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2016年9月29日 (木)

でっけえ、幸四郎さん:巡業西コース

924日 松竹大歌舞伎巡業西コース(川口リリア)
この日のリリアは2回公演で、私は夜の部を観劇。う~ん、入りが悪い。昼の部はどうだったか知らないが、夜は2階へ上がる階段のところにロープが張ってあったから、当然2階・3階席には客がいない(最初からそういう見込みだったってことなんだろうな)。1階は78割かなあ。最初の幕間のロビーが異様に静かで変な気分だった。開幕5分前の客席も静か…。
「當年祝春駒」
背景は満開の紅白の梅の木、向こうに富士山。
力強い大薩摩の前演奏があり、ツケとともに梅が両側に惹かれ、中から明石屋一家と高麗蔵さんが現れる。明石屋親子の対面モノとはレアな。とはいえ、なんか今一つ盛り上がりに欠ける…客席も拍手のしどころがなくて…と言う感じ。高麗蔵さんの存在感が目立った。
「口上」
この公演は五代目雀右衛門襲名披露なのでお披露目の口上がある。上手から高麗蔵、錦吾、幸四郎、雀右衛門、梅玉、廣太郎、廣松、友右衛門の並び。
座頭の幸四郎さんが「川口のみなさま、ご機嫌よろしゅうございます」と口を開き、大きな拍手が起こった。雀右衛門襲名の紹介をして3月の歌舞伎座から大阪、どこどこ…川口でという各地の流れで大阪を「おおざか」と言ったのが素敵だった。雀右衛門さんとは従兄弟どうしで、四代目の叔父には大変可愛がってもらい、勉強させてもらった。一力茶屋でもたびたび共演した。叔父のおかるは古風で(その後聞き取れず)。お父様と違い新雀右衛門さんのおかるは勘平一途のかわゆらしいおかる。(「かわゆらしい」がいいでしょ)亡き叔父を偲び、新しい雀右衛門さんの門出を祝して一生懸命つとめます、という口上だった。
錦吾:新雀右衛門さんは、昭和366歳の時、七代目幸四郎追善で初舞台を踏んだ。長いお辞儀が大変なので、赤い小さい枕に頭をつけて、すやすやということも時々あり、お父様に起こされていた。(小さい時は色々あるのねえ。松也さんも泣きだしてたし)立派になられた。
高麗蔵:若年の頃よりたびたびご自宅にもお邪魔し、色々教わった。ドライブにも連れて行ってもらった。自分が初めて手に入れた中古車の部品交換もしてくれた。(微笑ましい)
友右衛門さん:昨年別コースにて川口にはお邪魔した。
廣松・廣太郎:それぞれ、口上の席に列座してこの上ない喜びと一言。
梅玉:先代には公私ともに世話になった。新雀右衛門さんとは若き頃よりよく共演しているが、素敵な女方になった。とてもかわいらしい妹で、毎日充実している。3月、7月に続き声をかけてもらって巡業に参加している。今回は831日、板橋からの巡業だったが、台風や大雨の影響を受けることはなかった。
雀右衛門:襲名披露のお礼を述べた。
孝四郎さんが最後に「少々時間をいただき、一力茶屋をご覧に入れまする。京屋一門と歌舞伎をよろしく。

幸四郎さんがでっけえ。かっこいい。

「仮名手本忠臣蔵 七段目」
由良之助の放蕩ぶりや、三人侍、寺岡平右衛門のお願い、力弥が手紙を持ってくる場面や浪士の訴えなど、前のほうは省略。
仲居たちがなんかかんか喋っていなくなると、そこへ鷺坂伴内と斧九太夫がやってきて、やつには仇討をする気などなさそうだと嘲り合うところから始まる。仲居の梅乃さんがメチャクチャきれいだった。九太夫と伴内のちょっとコミカルな場面の後、九太夫が床下に潜ると、すぐに2階のおかるの部屋の場面になる。おかるが顔を出すと由良之助が酔っぱらって登場。前のほうは省略のため既に手紙をもっている。したがってすぐに手紙を読み出し、おかるが盗み読みする場面になる。
梅玉さんの平右衛門、雀右衛門さんのおかる兄妹はとてもよかった。梅玉さんが口上で「とてもかわいらしい妹」と言ったのも、幸四郎さんが「かわゆらしいおかる」と言ったのもまさに道理。雀右衛門さんのおかるは兄に対してもとてもかわいくて、由良之助幸四郎にも「かわゆらしい」と言わせたその一途さには、私も「かわいい!!」と強く思った。階段を下りる足の運びも女らしくて可愛かった。
兄妹の再会の場面では、面目ないと恥ずかしがる妹に「よく身を売った」と褒め、一回りさせて「いい女になった」と感心する兄、2人の心に通うものに感動して泣きそうになった。何度も言うようだが、梅玉さんが本当にかわいい妹と思っている感じなのだもの。由良之助の策略に気がついて妹に刀を向け、「命をもらう」「こわい」の場面は丁寧に描かれていた。笑いも呼んでいたが、2人がとても自然で、命乞いをするおかるにも泣きそうになった。
やがて真実を知らされたおかるの嘆きには、もう泣きそうではなく、泣いてしまった。
ただ、これを初めて見る人にはどうだったろう。コンパクトにまとめられているため、前後関係がわからなくなかっただろうか。平右衛門の討入に参加を許された喜びとか、逮夜に九太夫にタコを食べさせられた恨みとか(ここ、かなり大事だと思うんだけど)。私は前から2列目で(Web松竹でねばって取った)セリフもよく聞き取れたし(今さらながら、ああそういうことを言っていたの、なんてこともあった)、その世界にしっかり入り込めてぽろぽろ泣けるほど入り込めたが。
幸四郎さんは出番は少ないのだが、九太夫を討つところなど気持ちが溢れていて感動した。前提がわからなくても、あの気持ちが伝われば感動できるかも。ここでも幸四郎さん、でっけえ。
梅玉さんは平右衛門が足軽の小物であることを思い出させてくれた。梅玉さんの演技が小さいということではなくて、小物らしさをうまく表していたのだ。
「一力茶屋」は上演時間1時間という短さなんだから、前のほうを出してもよかったんじゃないかと思うけど、巡業ゆえの制限が色々あったのかな。それでも私は大満足で帰路についた。
<上演時間>「春駒」15分(17001715)、幕間20分、「口上」10分(17351745)、幕間15分、「一力茶屋」65分(18001905

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コメント

おはようございます。
雀右衛門さんの「かわゆらしい」おかる、
11月の国立劇場で拝見できそうなので
楽しみにしています。
幸四郎さんはますます、大きな存在感を
見せてくださるようになりました。

川口リリアホールは、私、
こけら落としのときに行ったことがあり、
尾上梅幸丈の藤娘を見ました。
懐かしいです。

投稿: ゆーまー | 2016年9月30日 (金) 06時51分

ゆーまー様
こんばんは。コメントありがとうございます。お早い時間にいただいたのに、こんなに遅くなってごめんなさい。

幸四郎さんは私ちょっと苦手だったのですが(好き嫌いじゃなくて、なんとなく苦手)、このたび幸四郎さんの大きさ、良さをしっかり感じ取りました。って、遅いですよねぇ、今頃になって。
国立は10月が幸四郎さんと梅玉さんの共演、11月は相手こそ違え雀右衛門さんの「かわゆらしい」おかる、仮名手本は重いので見るほうも覚悟がいるのですが、楽しみになってきました。

ゆーまー様、リリアにいらしたことがあるのですか‼ しかも梅幸さんの藤娘をご覧になったとは羨ましい。当時はまだ歌舞伎を見ていなかった私、今にして残念に思います。形のない財産ですよね。

投稿: SwingingFujisan | 2016年9月30日 (金) 22時19分

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