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2016年8月12日 (金)

7月分④:歌舞伎夜話 坂東新悟丈

714日 歌舞伎夜話 坂東新悟丈(歌舞伎座ギャラリー)
目の前に登場した新悟クン、身長は178cmだそうで、「父の方が大きい」。以下、「歌舞伎美人」と重なる部分もありますが。
5月の海外公演について(「演劇界」9月号とも重なる)
パリ→ジュネーブ→マドリードと公演をした。父は元々ヨーロッパが好きだから、かねがね公演を希望していた。演目は「お祭り」、口上、現地語でごあいさつの後、僕は拵えのため引っこみ、父だけ残って歌舞伎の解説、30分の幕間の後、「関扉」。「関扉」は上演前に通訳の簡単な解説があった。
現地語でのあいさつをここでもやってという熱心な拍手を伴う希望に、「フランス語はまったく覚えていない。スペイン語はかろうじて…」と「ようこそ、坂東新悟です。歌舞伎を上演できるのは嬉しい。スペイン語は苦手なのでここからは日本語で」とスペイン語を披露(私としてはフランス語を期待したんだけど…)。打合せにない無茶振りだが、実は予想して1週間前くらいに確認しておいたんだとか。
現地では、完璧に挨拶できた、一方で父は時々詰まっていた。上演中の観客は水を打ったように静か、食い入るように見ていた。現地の人が多く、自分たちを知っているというより歌舞伎に興味をもっていたのだと思う。終わると爆発的な熱狂だった。とくに女方への関心が強く、真っ先に自分のところへやってきて、現地スタッフまでが写真をねだる。父の扮装もすごいが僕のほうへ先に来る。
フランスとスペインの反応の違いとして、フランスは(すでに團十郎さんとか海老蔵さんとか何回かやっているから)歌舞伎というものを知ったうえでの反応(「やっぱり歌舞伎は素晴らしい」)、スペインは30何年ぶりかの上演で熱狂的。「なんだかわからないけどスゴい」という反応(「これが歌舞伎か‼」)だった。
スペインでは、ストで客の入りが遅れ、上演が遅れた。客席構造のため花道が入れられない。そこで横向きに置いた(オペラ座での上演時のように)。初の海外公演だったが、とくに気負いはなかった。行ってみなくちゃわからない、同じ人間だから、行ってみて問題があったらその場で柔軟にという気持ちだった。
食事は日本が一番おいしい。海外でもお金をかければおいしいものが食べられるが、日本が一番。
全公演終了後は父1人残ってスイスへ戻り山歩き。「一緒に行こう」と言われることはもうない。若い時代は休みの時こそ、稽古を含め色々な経験をしなくてはならない。父の年齢になれば休みを満喫できる。
★女方について
高校時代は立役もやったが、自分の中では女方をやるだろうなと思っていた。卒業後、女方を選んだ。背が高いことを理由にして女方から逃れることはできない。立役をやるほど線が太くない。腰を落し過ぎると身長を気にしていることがわかるので、あまり気にしないようにと諸先輩から言われている。
藤の方は20歳くらいでやって手も足も出なかった。熊谷の橋之助さんから「今すぐできなくていいからね。一生かけてやっていく役だからね」と言われてありがたかった。もっと年齢がいってからもう一度やりたい(うん、見たい見たい‼)。

★新作歌舞伎について
新作に今でも出られるのは、平成中村座での経験があるからで、勘三郎さんと父のおかげである。勘三郎さんはいい時にはいい、よくない時にはよくない、と正直に言う人。自分は不器用で対応ができない(とここで、戸部さんが「シャケ投げられた時とか」とぼそっと。「そこへ飛びます?」と新悟クン)。毎日稽古で悩む。その中で芝居は自分1人でつくるものではないとわかってくる。コクーンに出るたび、不勉強なのがわかる。勘三郎さんと一緒だったのは「四谷怪談」だけ。なにもわからず、言われることだけをやった。
★阿毛斗について
「立役なのか、女方なのか…」と言う戸部さんにきっぱりと「女方です」。もっとも「中性的なのでそう言われるのもわかる」「立役と思われることも多かったので、大阪では女方に寄せた」とのこと。変に作らず自然にやろうと思った。男女の主人公のそばにいるサブヒロイン的なイメージだが、戦う格好をしているのにちっとも戦わない、それでいて立ち回りになったらすぐに死んでしまう。コクーンは吐血しそうなほど自分を追い込んだが、「阿弖流為」はとても楽しかった。
シャケは映画には出てこない。最初はなかったのに、ある時亀蔵さんが投げたのが可笑しくて爆笑で、その辺から始まった(映画は、演舞場の半ばくらいに撮影されたそうなので、その時点ではシャケの場面はなかったってこと)。染五郎さんと七之助さんはコミカルなシーンもあったからいいが、自分はどうしたら…。染五郎さんに「阿毛斗は役を忘れて対応したほうがいいのか、役のままのほうがいいのか」ときいたら、阿毛斗のままでと言われた。新感線版では、亀の甲羅を背負っていて「か~めかめかめ」と言って占っていたので、みんなに亀やってよと言われたが、甲羅もつけていないのにそれはできない。でも新感線版をリスペクトしていたので、松竹座で1日だけ「シャ~ケシャケシャケ」とやり、「このさーもんどころが目に入らぬか」と落した。客にウケたかどうかはわからないが、身内には大ウケした。自分は言われたことはどこまでもやるので、カ~メカメカメみたいなのもOKである(巳之助クンのこういう役は別格だそうである)。
★芝居でむずかしい点
歌舞伎座はなかなか出られないのに、吉右衛門さんと「籠釣瓶」に出られたのはありがたかった。「籠釣瓶」では当事者ではないけれど、役の気持として心底つらかった。一番難しいのは芝居をしていない時。阿毛斗でもどうしたらいいのか井上さんが指導してくれないので3人の邪魔にならないようにと自分で考えた。結果はそれでよかったみたい。余計な芝居をすると邪魔になる。コクーンでもそうだった。反応のタイミング、加減がむずかしい。しかし邪魔にならない反応のポイントを探すのが楽しいしやり甲斐がある。
★やりたい役
お三輪、鈴ヶ森、お鹿、万野、お辰など。お鹿は元来女方がやる役だと思う。久松よりはお光をやりたい。お辰はかっこいい。お姫様より動きのある役をやりたい。究極は判官。女方は色々な人に教えてもらえる。

他にも楽しい話、失敗談もあってみんな大いに沸いたけど、それはしまっておきましょう。

新悟クンの第一印象は「うす~い」だった。
体が薄い。細いとは思っていたけれど、洋服だからだろうか、細いというより薄い(昔は私も新悟クンに近いくらい薄かったんだけどな。デヘ)。
ブログで見せる新悟クンのエスプリの一端が感じられる楽しいトークだった。

 

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