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2016年8月16日 (火)

7月分⑧:歌舞伎座夜の部

724日 七月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
歌舞伎は役者が変わると違ってくるから面白い。それなのに、今回、初めて見た時の感動が甦ってきた。泣けたなあ。
「荒川の佐吉」
荒川の佐吉は4回目。うち2回は仁左衛門・佐吉×染五郎・辰五郎、そして3回目が染五郎×亀鶴だった。今回は猿之助×巳之助。
仁左様の佐吉が本当に大好きなのに、三下ヤクザには仁左様はちょっと立派すぎる(これは、前回の感想にも書いていた)のが唯一、ちょっと…と思う点。猿之助さんは、登場した時の姿が冴えなくて誰かと思った。仁左様のすっきりしたカッコよさとずいぶん違うのが面白い。三下だからこれでいいのだと思う。顔が中車さんそっくりだったな。
巳之助クンは出てきた時から大工の風情があってよかった。ツボを押さえた演技、佐吉への友情と卯之吉への愛情が若さの中で自然ににじみ出ていた。猿之助さんとのコンビといえば「上州土産百両首」を思い出すが、牙次郎とは違うものの心としては通じるものがあったように感じた。
海老蔵さんは世をすねた浪人がよく似合う。佐吉の「勝つ者が強い」という言葉に触発されて仁兵衛を斬り、親分の座に就くニヒルさとくらい悪の華が魅力的だった。その生き方の善し悪しは別として、説得力あるように思った。郷右衛門って元200石の武士だったんだ。これまで意識したことなかったな。茶屋で後ろ向きに座っていた海老蔵さんが立ちあがってこちらを向くと大拍手。セリフが聞こえないよ~。海老蔵さんのセリフにひどくウケているお客さんがいた…。
門之助さん(隅田の清五郎)が超二枚目でカッコいい。でもこの役、すぐに死んじゃうのよね。いつも短すぎる清五郎の出番はもったいないなあと思っている。
二幕二場、赤ん坊を抱いて夜の町をさまよう佐吉、その後姿が四幕一場の恨み言へとつながる。最初から何度も泣いたが、この時の佐吉を思って、四幕一場の恨み言は一番泣けた。血を吐くような思いをぶつける猿之助・佐吉への共感が涙となってぼろぼろ流れた。
中車さんの相模屋政五郎は情があり、懐の大きさを見せたと思う。新歌舞伎ではあるが、だいぶ歌舞伎の空気感が出てきたんじゃないだろうか。
猿弥さんの仁兵衛は悪そうで、佐吉がどうしてそこまで忠義を立てるのかわからないが、要するにそういう世界で生きる佐吉の純粋さなんだろう。仁兵衛にはどうもあまり魅力を感じない。
米吉クン(お八重)はちょっと若すぎるような気もしたけれど、気の強さとか、今の状況にガマンできない気持ちの破裂とか、よく伝わってきた。
笑也さん(丸総女房お新)は落ち着いた雰囲気が大店の奥さんに合っている。しかし、お新は自殺しようとするなど、ずるいよ。いつも、この場面は納得いかないんだよね。
最後に、卯之助の猿ちゃん。うまい!! これまでの卯之助たちもみんな上手だったが、猿ちゃんは緩急を心得ているように見えた。おとっちゃんと離れる心細さなんて、あんまり上手で泣けた。また一人、将来の楽しみな部屋子ちゃんが増えたね。

「鎌髭・景清」
亀三郎さんの声の良さが際立つ。萬次郎さんは顔だけ見ている時は誰だかわからなかった(いつもと違う印象を受けた)、さすがに声でわかった。鷹之資クンの成長にびっくり!!
酔っぱらって下手へ去る市川右近さんのコミカルな足さばきがとてもきれいだった。右近さんのコミカルなところが軽すぎず、きちんと武士らしさもあって、「渡海屋」の相模五郎に通じるものがあると思った。市蔵さんのユーモラスな踊りはあまり見たことないような…。お調子者で1人逃げてしまうが憎めない。
左團次さんが大きい!! それに元気だなあ。左團次さんの持つ鎌が大きなものに変わると(後見が手渡して大きな鎌に入れ替わる)、客席がどよめいた。右近さんが海老蔵さんを縛って、「このうえは、第三者の厳しい目で」と言うとウケた。海老蔵さんが花道で右團次襲名について触れて、「鎌髭」は終わり。
「景清」はキョンシーで思い出した。「鎌髭」も「景清」も2年半前に演舞場で見ているのに、忘れていた。笑三郎さんが久しぶりにいい役で嬉しかった(いい役っていうのは、笑三郎さんってどちらかというと年長の役が多かったようなイメージがあるので、「おお、阿古屋」というわけ)。右之助さんが出ると舞台が締まる。猿弥さんに大きさがある。
猿之助さんと海老蔵さんの対峙が面白かった。演舞場でも登場した上妻さんの津軽三味線がショーアップする。客席は大盛り上がりで大喜び。そう、ここは要するにショーだったのである。
<上演時間>「荒川の佐吉」126分(16301836)、幕間30分、「鎌髭」46分(19061952)、幕間10分、「景清」45分(20022047

ちなみに、筋書の「花競木挽賑」の顔ぶれが普段なかなかここに出ない人が多いので嬉しい。

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