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2016年11月30日 (水)

襲名2人のギャラリートーク:梅花丈、吉之丞丈

歌舞伎美人でレポが出るのを待っていたのだけど、出そうもないので。

1121日 歌舞伎夜話「中村梅花丈・中村吉之丞丈」(歌舞伎座ギャラリー)
この秋、それぞれ四代目梅花・三代目吉之丞を襲名されたお2人の珍しいトーク、それに吉之丞さんは先代も当代も大好きなので、チケット発売と同時に即取った。
司会はいつものように戸部さん。こちらもいつものように、うまく聞き取れなかったところもあり(とくに梅花さんのお話はどんどん進むのでついていけないところもあり)、間違っていたらごめんなさい(ところどころ敬称略です)。
登場したお2人、椅子の高さに驚いているようで梅花さんは「すごいな」と苦笑しながら腰かけた。服装が全く同じで、「まるかぶり」と梅花さんもテレ笑い。襲名後だからと戸部さん。
●まずは襲名しての心境を。
吉之丞(以下、吉):吉之丞は弟子の名前で、初代は大番頭だった。2代目は女方だが立役のことも全部知っていて、子供の頃から世話になった。大きな名前を汚さないように精進する。
戸部(以下、戸):緊張してる?
吉:僕、こういうところ全然ダメなんで、緊張しています。(と、椅子を1回降り、腰かけ直す)。
梅花(以下、梅):(心境は吉と)ほぼ同じ。先代吉之丞も梅花をついこの間までいらした方。2人で顔を見合わせて「吉之丞さんと梅花さんになるんだね~。いいのかなあ」と言っていた。初代梅花は大番頭というよりは先生。なんでも知っていた。あの頭脳をそのまま移植してもらいたい。
私が入った時は先代も舞台に出ていたが、その後出なくなった。先代には女方はみんな世話になっている。先代の子役時代の名前が芝喜松だったご縁だし、大きな名前を途絶えさせたくない。
吉:歌昇さんたちに旦那の芸はこうだと伝えるのが僕の役目。
梅:とても先代のようなことはできないので、私は違うスタンスで。女方は前半先代梅花に、後半は先代吉之丞に教わった。
吉:先代は女方だが、「石切」の大名などもやっていたので立役も教わった。
●どうして歌舞伎に入ったのか。
吉:最初は児童劇団に入っていた。小学校の同級生が入っていて、たまたま新聞にその劇団の広告が載っていた。友人に「あ、これ俺が入ってる劇団。お前も入れよ」と言われて、入った。劇団でも引っ込み思案なので出演はテレビのエキストラ程度。オーディションもよく落ちた。ある時、音羽先生の歌舞伎のオーディションがあった。児童劇団は自主公演をしていて、残っているのはカスばかり。オーディションでぼそぼそ喋っていたら、「もっと大きな声が出るでしょ」と言われ、大きな声を出したら合格した。お客さんの反応がわかる舞台は楽しかった。とくに歌舞伎は面白かった。旦那の舞台に出た。怒られる役ですごくこわかったが、舞台を降りると優しい。音羽先生からこの先どうするのかきかれ、歌舞伎に入りたい、吉右衛門さんのところに入りたいと言ったら、先生が旦那に話してくれた。
梅:音羽先生、怖かった。飴とムチ…飴はほとんどない。
吉:飴はあった。遊びに連れて行ってくれたり、先生の自宅に呼んでくれたり。猿弥クンとも遊んだ。猿弥クンが部屋子になった年が僕の初舞台。
梅:演劇に興味があった。面白くない芝居ばかりやっていた(なんとかという)劇団で猿の役をやった。猿がうまかったマルセ太郎(「猿そのものだったわよ」)のところへ行って直接教わった。でも、この人がお金を稼ぐために作った芸をただでもらうのはイヤだという気持ち(青年らしい潔癖さ)があった。安い月謝で歌舞伎が学べる国立劇場の研修所があることを知り、研修生になった。女方になったのは体がきゃしゃなせいもある。歌右衛門さんに質問されてごちゃごちゃ答えてたら、次の小三郎さんも同じ質問をされて「きれいだからです」と。私が色々言ったからもう疲れてたんじゃない?
吉:中2だったので先代は親みたい。甘えていた。本当の親みたいに甘えっぱなしで、(何も恩返しをしていないで)後悔している。
梅:旦那は怒る、怖い。拵えの時、旦那の周りはきびしさの中に楽しさ。福助さんの周りは楽しさの中にきびしさ。
●「七段目」の見立てについて
吉:梅花さんの見立てで忘れられないのは、太鼓持ちを56人寝かせた餃子の見立て。
梅:これは新蔵さんのパクリなの。新蔵さん来月いないならやってもいい?ってことで(本人がいない時じゃないとね)。
吉:僕、餃子やりました。
梅:見立ての名作は「武豊」。
吉:マグロの刺身の見立てをした。自分が作ったんじゃないけど。(どちらも、何をどうしてその見立てにしたのか、聞き取れなかった)。
梅:鯉紅さん。ネタをやる前に立ちあがるだけでウケる。変なことをやると由良之助が「なにぃ?」って。
2人とも参加したアメリカ公演(平成26月~7月)の話
吉:ディズニーランドへ旦那とそのほかの何人かで行った。この時はディズニーランド組とユニバーサルスタジオ組に分かれた(梅花さんはユニバーサルスタジオ組)。現地では個人行動だったが、旦那に「吉男(当時の名前)、行くぞ」と言われ、一緒に行動した。なるべく日本にないものをと選んで、そのうちの1つボブスレーをやった(今は日本にもあるらしい)。旦那が後ろ、僕が前でダ~~ッと降りてくる。集合時間ぎりぎりまで遊んで帰ろうとすると、「お土産買わなくていいのか」と旦那が言う。それで買わせてもらったが、その間旦那は店の前で待っていてくれた。当然集合時間には遅刻。旦那が一緒だからみんな何も言えない。後で「おまえ、きったねえな」とみんなに言われた。
梅:吉右衛門が千穐楽にみんなを集めて「つらくてきつい公演だったと言え」。バブルの頃で2カ月公演だった。日本人を初めて見るような過疎地をまわった。うさんくさく見られないように「KABUKI」と書いてある札を下げて歩いた。僕はどこでも入れたが、他の人たちは…。
吉:ID出せと言われる。身分証明と言っても…そこで日本の免許証をみせて、何とか押し切った。
梅:吉之丞さんは割と言いたいことが通じていた。
吉:旦那は広いスイートなのでみんなでパーティをしたり。
梅:町中じゃないんで、夜、人がいない。
吉:スーパーで食材を買ってきて。
●演目は
梅:吉右衛門と児太郎(現・福助)の「鳴神」と宗十郎の「於染久松」(?)。
吉:「身替座禅」の小枝をやった。
梅:私は「鳴神」の後見だけ。つらくて…。

●女方について
吉:僕も後見やった。女方はもうやらせてくれないと思うけれど、嫌いじゃないのでやりたい(私も、吉之丞さんの女方好きなのでぜひ)。
梅:女方は好き。立ち回りは顔をうんと作ればいいが、普通だと恥ずかしい。
戸:でも立師もやってる。裸武者とか。
梅:あれは成駒屋の出世役。今の児太郎は当時高校生のラガーマンで。どうしてこんなに、というほど、いろんなことを訊かれる。トシなのでどんどん忘れていく。
●後見について
梅:福助と吉右衛門の「関扉」の後見をやったが、「こりゃ大変だなあ、うちは女方でよかったぁ」と思った。立役はど真ん中に座るので何もない所に出て行かなくてはならない。女方はこの辺(とやや隅のほうを示し)だから移動も少なくて楽。
吉:体の殺し方がむずかしい。
梅・吉:出るタイミングは教わるが、一応自分で決める。
梅:小山三は体を殺さなくても目立たない。物の出し方も、後ろからピュッと物を出すと目立つけど、こうやってゆるりと出すと目立たない。
吉:立役の後見は裃着るので動きがぴしっぴしっしている。女方の後見はゆるっと。それは立役後見はできない。後見としてやりたくないのは弁慶と関扉。
梅:「寺子屋」で源蔵に斬りかかられた千代が紙を投げる場面で、その紙を片付けるタイミングは松王が松の枝を投入れた瞬間。吉右衛門は後見が楽なように、刀で返して紙を落す時あちこち広がらないようにしてくれる。千代側の人間としてありがたい。

戸:後見は千代側が?
梅・吉:千代側が出す。
吉:拵えは「関扉」が大変。
梅:本当に大変。立役でなくてよかったなあ。
戸:チームワークの賜ですね。担当は?
吉:後見が前をやる。後見はどんな着方をしているか知っていないといけない。
戸:さよなら公演の「車引」は立派に見えた。
梅:旦那の桜丸は、播磨屋(梅王)にも高麗屋(松王)にも何らかの影響を与えたと思う。播磨屋は腰を落すと三本刀が床にばーんと当たる。
吉:梅王はやったことがないが、苦しいらしい。
梅:私はやった。研修所の卒業公演で。その時三本差の1本を忘れて。桜丸は歌女之丞で「緊張した」と言っていた。
●旦那の指導
梅:親子は一世、夫婦は二世、主従は三世と言う。君とは死んでも会うから、と旦那に言われた。
吉:動き、セリフ、全部見てくれる。(今月の七段目は)伴内と九太夫の入りからあるが、これもモニターでちゃんと見てくれた。自分の出もあるのに。
梅:旦那はその段階段階で合った教え方をする。「まあそんなもんだね」と言われてOKかと思ったが、あれはダメだということが今になってわかる。「いい加減感動させてくれよ」とも言われたことがある。播磨屋は女方に優しい。播磨屋との舞台では「籠釣瓶」が一番多い。新造から始まって番新、芸者、最後に斬られる仲居までやった。廓の女の一生を「籠釣瓶」でやった。「ありがとう」と言われた時は嬉しかった。
吉:旦那からの合格点はまだ出ていない。怒られる時は怖いけど、僕のことを見ていてくれるから言ってくれる。ありがたい。
質問コーナー
2人へ、師匠の考えの中で「これは」と思うことは?
吉:八剣玄蕃のセリフ「死んでも褒美の金がほしい」は普通笑いがくるのに、「お前にはないねえ」と言われた。23日後に旦那が言い方を教えてくれて、その通りにやったら(できないけど、できるだけ真似をした)笑いがくるようになった。スゴい。僕に合った言い方を教えてくれた。
梅:一緒に出てたのに引っこんだ途端に「な」と言われたことがある。「な」の内容はわかった。
●一番うれしかったことは?
2
人とも考え込む。
戸:ご結婚されたこととか。
吉:それは嬉しいです。
戸:まさか、床山さんと結婚されるとは。プライベートを思いきりばらしてしまいました。
先代吉之丞の一番尊敬する点、思い出は?
吉:入った時には弟子になるとは思わなかったし、旦那の弟子とも知らなかった。全部教えてくれた。親みたい。
嬉しかったことを思い出した
梅:俳句の会に入った。「冬ひでり 大桟橋に 波高く」で点をもらった。はまりそう。
●いつかやりたい役
吉:勉強会で大蔵卿とども又をやった。教わったことをやっただけで満足していない。大蔵卿…。
梅:おかや。お才はいい。
●先代梅花のエピソード
梅:言葉巧みで表現が面白い。「何がほんとってないのよ」が口癖。「でも私に聞きに来たときは私なりにこうしましょ」と言う。
先代吉之丞はおかしいところは「ちょっとちょっと、ここうこうやるのよ」とすぐに口に出して教えてくれるが、梅花はじろっとこちらを睨むだけ。
●今後の抱負
梅:成駒屋が頑張ることももちろんだが、梅花の名前を汚さないようにしたい。梅花が出てると向こうの世界にもっていってくれると言われるのが(これ、歌舞伎役者として一番大事なことだと、私も思っています)、何かをやりたいというよりも夢。すごいカッコいいこと言っちゃった。
吉:歌舞伎役者としてやってこれたのも襲名できたのも旦那のおかげ。旦那に頼ってばかりだが、今後は旦那の右腕とまでは行かなくても爪の先くらいは恩返しをしたい。旦那に似ていると言われるのが褒め言葉の中で一番うれしい(私、正直、吉右衛門さんの隠し子じゃないかと思ったこともあるくらいです)。

女方の役者さんって本当に面白い。話もいっぱいもっている(年輪っていうのもあるけど)。梅花さんは、舞台のイメージと全然違ってちょっと驚いた(渋くて、くだけたところのない方かと思っていた。渋いのは渋い)。真面目な吉之丞さんもこういう場は苦手と言いながら、いろんな話をしてくれた。お2人の旦那愛、旦那への感謝の気持ちが強く伝わってきて、感銘を受けた。後見は大変だろうなと想像はしていたけれど、本当に大変なんだなあということもよくわかった。前に梅之さん(現・梅乃)が後見の心得を先輩から聞いたりしながら、やはり体を殺すことに腐心しているとブログに書いていらしたが、それが後見の基本なんだということも理解した。でも、せっかく目立たないようにしているのにこれからは後見にがんがん目がいっちゃいそう。
最後はお2人のツーショット、めったに見られないでしょというツーショットの写真撮影。楽しかった。もっと参加したいんだけど、あんまり頻繁でもね…。
<時間>18302000

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