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2016年9月 4日 (日)

8月分⑦:第22回稚魚の会歌舞伎会合同公演

821日 第22回稚魚の会歌舞伎会合同公演(国立劇場小劇場)
最近、暑い夏に行われる色々な勉強会を見る気力・体力がなくなってきて、合同公演も悩んだのだけど、やっぱりこれは見ないわけにはいかない。勉強会では、楷書で丁寧に演じられるので、見る側としても勉強になる。
「寿式三番叟」
厳粛な始まり。翁の吉兵衛さん、千歳の音近さん、梅寿さんはさぞ緊張したと思うが、粛々ときっちり仕事をしていた。いや、演じるという仕事ではなく、その場を清めるという仕事で、清々しく感じた。とくに梅寿さんの品がよく舞いもうまいと思った。三番叟は蔦之助さんとベテラン又之助さん。蔦之助さんはさすがに形がきれいで本当に踊りがうまい。又之助さんの踊りはほとんど初めて見る。若い蔦之助さんに負けず頑張っていたのが印象的だった。ただ、2人がちょっとばらばらに踊っているかなという気もした。なお、合同公演には芸歴30年以下という規定があり、又之助さんは今回が最後の出演だそうだ。
「寿曽我対面」
最初に登場する並び大名は22期研修生の6人。研修生はだいたい2年に1回、並び大名などの役で登場するが、鬘と衣裳が馴染んでいないのが初々しい。でも声とセリフがしっかりしている研修生も何人かいて感心した。この研修生たちが修了後は誰かの弟子となって本格的に活動するわけだが、その頃にはもうすっかり舞台に馴染んでいるように見える。合同公演でプログラムに顔写真を入れてくれれば、あああの子がこの役者さんになったのね、と後で感慨を覚えるのに。顔写真はぜひ、入れてほしい。
工藤祐経の喜之助さんは堂々とした大きさがあって見事だった。
小林妹舞鶴の春之助には一日の長があった。
五郎の新次さんは稚気たっぷりでよかった。音蔵さんの十郎ともども年齢相応の若さが兄弟の心を表しているように感じた。音蔵さんは、いつだったか国立の研修発表会以来、そのうまさに注目している役者さんである。
鬼王新左衛門の音之助さんの存在感はさすが。
「女車引」
多分初めて見る「女車引」を京妙、鴈之助、京蔵という、嬉しいベテラン揃いで、「なぜ?」と思ったら、国立劇場開場50周年記念狂言だからということらしい。
3
人ともさすがの芸歴、年輪の違いを見せてくれた。フレッシュな若手もいいけれど、こういうのを見ると、やはり歌舞伎の奥深さを思い知らされる。

「すし屋」
弥助(桂太郎)がすし桶をそんなに重そうに持たないのはいいことだと思った。最初のうちは疑問に思わなかったのだけど、何回か見ていると一応は平家の武将である維盛が空のすし桶一つや二つでそんなによろよろするか?と気になってきたのだ。6月の染五郎さんもよろよろはしていなかったし、だんだんそうなってきたのかな。とはいえ、お里はもっと軽々と持っているけれど。桂太郎さんは追われる平氏の苦悩を品よく演じていた。
お里の春希さんが可愛い。春希さんは、顔が亀ちゃん(猿之助じゃなくて亀治郎ね)に似ていることもあり、また演技も踊りもうまいと思うのでずっと応援してきた。このお里も、弥助が維盛と知り、上市へ一家を逃がしてやる心情の哀れさ、いじらしさ(しっかりもしている)がよく表れていた。
権太は升一さん。高麗屋の指導を忠実に守って演じるとプログラムに書かれていたが、実際ていねいにかつのびのびと権太として動いていた。梶原一行が去った後、舞台中央付近で「ほうびを忘れちゃいけませんぜ」と声をかけつつ妻子に手を合わせ案じている最中に父親(新十郎)に後ろから斬りつけられる。その瞬間がいつになく切なくつらく感じられた。
新十郎さんは父親役にしては若すぎないかと懸念したが、この中ではやはり父親だろうし、舞台経験も豊富なので安心して見ていられた。母親役の梅乃さんも若いが老女役を勉強したいそうで、私としては第16回合同公演(平成22年)、梅之時代の<おかや>が印象に残っているが、もしかしたらこれがそのきっかけになったのかしら。莨入れから笛を出して吹き、維盛親子の無事を確認してから権太を不憫がる母親がとても哀れだった。
梶原の臣は、吉助、新八、梅寿、音近の4人で、音近さん以外は国立の第21期生。2年前には研修生として初々しい姿を見せていたわけだが、今やしっかり歌舞伎の世界、物語の空気を作っており、その進歩には格段のものがあると思った。それを知るのも、合同公演の楽しみのひとつである。
<上演時間>「三番叟」35分(12001235)、幕間25分、「対面」50分(13001350)、幕間15分、「女車引」20分(14051425)、幕間25分、「すし屋」100分(14501630

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