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2016年11月12日 (土)

文化人政宗の一面を知った「松島瑞巌寺と伊達政宗」

1111日 「松島瑞巌寺と伊達政宗」(三井記念美術館)
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日までの会期で、またまた駆け込み。やはり会期末近いせいか、夕方近い時間なのにそこそこ入っていた(それも、ふだんなら午前中に鑑賞しているような客層で、ちょっと意外だった)。
展覧会は東日本大震災復興祈念(この日はたまたま震災から58カ月…)、瑞巌寺国宝「本堂」の平成の大修理完成と伊達政宗生誕450年を記念する特別展。松島にはずっと昔に行ったことはあるが、瑞巌寺を拝観した記憶がない(平泉の帰りに宿泊しただけだったような…。あるいは瑞巌寺の記憶だけ抜け落ちているのか…)。だから今回の展覧会を見ることができてよかった。しかも、瑞巌寺は臨済宗。「禅」の展覧会繋がりだ。
展示室1 「瑞巌寺と伊達家の伝統」
最初が「天台由緒記」。瑞巌寺の前身、慈覚大師円仁が開いた延福寺の盛衰記録だそうだ。もちろん内容はわからないので後で調べたら、比叡山延暦寺第三代座主だった円仁は3000もの学生・堂衆とともに松島にやってきて、天長5年(828)に天台宗延福寺を開いた。延暦寺と比肩するということから延福寺の名がつけられたが、約400年後の鎌倉時代に滅した。その後、やはり天台宗の円福寺がとってかわったものの、戦国時代を経て臨済宗妙心寺派に属するようになったとのこと。そして伊達政宗が1609年に瑞巌寺を完成させたそうだ。天台宗から臨済宗に変わったというところに、先日見た禅宗の日本での広がりを実感した。
「水晶五輪仏舎利塔(北条政子寄進)」。頼朝が進行していた仏舎利を政子が寄進し菩提を弔ったそう。小さくて可愛らしい感じがした。
「松島山円福禅寺住持次第」は瑞巌寺歴代住職の僧名、月命日が記されていて、現存最古のもの。
伊達政宗書「徒然草 抄」。私なんぞが言うのもおこがましいが、字がうまい!! 何とも繊細な流れるような雅な文字で、伊達政宗のイメージからは想像できなかった。
「小倉色紙『うかりける…』」は藤原定家の筆になる。定家74歳の筆ということで、字にはやや震えがみられると解説にあったが、そうなのかな。私は「乃」という文字の筆遣いが好き。
政宗所用の「金製ブローチ」。そういうものをあの時代に持っていたことに驚いた。
展示室2 
「伊達政宗書状(瑞巌寺宛)」は酒肴の礼状。「徒然草」の文字とは味わいが違う。
展示室3 伊達政宗と茶の湯
茶室を模した展示室3には「高野切『なつとあきと…』」がかかっていた。贅沢でもあり、質素でもあり、という感じ。そういえば先の定家の「うかりける」の書も茶掛だった。
茶室の脇の大きな雲版が目を引く。円福寺の庫裡にかかっていたもので、食事の合図に使われていた。
政宗が作った「竹茶杓」が政宗が茶の湯に深い関心をもっていたことがわかるようで、興味深かった。

展示室4 瑞巌寺と秘仏五大明王像
坐像の不動明王を中心に金剛夜叉明王・降三世明王・軍荼利明王・大威徳明王の五大明王が静かにかつ動きをもって立っていらっしゃる。瑞巌寺では33年に1回しか開帳しておらず、前回は2006年だったから次は2039年。多分私はもうこの世にいないと思うし、いても瑞巌寺に行かれる年齢ではないから、特別に今回拝観できたのはありがたい限り(寺外での公開は今回が初めて)。
五体の明王はすべて1本作り(!!)で、内刳りもない。いずれもそんなに大きくはないせいか、親しみが湧く。頬が張った丸顔は、通常知っているお顔とはちょっと違う。大威徳明王が乗っている牛がなんとも愛嬌があるというか、のどかな表情で心を捉えられた。
「法身性西像」は臨済宗の東北への伝搬を示すそうだ。宮城県で現存最古の像。
「蘭渓道隆像」の蘭渓道隆は諡号を大覚禅師といい、亀山上皇から下賜されたとのこと。「禅」でも亀山法皇像が展示されていて、ここでも「禅」つながりを意識した。
瑞巌寺障壁画の「虎図」は描かれているのは豹だけれど、豹=メスの虎と考えられていたのだそうだ。面白い。
展示室5 瑞巌寺本堂彫刻欄間と伊達政宗
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面の欄間が一挙に目の前に現れると「おお」という気持ちになる。色は剥がれていたりするけれど、彫り目一つ一つに彫刻刀を持つ手が感じられ、見事な透かし彫りを堪能できる。
伊達政宗の和歌詠草「松嶋乃…」は再び流麗な文字だった。
展示室6 中世の松島
写真とパネル解説が主体なので、ちょっとくたびれてしまって、流した。
展示室7 伊達政宗とその周辺
政宗の書状が2幅。そして「道の記」(元和元年3月、京から江戸へ下る旅の紀行文)。素人目には文字の趣がやっぱり違って見える。書く内容に合わせて筆遣いを変えていたのだろうか。紀行文を書くというところにも、武人でもある政宗の繊細な神経を勝手に感じ取った。
珍しい政宗の絵画もあった。「梅小禽図」。達筆なうえに絵まで描くとはすごい!! 優れた武将にはそういう教養も備わっていたのだと感銘を受けた。
百万石のお墨付きと言われている「徳川家康領地覚書」。でも、結局百万石はもらえなかったどころか、二万石しか与えられなかった…覚書はずっと保存されていたんだよね。
狩野安信筆「伊達政宗画像 酒井伯元賛」に描かれている政宗は、よく知られている独眼竜ではない。右目が左目に比べてやや小さく下がっているくらい。ふっくら、どっしりとしていて、これまで見てきた展示からのイメージにそうかけ離れてはいなかった(ドラマなんかでのイメージを追い出さなくちゃならなかったけど)。
「陽徳院田村氏愛姫像」「伊達政宗甲冑倚像」「天麟院五郎八姫像」。愛姫と五郎八姫は髪をおろした像。愛姫というと後藤久美子→桜田淳子という連想しか私はできない。初めてゴクミの愛姫を見たとき、この世にこんなお人形さんみたいに美しい子がいるのか、とため息が出たことを未だに忘れていない。私が三春の桜を見たくて見たくて(未だ実現せず)仕方ないのは、この時の衝撃が大きかったからだ。甲冑に身を包んだ政宗も独眼竜ではなかった。親子夫婦3人の像が並んでいることになんかほっとするものを覚えるのであった。

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展覧会」カテゴリの記事

コメント

お芝居だけでなく展覧会にも精力的にお出かけで「凄い」の一言です。
私も久しぶりにこの土曜日、恵比寿(広尾)の山種美術館へ速水御舟展に行ってきました。今年が開館50周年とか、国立劇場と奇しくも同じです。兜町に有った時にも速水御舟展があって観に行きましたが23年も前になるらしく歳月の経つのは早いものと感じた次第です。

投稿: うかれ坊主 | 2016年11月13日 (日) 22時28分

うかれ坊主様
おはようございます。コメントありがとうございます。
今月は観劇予定が2回しかないので、せっせと美術鑑賞をしております。
速水御舟は私も好きで(ありきたりですが、特に「炎舞」が好きです)、日本画の展覧会で出会うと嬉しくなります。今回の展覧会は山種以外の所蔵品も出展されていて見たいのですが、迷っております。山種って、恵比寿からちょっと歩くでしょう。行きの上り坂が…(こんなことが理由なんて、ね。そういえば、前回は恵比寿駅からバスに乗ったのでした)。

山種、開館50周年ですか。実は、三井記念館の後出光美術館に行ったのですが、出光も開館50周年なんですよ。1966年はそういう年だったんですね~。

投稿: SwingingFujisan | 2016年11月14日 (月) 10時37分

SwingingFujisanさま
こんにちは。松島瑞巌寺は20年くらい前にいったことがありますが、境内をざっと散策した程度で、寺宝は見なくて残念でした。今月の美術館巡り数が多くてレポだけでも大変ですね。
ところで、昨日、私は、今月歌舞伎座夜の部見てきました。
「口上」Fujisanさんの詳細なレポ楽しみですが、左團次の新芝翫へのいじりが、やはり面白かったです。口上幕、私の楽しみは、家ごとの衣裳、かつら等が比較してみられることです。西の成駒屋の深い緑色の裃、いつも綺麗だなと思います。
芝居のほうは、やはり「御浜御殿」の松嶋屋が、素晴らしい。何度も何度も見ましたが、姿形、緩急自在なセリフ、衰えがないです。染五郎も熱演(批評ほどにはニン違いではないと思います)ですが、それよりも、梅枝が大変結構、若女形として着実に成長しています。天下の松嶋屋にすっと手を握られる箇所があるのですが、本人はきっと大感激でしょうね。
襲名披露狂言の「盛綱陣屋」、新芝翫、今回初役とのこと、発展途上といったところですか。松嶋屋、播磨屋といった傑作を見てると、どうしても点が辛くはなります。
「芝翫奴」昨日は福之助ですが、一所懸命踊っていました。この踊り、「シテコイナ」から、殆ど「供奴」にしか見えないのですが、成駒屋の人が踊ると、詞章も一部変えて「芝翫奴」にするのでしょうか。

投稿: レオン・パパ | 2016年11月20日 (日) 13時07分

レオン・パパ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
お寺って行くまでに大変だったり、境内が広かったりでまわるだけで疲れてしまって、なかなか寺宝まで気持ちがいきませんね。ですので、こういう機会は貴重でありがたい。もちろん、現地で拝観するのとは空気が違うかもしれませんが、お宝をこの目で見られるのは幸せです(私のレポは長々しくて…。簡潔に書けない…)。

歌舞伎座の夜の部、私は予定しておりませんのです。ごめんなさい。昼の部も夜の部も5時間近くという上演時間に体力がついていきません。チケット発売当時は上演時間までわかりませんでしたが、長くなりそうだと予想はできたので…。昼夜どちらにするか迷った結果、「連獅子」狙いで昼の部にしました。「御浜御殿」は演目としても好きだし、仁左様の綱豊は大好きだし、レオン・パパ様高評価の梅枝クンも見たいのですが…。

投稿: SwingingFujisan | 2016年11月20日 (日) 18時32分

おはようございます。早朝の地震に起こされました。TV映像に、いろいろフラッシュバックしちゃう人もいるでしょうね。。。
さて、松島瑞巌寺。震災の翌夏に行きました。まだ仙石線も不通区間があって代替バスが駅前から出ていました。なので、というか、私も寺宝よりお寺とその周囲の記憶ばかりです。展覧会はゆっくり見られるチャンスだったのに、行けず残念でした。

投稿: きびだんご | 2016年11月22日 (火) 10時59分

きびだんご様
こんばんは。
私もぱっと目が覚め、布団の中で体を固くするばかりでした。
震災の翌夏には私も石巻には行きましたが、松島へは行きませんでした。そうそう、あの頃はまだ仙石線が全線開通していなくてわたしもバスで行ったのでした。
展覧会は残念でしたわね。きっと関心をもってご覧いただけたと思います。
松島、ぜひもう一度行きたい所ですわ。私は瑞巌寺には行っていないと思うので、今度は瑞巌寺中心で。そして寺宝ももう一度拝観したい…。「したい」「見たい」「行きたい」―「たい」ばっかりで、きびだんご様のような機動力、実行力がない私bearing

投稿: SwingingFujisan | 2016年11月22日 (火) 21時26分

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