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2017年3月14日 (火)

歌舞伎堪能、「伊賀越道中双六」

313日 「伊賀越道中双六」(国立劇場大劇場)
前回公演(平成2612月)以上に面白く、かなりのめり込んで見た。最近、歌舞伎すら出かけるのが億劫になっている私だけど、やっぱり歌舞伎は見たら一番‼ もう一度見たくなっちゃうのだ。とくに上質の芝居を見ると、時間の長さも感じないし。田舎住まいが恨めしく感じられる。さくらまつりが始まってからもう一度見たいけど、その頃は予定が詰まっているのだ。国立のさくらまつりはいつも逃すわ。

「行家屋敷」の場では橘三郎さんの行家の厳格さ、思慮、子への愛、厳格なだけに股五郎への怒りが舞台をぐっとしめた。
今回は、「円覚寺」が入ることによって敵方の卑劣さがより浮き彫りになり、敵討ちの必然性と人間模様に加え勧善懲悪の面白さが増した。「円覚寺方丈」では悪人たち(沢井股五郎の錦之助さんも沢井城五郎の吉之丞さんも)の線の太さが緊張感を醸し、その憎らしさにこちらも敵討ちの機運が盛り上がった。最後、盆が回った時の4人(だったかな。吉之丞、錦之助、歌昇=近藤野守之助、又五郎=佐々木丹右衛門)は文楽人形のように見えた。
「藤川新関」では、又五郎さんが芸達者なところを見せる。前の場で悪人どもにやられ無念のうちに息を引き取った丹右衛門をきっちり演じていたのに、この場ではその名も「助平」、遠眼鏡に夢中の情景描写、1人で長台詞で客を笑わせ、場をもたせる。真面目な又五郎さんらしく、行儀よくその可笑し味を出していて、この助平なる人物の気のよさを感じた。悶絶した後、お袖に水をかけられて気がつき、「どうぞこの場のことはご内聞に」と客席に向かって手を合わせると、客席から拍手が起きた。
「竹藪」ではかわいそうに、志津馬に手形を取られてしまったために関所破りとして捕り手に捕まってしまった。ここの立ち回りはだんまりになって、又五郎さんが解かれた帯で長縄跳びをしたりして面白かった。
菊之助さん(和田志津馬)は音羽屋の華やかさと播磨屋の地道さがうまくマッチして、一座によく溶け込んでいると思った。お袖を利用しようとする心も見えた。米吉クンのお袖は色気は薄いものの、一目ぼれした志津馬への一途な思いが初々しくていじらしかった。そのウブさが志津馬の、お袖を利用しようとする心を押したのではないか。髪をおろしたお袖が哀れであった。2人が相合傘になった時、「御両人」と掛け声がかかった。

「岡崎」では歌六さん(山田幸兵衛)、吉右衛門さん(唐木政右衛門)、東蔵さん(おつや)、雀右衛門さん(お谷)の名演で、展開はわかっているのに緊迫した状況に息を呑んだ。大事なところなのにお谷が現れてしまった故の政右衛門の苦悩、葛藤…「莨切」は魅せた‼ おつやの姿が見えなくなるとすぐにお谷のそばに駆け寄り暖めて口移しで薬を飲ませる政右衛門に泣いた。まだ赤ん坊の我が子を手に掛けざるを得ない切羽詰った状況は、子にとって残酷であるのはもちろんだが、政右衛門自身にとってはもっと残酷である。莨切からの吉右衛門さんの表情で、しかし政右衛門の事情としてはそれしかなかったのだとわかったような気がした。ただ、赤子を手に掛けた言い訳は弱い。咄嗟のことでそれしか出てこなかったのかとは思うが、口をついて出たその言葉では現代の観客は納得しづらいし、気分もよくない。それにお谷の気持ちを考えると…。泣けた。そういう時代だったと言えばそうなのかもしれないけど(そういう時代でも苛酷過ぎる。敵討ちは残酷だ)。すべてを呑みこんだ幸兵衛の心変わり、弟子への愛、泣けた。
東蔵さんがその場の空気をふっと変えるような、なんとも不思議な味を出していて、おつやという人にちょっと興味を覚えた。
「伊賀越道中双六」は見取りとして成立するのは「沼津」だけなんだろうけど、通しで見たらこんなに面白いのだから、時々上演してほしい。
<上演時間>序幕・二幕目50分(12001250)、幕間35分、三幕目40分(13251405)、幕間20分、四幕目100分(14251605)、幕間10分、大詰10分(16151625

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コメント

国立の評判も良いようですね!
待ち遠しいですが、26日に観に参ります
そういえば、7月の鑑賞教室は菊之助の大蔵卿とHPにアップされていました
「岳父」に教えてを乞うのでしょう
吉右衛門さんとしても少しでも教えておきたいところなんでしょうね

投稿: うかれ坊主 | 2017年3月20日 (月) 10時17分

うかれ坊主さま
こちらにもありがとうございます。
国立では、仇討側が蒙る残酷さに胸を衝かれました。
菊之助さん、いよいよ大蔵卿をやることになったんですよね~。実父も岳父も得意とする役ですから、楽しみです。

投稿: SwingingFujisan | 2017年3月20日 (月) 16時04分

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