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2016年6月12日 (日)

歌舞伎鑑賞教室「魚屋宗五郎」

65日 歌舞伎鑑賞教室「魚屋宗五郎」(国立劇場大劇場)
日曜日なので、観客はほぼ大人。どこかの日本語学校?の外国人学生みたいな人(子供ではない)たちはいた(出かけるのが遅くなったので焦っていて、ちゃんと見てこなかった)。
「歌舞伎のみかた」
場内まっくらになり、やがて舞台のあちこちから光が差し込む。セリがいくつも上がってきてまわる。再び暗くなる。そしてスッポンから萬太郎クン登場。
盆、セリ、スッポン、花道、揚幕(チャリン)、上手下手の説明を手際よく進める。上手側の説明の中でツケ打ちに光を当て、実演が入る。
たとえば女方の歩きに合わせたツケ。萬ちゃんが肩甲骨を寄せてなで肩を作り、膝を曲げて狭い歩幅でしゃなりしゃなり歩く、そしてお約束の転び。めったに見られない萬太郎クンの女方が見られてにんまり。
次は見得のツケ。萬ちゃんが景清に間違えられ捕り方に囲まれるところへ、本物の景清が登場する。橋吾さんだ!! かっこいい。橋吾さんが持つ角材は裏に穴が2カ所あいていて間に持ち手が通るように作ってあった。景清は荒事ということで、橋吾さんは六方で花道を引っこむ。これもなかなか見られない貴重な実演。荒事の対照にある芝居として次は世話物。弥太五郎源七(千次郎)が新三(國矢)を待ち伏せする場面だ。2人の立ち回りを萬太郎クンが羽織で止める。
景清といい、わずかな時間の場面だったが、役者さんがうまいのでそれだけでも十分面白かった。
上手から今度は下手へ。黒御簾である。太鼓、鼓、三味線、笛が舞台に出てきて、それぞれが演奏して音を聞かせる。笛は「ゴッドファーザー」だったのでウケた。今度は全体で、祭り、御殿、悪だくみの音楽を演奏する。悪だくみは太鼓で表す(太鼓は風の音を表すので、<不安>にも使われる)。三味線は、宗五郎が酒を飲む様子を徐→急のテンポで演奏した。
ここからは宗五郎のストーリーの説明。酒樽(2升入りだそうだ)、片口といった道具の説明が新鮮だった。
「歌舞伎のみかた」は萬太郎クンの声よし、滑舌よしでテンポよく進んでとても楽しめた。その一方で、時間に追われるためもう少し余韻がほしかったと言ったら望過ぎかな。

「魚屋宗五郎」
橋之助さんの宗五郎、いつものように甲高い声を張り上げてうるさいんじゃないかとの懸念はどこへやら。出だしの悲しみを抑えて葬儀等のやらねばならぬことを考えている様子もよかったし(素面ならこの人、真面目でちゃんとした人なんだと納得させられた)、真実を知った怒り(おなぎに話の先を促すところだけ、ちょっとオーバーかなと思った)、酔っぱらってからもほとんどうるささを感じなかった。この宗五郎、嫌いじゃない。酒の3杯目、少ししか注いでもらえなかったのを宗五郎が片口から無理矢理入れて溢れそうになった茶碗にそっと口をつけてぐい~っと飲み干すと、期せずして客席から拍手が起こった。おはまと宗五郎2人とも茶碗に目を据えていたのが可笑しかった。酔いが醒め、自分が大それたことをしでかしたことを知って小さくなっている姿に、身分の上下を改めて突き付けられた。
梅枝クンのおはまは若いながら橋之助さんとの違和感はなかった。前半は大変そうだったが、磯部の屋敷になってからは宗五郎をよくコントロールしていた。橘太郎さんの太兵衛がよかった。訪ねてきたおなぎを迎えて、互いにちょっとハッとなりながら悲しみをわずかな時間で分かち合う、そんな雰囲気が見えて泣けた。おなぎの芝のぶさんもとてもよかった。状況を丁寧にかつお蔦を悼みながら話す芝のぶさんの語りにも泣けた。
萬太郎クンの殿様は若すぎる。若すぎるけれど、上の者としての品格はあったと思う。殿さまも酒乱だが、そういう印象はない。もっとも、この場では素面なわけだから、出だしの宗五郎と同様、そういう面は見えなくてもいいのかもしれない。それに、酒が入らなければ下の者に謝罪する素直さも度量も温情もあるというところがきちんと伝わってきた。
松江さんは好きな役者さんなのに、浦戸十左衛門が宗五郎に色々言い聞かせている間、ごめん眠くなってしまった。プログラムに、「宗五郎を諭すときには『宗五郎が思わず寝てしまうように言うんだよ』と聞いています。宗五郎は眠くなってもお客様までが寝てしまっては困るので、塩梅が難しい」と松江さんの弁が載っていたが、見事はまってしまった。後日、もう一度見るので、次は寝ないようにしたい。
橋吾さんの岩上典蔵に存在感があった。前にも書いたかもしれないが、去年の巡業での北村大膳はイマイチな気がした橋吾さん、悪役としての大きさが備わってきた気がする。
宗生クンの三吉はちょっと苦しいかも。初日から日が浅いので日々の成長を期待したい。
日が浅いと言えば、チームワークで作る世話物の難しさを感じた(宗五郎はチームワークの芝居、と出演者の多くが言っているが、全体的なチームワークはまだこれからというところだろうか)。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」30分(14301500)、幕間20分、「魚屋宗五郎」80分(15201640

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