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2017年2月 5日 (日)

びっくり驚き、ふしぎ謎の連続:ラスコー展

23日 「ラスコー展」(国立科学博物館)
ず~っと見たくて見たくてだったのに、冬休みが終わってからと待っているうちに会期終了間近になってしまった。
170205lascaux1 壁画、壁画、とばかり期待して入った会場、すぐに衝撃を受けた。そこにはお洒落できれいな母と子が。クロマニヨン人の母子である。それぞれ別の場所で見つかった化石人骨をもとに復元(制作?)された等身大のクロマニヨン人。まずは人形の生き生きとした実にリアルな姿にびっくりし、一呼吸置いて、クロマニヨン人って現代人とほとんど同じじゃんと驚いた(ほんとなのかな)。展示はプロローグかた始まって18章まで。6章の展示でもクロマニヨン人の復元像があったが、歴史の授業の記憶を辿ってもこの姿は思い浮かばない。40万年前のハイデルベルク人、6万年前のネアンデルタール人、3万年前のクロマニヨン人の比較では、ネアンデルタールとクロマニヨンはたった1万年でこんなに差が出るのかと三度驚いた。しかも、このクロマニヨン人男性がなかなかのイケメンでかっこいいのよ(写真は後ほど)。
しかしまずはクロマニヨン人は置いておいて。

1章 衝撃の発見、壁画の危機、そして閉鎖
ラスコーは1940年に地元の少年が偶然発見したという点からしてドラマチックだ。その後見物客が押し寄せて壁画が傷み、1963417日を以て閉鎖されたそうだ。2万年以上もの間人目に触れなかった壁画が、人間の呼吸によって繁殖したバクテリアなどのため、緑、白、黒のシミに侵されたのだ。また見物にのために入れたエアコンも原因の一つらしい。貴重な遺跡は誰でも見たいものだが、現代の空気に触れることによって傷むケースは世界各国で多々あり、ジレンマだなあと思う。今は本物を見ることはできないのだから、今回の展覧会は非常に貴重な機会であるわけだ。
2章 よみがえるラスコー洞窟
3D
の最新技術で全長200メートルのラスコー洞窟の一部が原寸の10分の1のサイズで再現されている。枝分かれしつつ広がる各部には入口側から「雄牛の広間」「後陣」「軸状ギャラリー」「通路」「井戸状の空間」「身廊」「ネコ科の部屋」と名前を付けられており、高さが5メートル以上もあるような空間もあれば、ネコ科の部屋のように這わなければたどり着けないような最深部の空間もある。洞窟の模型はもちろん中に入れるわけではなく、それぞれの部分の現在地とそこに描かれている絵が紹介されていて、自分が洞窟内部にいるように想像力を働かせなければいけない。
不思議なことにこの洞窟はクロマニヨン人の生活空間ではなかったようなのだ(入口付近では生活していたらしい。奥にはハイエナや熊のような動物もいたとのこと)。では彼らはなぜこの洞窟の隅から隅まで、そして奥の奥まで行って絵を描いたのだろう。その謎に対する答えはなかったような…。
3章 洞窟に残されていた画材・道具・ランプ
ここはレプリカでなく本物の展示だからだろうか、撮影禁止。顔料は天然の石などをすりつぶして作っていた。赤・茶・黄色・黒等々。ただの線刻ではなく顔料を自ら作って色を付けていた。ということにも驚きだ。この顔料は世界初公開だそうだから、必見。狩猟の道具も洞窟から見つかっている(ハイエナとか熊がいたからか)。興味深いのはランプ。石を丁寧に擦ってくぼみをつくり、そこに動物の脂を垂らして照明とした(ちょっとスプーンみたい)。真っ暗な洞窟の中に入るのに照明は必需品だが、既にあった火を照明として利用するという知恵も驚きでしょう。展示品のランプは、他に類を見ないくらい丁寧に作られているのだとか。このランプは井戸状の空間から見つかったのだそうだ。これも必見。
4章 ラスコー洞窟への招待
「身廊」と「井戸状の空間」にある5つの壁画が実寸大で再現されている。「褐色のバイソン・ヤギの列・ウマの列」「泳ぐシカ」「黒い牝牛・ウマの列」「背中合わせのバイソン」「井戸の場面」。
「黒い牝牛・ウマの列」「背中合わせのバイソン」では遠近法と思われる画法が用いられており、しかも偶蹄類である牛と奇蹄類であるウマのひづめがちゃんと描き分けられているのである。ただただ驚きの連続。
「井戸の場面」は謎だらけ。バイソンの脇に描かれているのはなんとも不思議な形をした鳥人間(と学者さんたちは呼んでいるそうだ)。そばにはケサイ(サイの一種)も描かれている。何を描こうとしたの?彼らは。そんな深い所や、別の空間ではハシゴがなくては届かないような壁に彼らはなぜ絵を描いたのか? 謎と驚きの連続である。
ここでは、数分おきに照明がかわり、ブラックライトになると線刻がくっきり浮かび上がる。写真はうまく撮れなかったのでHP(→ココで。

5章 ラスコーの壁画研究
20170205lascaux4 映像やゲームによる壁画解説。そしてクロマニヨン人が見ていた(描いた)動物たちの実物大の絵が展示されている。オオツノジカのデカさはすごい迫力。
6章 クロマニヨン人の芸術
ここも実物展示なので撮影禁止。ここでは、クロマニヨン人がどのようにして顔料や針などを作ったかという映像も紹介していて非常に興味深い(ランプの作り方もここだったかな?)。素晴らしいのは「針」の発明だ。動物の骨を削って穴をあけ、植物の線維や動物の腱を糸にして衣類などを作ったのだ。針のおかげで実用的かつお洒落な衣類をクロマニヨン人は纏うことができたのだなあ。
動物の彫られた投槍器、体をなめるバイソンの彫刻(後ろを向いて体をなめている姿を彫ってある。素晴らしい出来)の精巧さ、大型月桂樹葉形尖頭器の繊細さ、「ヴィーナス」の豊穣を表す美しさ、どれも見事である。
7章 クロマニヨン人の正体
クロマニヨン人のこと、ほんと何も知らなかったことを知る。彼らはホモ・サピエンスであり、アフリカからヨーロッパへやってきた移民である。身長は男性が176cm、女性が164cm、体重はそれぞれ71kg60kg。ややずんぐりしたネアンデルタール人に比べてかなりスマートである。面白いことに、2万年以上前のクロマニヨン人は胴に対し脚や腕が長かったが、それ以降は胴長短脚になっていく。アフリカのような暑い地域では手足が長いと体表面積が増えて体熱を放散しやすい、一方でヨーロッパのように寒い地域では手足が短いことにより体熱の放散が防がれるという理由で環境に適応した体になったらしい。
クロマニヨン人はアフリカのホモ・サピエンスに西アジア付近にいたネアンデルタール人の血が混じってでき、現代ヨーロッパ人はクロマニヨン人に西アジア人の血が混じってできたという説がDNA研究から導かれているようだが、面白いね。ネアンデルタール人のDNAの割合は初期クロマニヨン人から徐々に減少していったそうで、ネアンデルタール人のDNAがホモ・サピエンスが子孫を残すうえで不利だったのではないかをされている。これも面白いね。
8章 クロマニヨン人時代の日本列島
日本へのホモ・サピエンスの到来は38千年前から始まった。そこから縄文時代が始まるまでの22千年間が日本の後期旧石器時代である。日本には絵画・彫刻・ランプなどはないが、航海・落とし穴・磨製石器といったクロマニヨン人にないものがあった。動物の骨・角・象牙類は日本の土壌が酸性のため残りにくく、あるいはもしかしたらそういう物も当時の日本にはあったかもしれない。日本では落とし穴で狩りが行われていたというのが興味深い。

DNA
解明や3D技術など、人類の知恵が人類の過去を解いていく。まだまだ謎は多く、関係者たちの努力は続くが(復元なんてほんとすごい努力だわ)、のんきな私にはロマンである。

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