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2016年12月19日 (月)

十二月歌舞伎座第二部

1217日 十二月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)
三部制は3度出かけなくてはならないけれど、1回の時間が短いので私にとっては楽。国立の「仮名手本」は5時間超えだったりして、見ている時は面白いことは面白いのだけれど、見終わるとどっと疲れが出るし、覚悟も必要。
「吹雪峠」
松也さん(助蔵)、七之助さん(おえん)ともに割とあっさりしていてドロドロ感が薄い。そのくせ、これまで見たおえん・助蔵で一番醜い気がした(私の中に、若さゆえの清潔感を求める気持ちが無意識にあったのだろうか)。たしか直吉(中車)は、病に苦しむ助蔵におえんが口移しで薬を飲ませるのを見て、一度は許した2人の仲に耐え切れなくなって2人に出て行くように命じるのだと思ったが、そのあたりはちょっとわかりづらかった。しかし一方で、その醜い2人の言い訳、命乞いを突っ立ったまま聞いている中車さん(直吉)の存在感の大きさ、うまさはさすがだと思った。自分から出て行ったのは、女にそこまで入れ込むほどの価値がないことを知ったむなしさからか、人間の存在そのものがばかばかしくなったからか。
3
人のこれからはどうなるのだろうか。互いに罪をなすりつけ合ったことを忘れたかのように、再びくっつきそうな気がする助蔵とおえんであった。
「寺子屋」
一番感動したのは七之助さんの千代。千代としては寺入りが一番苦しい時であったと思うが、死なせるために子を置いて出る覚悟と、子にすがられて未練を断ち切る厳しさ・つらさと、その場でわっと泣き伏したいであろう悲しみとおそらくすまなさと、そういう母の思いが表情にも全身にも表れていた。すべてが終わった後で子の死を嘆く時には夫である松王丸がそばにいるが、1人でこの計画を実行しなければならない母親の胸のうちを思うと、こちらもつらくて泣きたくなった。
松王丸の勘九郎さん、武部源蔵の松也さんはどちらもちょっと力み過ぎなような気がした。もちろん、双方とも置かれた立場として力が入るのは当然だろうし、丁寧に演じていたことの証であるとは思うのだが。勘九郎さんは松王丸のニンだと思ったし(松王丸を持ち役の1つにしてほしい)、松也さんもニンでないとは思わない。力みすぎに思えたのは骨太に見せようとしているからだろうが、そのあたりにメリハリをもたせるともっとよくなるのではないかと感じた。梅枝クンの戸浪には安心感があった。この2人のコンビ、もっと見たい。
弘太郎さんの涎くりがとても自然で、本当の子供のように見えた(童顔だし)。お仕置きも久しぶりに見たな。へのへのもへじは実際に書いていた。寿猿さんの下男三助はユーモアたっぷりだったし、猿弥さんの春藤玄蕃は憎々しい敵役であったし、澤瀉屋の存在感が際立っていた。
不思議なもので、現時点でリピートしたいと思うのは「あらしのよるに」よりも「寺子屋」なんである。「あらしのよるに」は渇望していた演目で、初日に見てとても面白かったし実際にリピートする予定なのだが、今はモーレツに「寺子屋」をもう一度見たい気になっている。ま、私のことだからすぐにその気も薄れちゃうのだろうし、「あらしのよるに」に又興奮するのだろうけど。しかし「仮名手本」にしろ、よくできた芝居というのはやはり繰り返しの上演に堪えるだけの魅力があるんだろうな。「またか」とうんざりしたり、見るには重い覚悟が必要だったりはしても、見終わるとその魅力にとりつかれているのだと思う。
<上演時間>「吹雪峠」32分(15001532)、幕間25分、「寺子屋」118分(15571755

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コメント

わたしは21日にまとめて観ました。この方がある意味楽ですよね。何回も都心に出ることもないので・・・
「吹雪峠」は、直吉が死ぬ覚悟で小屋を飛び出して行くと言うことを初めて知りました。醜い世界から白一色の「清浄」へということなのでしょうか。「再びくっつきそうな気がする助蔵とおえん」全く同感です!わたしもそう思いながら観ましたよ。
「寺子屋」は寺入りからがやはり良いですね!
鸚鵡の可笑し味(チャリ場)がこのあとの悲劇をさらに際立たせます。この寺入りがあると千代の仕事も増えることもあり、千代役者が引き立ちます。それもあってか七之助はなかなか良かったですよね。松王に初役で挑んだ勘九郎はお父さん譲りの音羽屋系なので雪持ち松ですが今の彼なら黒の拵えの方が似合っているように思います。おっしゃるように寿猿、弘太郎、猿弥それに欣弥も含め澤瀉屋の助演がこの舞台をよく支えてました!

投稿: うかれ坊主 | 2016年12月23日 (金) 01時23分

うかれ坊主様
こんばんは。コメントありがとうございます。
一部から三部まで1日でご覧になったのですか!! すごい!! 何度も都心に出なくてすむ、同感なんですが、残念ながら私は体力がもちません。今月は演目として比較的楽な気もしますけれど、それでもまる1日はきつい…。
「吹雪峠」は何度か見ていてわかっていても、初めは直吉が恐ろしい親分のようでついつい2人に同情するのですが、二枚目の助蔵より直吉のほうが断然いい男に見えてきます。あの吹雪の中にあるのは当然「死」ですよね。
「寺子屋」は絶対に寺入りがあったほうがいいと思います。心を引き裂かれそうな千代の辛さを共有することで芝居の世界により深く入り込めますから。それに、たしかに千代役者が引き立ちますね。勘九郎さんの衣裳、そうかもしれませんね。

投稿: SwingingFujisan | 2016年12月23日 (金) 23時37分

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