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2017年2月15日 (水)

二月歌舞伎座昼の部

213日 二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
ちょっと事情がありまして、「猿若江戸の初櫓」はパス。過去に2度見てはいるのだけれど、どんな内容だっけ…と前回(201111月平成中村座)の出演者を見ているうちに思い出した。猿若と出雲の阿国(勘九郎・七之助)と奉行(彌十郎)は前回と同じだが、その他の役は変わっているし(新・橋之助さんは当時も出演)、もちろん演じる人によって芝居の雰囲気も違ってくるだろうから見たかったんだけど…。
「大商蛭子島」
これは初めて。前回公演が19691月の国立通しだからそれも当然だ。おおそうか、この時正木幸左衛門実は源頼朝を演じたのが二代目松緑さんだったのか。今回その役を四代目松緑さんが演じているとは、今月は昼の部でも「桃太郎」的な先々代からのつながりが見られるわけだ。
なんかよくわからないけれど、しょうもない女好きの夫と激しい嫉妬妻→愛する人のために身を引く妻→どろどろの情念から逃れられない元妻→仏の力で厄が落ちてハッピーエンドって流れだった。
嫉妬妻おふじ実は辰姫・時蔵、女好き夫・松緑、その下男六助・亀寿という3人組は、役柄は違えど先月の合邦パロディの場面と同じ。時さまは先月は松緑さんとの年齢差を感じたから(役の上で年齢差があるからそれは当然だけど)、夫婦役で大丈夫かなあと懸念したが、若々しくて案外似合いの夫婦じゃんと思った。それにやきもち焼きにもけっこうかわいいところがある。まあ、男性にしてみたら鬱陶しいだろうけど。でも、奥さんの目の前で手習いの女の子たちを口説くんだから、おふじさんが鬼のように怒るのは道理だわ。
清滝(児太郎)が政子(七之助)と頼朝の「祝言の支度ができました」と言うのを聞いたおふじ=辰姫は自ら身を引いたとはいえ寂しそうで、女心の複雑さが感じられた。その後、夫と政子がすぐそばで「さあ、寝ましょ」なんてやっているのを見て(歌舞伎って、限られた舞台の中でここはこれくらい広い場所で、こことここはかなり離れているとかいうお約束があるけれど、幸左衛門の家はそんなには広くないのかしら。すぐそばで、だとしたらそりゃあ狂いたくもなるわ)理性と嫉妬の間で苦しむ辰姫。有名だという「黒髪」の場面になる。「待ってました」の大向こうがかかった。時さまの芸風がさっぱりしているので全体にドロドロ感がくどくなくて、私にはちょうどいい塩梅だったが、肝心の黒髪のところはもっとどろどろした感情を表してもよかったんじゃないだろうか。
幸左衛門って、せめて奥さんの前では控えなさいよ、と言いたくなるほどしょうもない女好きなんだけど、松緑さんには清潔感があって、いまいち好色さがぴんとこない。そのせいもあってか、松緑さんは幸左衛門よりも頼朝になってからのほうがずっとよかった。
政子はおっとりといじらしく、「政子」としてはイメージが違った(政子もかなり嫉妬深かったんじゃなかったっけ?)けれど、七之助さんのイメージにはぴったり。愛らしかった。
清滝の児太郎クンに感心した。政子より年長らしい落ち着きとしっかりした面がよく出ていた。清滝もおふじ同様相当気が強く、そのあたりも児太郎クンが好演していたと思う(この気の強さも政子のほうじゃない?と1人ツッコミしていたが、この芝居では政子はあくまでおっとりさん)。
勘九郎さんの文覚上人が堂々としてカッコよかった。声がよく大きく、透るのでわかりやすいのもよかった。
亀寿さんと團蔵さんは敵だったのかぁ。
けっこう面白くて、珍しく寝ずに見られた。

「四千両小判梅葉」
前回の上演(201211月)は2度見て、2度目にその面白さがわかった気がしたので油断した。幕間についめで鯛焼きを食べてしまったのが敗因か…。出だしはよかったのだが、序幕第二場から雪の別れのところまで完全に飛んでしまった。
幕開き、四谷見附外の場での菊五郎さん(富蔵)と橘太郎さん(ぐでんの伝次)、咲十郎さん(じぶくりの九次)の遣り取りは、期待に違わず物語の世界に連れて行ってくれた。当時のあのあたりの様子が、もちろん今の自分の目の前にあるんだけど、ちゃんと脳の中で自分もそこにいる感じなのだ。藤十郎(梅玉)が現れて、富蔵が声をかけるところまでは意識があったのに…。
気がついたら富蔵の乗せられた唐丸籠が雪の中やってくるところだった。ここは前回も東蔵さん、時蔵さん、子役ちゃんにおおいに泣かされた場面だが、今回はほとんど東蔵さんに泣かされた。桂昌院みたいな役(「柳影澤蛍火」)をやったかと思うとこういうおじいちゃんもこなすんだから、芸の幅が広い。
彦三郎さん、團蔵さんも前回と同じ役で、片や温情の大きさ、片や敵役の憎らしさが雪の中でぶつかり合い、温情のお役人がついていることが富蔵のつらい道中を想像する上での慰めになる。この土手の場面は「四千両」の中でちょっと異質な感じも受けるが、富蔵の人となりを知るには欠かせないんだろうな。
しかし何と言っても面白いのは伝馬町西大牢の場。まさに地獄の沙汰も金次第、そして要領の善し悪し。牢内も前回とほぼ同じ配役だったが、隅の隠居が家橘さんから歌六さんに替わっていた。歌六さんは最初誰だかわからなかった。声を聞いて、ああとわかった。その声がすごい。闇の底から聞こえてくるようで、身震いがした。もっとも、そのドスの利いた闇からの声の主にだって気に入られれば、富蔵のような待遇は受けられるわけだ。
たまたまこの牢に入ってきた生馬の眼八(團蔵)は、富蔵の敵役でありイヤな奴ではあるが、逃げ場のない牢内でのこれからを思うとちょっと気の毒になる。
新しく入ってきた囚人が挨拶をする時の座り方が独特で興味深いが、この座り方やお金の扱いについては当時、萬太郎クンがブログに詳しく書いていた。座り方は、見間違いでなければ松緑さんが左足の上に右足をのせ、菊之助さんは右足の上に左足をのせていたと思うけど、どちらが上という決まりはないのかしら。
「扇獅子」
梅玉さんは「四千両」に続いての出演。途中からの出番とは言え、拵えを変えるのに幕間10分だから大変だっただろう。明るく粋な踊りで、ほんの10分ほどだったが、ちょっと暗い芝居から気分が変わって帰路に着いた。
ところで、歌舞伎座以外の劇場では上演時間がきっちり0分、5分で終わることが多いが歌舞伎座はほぼいつも端数分。それが今月昼の部はこの「扇獅子」だけが12分と端数で珍しい。
<上演時間>「猿若江戸の初櫓」30分(11001130)、幕間20分、「大商蛭子島」75分(11501305)、幕間30分、「四千両」105分(13351520)、幕間10分、「扇獅子」12分(15301542

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