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2016年11月 9日 (水)

「禅―心をかたちに―」

118日 「禅―心をかたちに―」(東京国立博物館平成館)
161109zen 仏教のことはよくわからないし、禅のこともわからないのだけど、禅が日本人の心を捉え、文化の中心になり、政治にも影響を与えていったという流れはなんとなくわかったような気がした。しかし、やはりトーハク、展示点数が多くて(リストには300点以上載っていたのでゲゲッと思ったら、実際は期間による展示替えがあったりして150点強)、なにしろ日本全国の禅寺の協力のもと集めた見応えたっぷりのお宝ばっかりなので疲れた。
最初に迎えてくれるのはポスターにもなっている白隠の「達磨図」(大分・萬壽寺)。広い額(顔の半分ちかくある)、大きなギョロ目がインパクトある。「直指人心 見性成仏」の文字まんまの絵だ。そうそう、ちなみに、今回の出品リストは展示順通りに並べてあるので大変助かる。たとえば、この「達磨図」は作品No197でありながら、リストでは1番にきている。どの展覧会でもそうしてくれればいいのに。それから、今回も各作品名の上に1言キャッチフレーズがついていて、わかりやすかった。
1章「禅宗の成立」
ここで印象的なのは雪舟の「慧可断臂図」(愛知・齊年寺)。慧可と言う人が達磨に入門の覚悟を示すため自らの左腕を斬り落としたところで、達磨が弟子を取った瞬間を描いているそう。西洋絵画もそうだが、宗教画は物語や意味を知ってみるととても面白い。
「臨済義玄像」(大徳寺)を見て、臨済宗って臨済義玄が開祖だったのか…。臨済宗といえば栄西の名前しか出てこない。柔和なお顔でした。臨済義玄像は通常、大慧宗杲が創始した<怒目憤拳>で描かれたり彫られたりすることが多く、このように柔和なお顔は珍しいんだとか。「達磨・臨済・徳山像」(京都・養徳院)の臨済さんは怒目憤拳だった。
「臨済慧照禅師語録」(京都・禅文化研究所)は白隠の講義を書き込んであって、そういう勉強に
親しみを覚えた。
2章「臨済宗の導入と展開」
禅宗の各寺ごとに展示をまとめてある。禅寺については各寺のデータも掲げられていた(そこはさ~っと流してしまった。ネットで見ればわかるかな、なんて)。考えてみれば錚々たるお寺からの錚々たる出展が一堂に集まるのだから素晴らしい。
「円爾岩上像」(東福寺)は野外にくつろぐ珍しい肖像画。「直綴」(京都・栗棘庵)は南宋・元・日本の織物79片を縫い合わせたもの。79!!
織物つながりで「九条袈裟」(京都・天授庵)は、布に人物像が刺繍されている。この人物像は、道教が融合した中国の仏教観を表しているそうだが、よくわからん。
「夢中問答集」(五山版)(東洋文庫)は足利直義と夢窓疎石の問答集。おお、足利直義!!とミーハーなだけな私の関心をひいた。この問答集は仮名混じり文字を使っているのが画期的なんだそうだ。
「寂室元光墨跡 遺偈」(滋賀・永源寺)は寂室元光の遺言。最後の力を振り絞った気概が感じられる筆の震えに胸打たれた。
「一休宗純墨蹟のうち 七仏通戒偈」(京都・真珠庵)は「先の割れた筆で大胆に」というキャッチフレーズ通り、一休さんの大胆な書だった。

3章 戦国武将と近世の高僧
北条早雲、武田信玄、織田信長、豊臣秀吉等々、戦国武将は禅僧をブレーンともしていた。
「快川紹喜像」(大分・月桂寺)の快川紹喜は信玄の師で、信長による恵林寺焼き討ちで落命したが、その時の言葉がかの有名な「心頭滅却すれば火もまた涼し」だそうだ。なんとも残酷で痛ましい悲劇だと思いながら拝見したのに、もうお顔を忘れてしまった。ダメな私…。
高僧ではどうしても白隠と僊厓に注目してしまう。僊厓(仙厓)は出光でも今、展覧会が行われていて、もしかしたら見に行くかも。白隠さんの「達磨像」(静岡・清見寺)は、最初の「達磨像」とは別で、もっと画面いっぱいに顔が描いてあって、こちらもインパクト大。「慧可断臂図」(大分・見星寺)は雪舟のものとは違って白隠らしいちょっとユーモラスなタッチである。達磨さんは円窓の中で慧可を睨んでいるよう。僊厓の「花見図」(永青文庫)には「楽しみハ花の下より鼻の下」と書かれており(父が好きそうなシャレ)、花見をする庶民の様子に愛情が籠っているような感じがした。
4章 禅の仏たち
一番萌える仏像たちのコーナー。
「達磨坐像」(円覚寺)は若々しい達磨の像。若い達磨さんは珍しい。
「聖僧文殊坐像」(京都・天寧寺)の文殊さまはなかなかのハンサム。仏像界イチのハンサム東寺の帝釈天さまとはまた違ったタイプのハンサムだ(と私は思う。価値観はそれぞれだから)。
「伽藍神立像」(奈良国立博物館)は「上司の神の指示を伝える使者」というキャッチフレーズで疾走する姿が生き生きと彫られている。それにしても、「上司の神」っていうのが面白い。
161109ragora 「十八羅漢坐像のうち」の「羅怙羅尊者」(京都・萬福寺)はユニーク。自分の胸を開いて中にある仏の顔を見せている。顔が醜かったので、心の中には仏が宿っているということを見せているのだ、と知ると、怖い羅怙羅の顔もかわいく見えてくるから不思議だ(写真は撮影スポットの顔はめで、仏さまのかわりに自分の顔をはめるというわけ。恐れ多い…)。
5章 禅文化の広がり
茶の湯、水墨画、障壁画など。
「油滴天目」(大阪市立東洋陶磁美術館)は豊臣秀次が所持していた茶碗。「唐物肩衝茶入 銘新田肩衝」(茨城・徳川ミュージアム)、「唐物文琳茶入 銘玉垣文琳」(埼玉・遠山記念館)はともに、大坂夏の陣で救出されたのだそうだ(映画の「タイムスクープハンター」を思い出した)。「油滴天目」とともに、歴史に思いを馳せさせられた。
「萬福寺東方丈障壁画のうち五百羅漢図」(萬福寺)は池大雅の作で、羅漢の多くが筆ではなくて指や爪でえがかれているんだとか。近づいて見てみたが、よくわからなかった。
興味深い展示品がたくさんすぎて紹介しきれない。ほんのわずか選んだだけでもこんなに長くなってしまった。
なお、最後に若冲の「旭日雄鶏図」と「鷲図」に出会えた(特別出品)。前者は動植綵絵制作の
43歳以前の作、後者は1798年最晩年の作で、この2点が並べられているのが面白い。

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