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2017年1月12日 (木)

必見、魅惑の女性たち:クラーナハ展

112日 「クラーナハ展」(国立西洋美術館)
去年のうちは115日までだからと油断していたら、もうあと4日で終わり。で、毎度のことながら駆け込みで。
クラーナハの作品がこんなにたくさん(80点ほど)日本で揃うのは最初で最後だそうで、これは必見。
とはいえ、実はクラーナハって誰? な私であった(なんか聞いたことはあるなあというのは、このクラーナハ展が頭に刷り込まれただけのことかもしれない)。だから、あの、教科書等で見る「あの有名な」マルティン・ルターの肖像画がクラーナハの手によるものだと知ったときは本当に驚いた。そして、クラーナハが宗教改革に大きくかかわっていることも初めて知った。ルターと親しく、ルターのあの肖像画はルター夫妻の肖像画として描かれたのであって、教科書では夫のみだがちゃんと妻の絵もあるんである。その肖像画によって聖職者も妻をもっていいということが広く一般に知られるようになったのだとか。また、ルターがドイツ語に翻訳した聖書の挿絵(版画)も描いているから、宗教改革の間近にいたことは間違いないだろう。

画家クラーナハは親子3人いるが、多分、ただクラーナハと言う時はクラーナハ(父)を指すのではないかと思う。展示作品もチチのものが大半だった。今回クラーナハの絵を見て、女性が「エロい」と言われているのがよくわかった。宮廷画家・版画家(メッケネムに続いてドイツ版画)・肖像画家としての宗教画、肖像画も素晴らしいが、やはり一番惹かれるのは女性の裸体と表情である。多くの裸体にはごく薄いシースルーの布がかかっていて(「ヴィーナス」「泉のニンフ」「正義の寓意」:写真1)がとくにエロい)、その繊細な表現が裸体をよりエロく見せるのである。吊り上がっているためにちょっと三白眼のようにも見える目(写真2)はいくつかの女性像に共通であり、ちょっと冷たいものを感じさせるのが妖しく魅力的だ。16世紀の感触がありながら現代的でもあるような気がした。
ところで「ヴィーナス」のサイズが37.7×24.5cmと小さいのには驚いた。クラーナハといえば、という感じであちこちで目にしていたのでもっと大きいと思っていた(本物の「モナリザ」を見た時と同じような驚き)。当時こういう裸体画はなかったというから、きっと個人の秘かな愉しみのために描かれたのだろう。
「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」と「ホロフェルネスの首を持つユディト」はともに首が恍惚の表情を浮かべているように見えて、ちょっと怖い。サロメには自分の残酷さを知らない残酷さが、ユディトには冷然としたものが感じられる。
魅惑的な女性に囲まれて情けなくも鼻の下を伸ばしているのはあの英雄ヘラクレス(写真3)。面白いではないか。
3
点しかないクラーナハ(子)の作品では「ザクセン選定侯アウグスト」「アンナ・フォン・デーネマルク」の肖像画が印象に残ったが、それは肖像画としてよりもむしろ、衣裳の表現が見事だったからである。しばし見入ってしまった。
クラーナハの作品のほかに、同時代のデューラー、クラーナハに影響を受けたピカソや日本人画家などの作品も展示されていた。デューラーや他の画家と比べるとクラーナハには何となく開放的な明るさがあるように感じた。宗教改革の間近にいた者としての開放感なのか、新教にしろ旧教にしろ宗教の持つ閉塞感への抵抗なのか。
岸田劉生「川幡正光氏之肖像」はクラーナハの影響を受けているのではないかとされていたが、私にはそうは思えなかった。劉生の署名がクラーナハの有翼の蛇の紋章に似ているからというのがその理由の一つらしいが、ちょっと苦しいんじゃないかしら(どう見てもデューラーのように、私には思える)。ピカソのリトグラフは、ステートが進むにつれてどんどん変化していく過程が見られて興味深かった。

面白かったのは、レイラ・パズーキによる「ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》1537年による絵画コンペティション」。パズーキは、世界の複製画の半数以上を作っている中国の芸術家村から100人の芸術家を集めてクラーナハの「正義の寓意」を7時間以内に可能な限り正確に模写させるというコンペティションを課した。その中から95点がずら~っと展示されているのは圧巻である。しかし、プロの複製画家たちなのに、大半がオリジナルとは程遠い‼ その多くにはクラーナハのような美しさがない。個性的(過ぎる)ではあるが。7時間という時間制限のせいなのだろうか。複製画って何なのか…。
西美の展覧会って、いつも良質なのに真面目過ぎて地味なように思っているのだが、今回も真面目ながら、こういうコンペティションや、パロディ作品なども展示されていて、クラーナハを理解しやすかった(理解したのかな? ほんとに)。学芸員さんのクラーナハを知ってほしいという気持ちが伝わったのかもしれない。

170112cranach
1 正義の寓意
170112cranach2_2
2 ザクセン公女マリア
170112cranach3_2
3 ヘラクレスとオンファレ

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コメント

おはようございます。
私はこの展覧会があるまで、(名前を知ってるだけですが)クラナッハと覚えてたので、あれ?でした。これで慣れましたよー。
tv「ぶらぶら美術・博物館」には、担当学芸員の方が出演されてました。白皙の美青年(知的寄り)という感じ←個人の意見ですhappy02
「正義の寓意」の模写には、ついてきた子供のもあったとか? なんだこれ⁉︎っていう面白いのばかり見ちゃいました。ちなみに結構、美術系に力を入れていた息子の中学校では、模写がかなりのウエイトを占めていて、力作もあったなーと思い出しました。

投稿: きびだんご | 2017年1月14日 (土) 08時52分

きびだんご様
こんばんは。昨日の朝にいただいたのに、今頃の公開とお返事、すみません。
ぶらぶら美術館、私もあとで見ました。学芸員さんについての個人的ご意見に賛同しますhappy01
あの模写、面白かったですね~。模写って絵画を勉強する上での基本だと思うので、息子さんの学校はさすが美術に力を入れていることがわかります。そうか、絵のまったくヘタくそな私も模写から入ればいいのかも…。
外国人の名前は色々読み方があるので、自分が覚えていた読みと違うと最初はなんか変ですよね。

追伸:自分のコメント欄なのに、認証が全然できなくて焦りました。

投稿: SwingingFujisan | 2017年1月15日 (日) 20時23分

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