が背景に凝っている感じがする。国貞の八百屋お七が櫓から飛び降りている図は、まさに歌舞伎の一瞬をとらえた感じ。
二幕目の二「千両役者揃続絵(カブキスター・コレクション)」
ここに一番時間をかけたかも。私の目には誰が誰ってよくわからないけど、当時の人が見れば個性的ですぐにわかったんだろうな。見ているだけで楽しい。
二幕目の三「楽屋裏素顔夢想(オフステージ)」
国貞描く6点の楽屋の図。当時の人々が知りたかった楽屋の賑い、役者の様子なんかが描かれている。どういう場面なのか知るとさらに面白い(五代目彦三郎を襲名した坂東竹三郎に、当時まだ少年であった十三代目羽左衛門後の五代目菊五郎が声をかけている「踊形容楽屋之図」には思わず見入ってしまった)。
二幕目の四「痛快機知娯楽絵(ザッツ・エンターテインメント)」
天保の改革による規制をくぐるための戯画。国芳の戯画は有名だが、国貞も役者判じ絵を描いている。国貞のほうが真面目かな。国芳の「開運出世合躰七福神」はじっくり探さないと7人わからない。
二幕目の五「滑稽面白相(ファニー・ピープル)」
こういうのは国芳なんだな、やっぱり。子供の大工が普請している絵からは、フジタの「小さな職人たち」を思い出した。幇間の振付を示した「桜三筋末廣の松」は、むか~しの童謡のレコードに踊り方のイラストがついていたことを遥かな記憶から引き出してくれた。
二幕目の六「今様江戸女子姿(エドガールズ・コレクション)」
ここまで国芳に押され気味の国貞だったが、いよいよ本領発揮か。2人が描く女子たちは似ているようでいて違う。国貞のほうがいわゆる女らしさというのか愛らしさというのか。国芳の「縞揃女辨慶」からは「女弁慶」という言葉に影響されたわけではなく「夏祭浪花鑑」のお辰の空気を感じた。
二幕目の七「四季行楽案内図(フォーシーズン・レジャーガイド)」
この後、行く所があって、だんだん時間がきびしくなってきたから、ここはちょっと駆け足で。鑑賞に1時間半みておいたのだが、2時間必要だった。
潮干狩りに花火、夕涼み、雪、季節の花、江戸の人々の楽しみが愛おしく感じられた。
二幕目の八「当世艶姿考(アデモード・スタイル)」
圧倒的に素晴らしいのは国貞の遊女五人を描いた図。夜桜の下、禿を2人ずつ従えて歩く吉原の超一流遊女たちは、わずかに唇に紅をさしただけで、藍色の濃淡のみで描かれている。どんな華やかな色使いよりも「やられたっ」。これも彫り師と刷り師の力量が凄い。

全体として、国貞は役者絵や美人画などの表情が、国芳はドラマチックな躍動感が印象に残る。こういう浮世絵見ると、歌舞伎好きでよかったなあと思う。国貞ってこれまであんまり気にして見なかったけれど、今後は要注目だな。ところでこれ、全部、ボストン美術館がもっているんだよね~。

|
|

« 爆笑2時間:段之、徳松ふたり語り | トップページ | 「忘れえぬ慕情」または「長崎の台風」 »

展覧会」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 爆笑2時間:段之、徳松ふたり語り | トップページ | 「忘れえぬ慕情」または「長崎の台風」 »