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2017年3月22日 (水)

三月歌舞伎座昼の部

321日 三月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
今月、私の歌舞伎座はこの日が初日。自分の健康がちょっと怪しくなりかけていたので無事見られるか心配したが、早起きもできたし、苦手な昼の部の割にほとんど寝なかったし、春の珍事というほどでもないか(でも春眠暁を覚えずって言うから)。
ちょっと不満は、筋書きに舞台写真が入っていない‼ 21日なのにどういうこと? おまけに、いつ入るかという連絡も来ていないって。夜の部観劇まで待ちぼうけだわ。
「明君行状記」
5
6分経った頃遅刻者がちょこちょこ到着してちょっと集中力がそがれた(この日は半蔵門線にトラブルがあったから、いつもより遅刻の人多かったのかも)。で、そこで話が途切れたが、その後はぐいぐい引き込まれ、面白くて面白くて夢中になって見た。
何と言っても梅玉さんが素敵な殿さまで、初めて「御浜御殿」を見た時の梅玉さんを思い出して、やっぱり梅玉さん大好きとあらためて思った。人を見る目の確かさ、温情、大きさは綱豊卿、苛立ちは「頼朝の死」の頼家、殿の本当の心を知りたいと言われる立場は青山播磨と重なる。どの役も梅玉さんが一番合っていると私は思う。この後の義経も梅玉さんがベストだし、新歌舞伎でも古典でも絶品の梅玉さんを見られて幸せ。
亀三郎さんはその美声でぐいぐい殿さまに迫っていく。死罪を望むその頑なさに光政公も手を焼いていたが、時に善左衛門を跳ね返し、時に懐深く受け止め、時に相手の懐深くへ切り込んでいく。その緩急自在な応対が時に客席に笑いを起こし、感動を呼ぶ。自分に向かって鉄砲を向けろ、引き金を引け、と善左衛門に向かって言い放ち、躊躇う善左衛門を叱咤するその気迫の凄まじさ。ほんと、カッコよかったわ~。一方の善左衛門のがちがちの一本気も決して嫌味ではない。それは亀三郎さんのアツく真っ直ぐな演技と声がそう感じさせたのだと思う(ただ、3階では時々亀三郎さんの声が籠って聞こえることがあった)。
敷居を挟んでやりとりしていた2人だが、突然光政公が「中へ入れ、ちこう来い」と呼んだときにも御浜御殿を思い出した。状況は違えど善左衛門もやはりなかなか敷居をまたげない。
最後、「人間として負けました!!」。
他の出演者では、新歌舞伎ではあるが、歌舞伎というよりは時代劇っぽく見えた役者さんもいた。橘太郎さんがやっぱり役の心を摑んでいてよかった。
ところどころで、気がついてみると涙している自分がいた。
「義経千本桜 渡海屋・大物浦」
仁左様カッコよすぎ。颯爽とした出(と言っても花道七三からしか見えなかったが)、相模五郎と入江丹蔵に対する姿の大きさ、浴びせる言葉のカッコよさ。門出の舞を舞い納めると「知盛早う」と天皇。「ははぁ」と受ける知盛の声には喜びが籠められているようだったが、一方で白装束での引っこみには悲壮さも感じられ、勝利を目指しながら死を覚悟しているのだと思った。弁慶にかけられた数珠をけがらわしいと引きちぎった知盛に天皇が「我を供奉なし永々の介抱はそちが情け、今また我を助けしは義経が情け、仇に思うなこれ、知盛」と声をかけた時、大事に大事にお育てしてきた若君がこんなに立派になったと、知盛の張りつめていた力がふっと抜けたように見えた。「昨日の敵は今日の味方、あら嬉しや」では泣けた。碇が重そうで重そうで、ああ知盛は本当に力尽きるまで戦って、今最後のわずかに残った力を振り絞っているのだと、胸が痛くなった。

岩の向こうで仁左様を受け止めるべく布を張って構えている水衣さんたちが見えた。舞台裏が見えるのは興ざめかと思いきや、その張りつめた表情に、私は知盛入水の緊張感が高められた。
典侍の局は時様初役だったのね~。夫が日和見名人であるというお柳の自慢話、銀平の声色に似せすぎて男が入ってしまっていたが、話し終わると客席から拍手が湧いた。白装束の知盛を見ると、お柳から典侍の局にすっと変わった(こういう役の時様の品位は随一だと思う)。大物浦での女官たち入水の場面はいつも泣ける。ともに海の底へと言う局に涙――実際に幼い帝が入水したのかと思うと…。帝の辞世の歌に涙。立派な辞世をお詠みあそばされたと褒める局に涙。そして女官たちの身投げに涙。
安徳帝の右近クンは2度目であるが、幼いながらも帝の品格があって、うまい。じっと動かないでいるのもすごい。
相模五郎の巳之助クン、入江丹蔵の猿弥さんが前半コミカルに盛り上げ、後半は勇猛さで悲劇性を高めた。銀平に曲げられた刀が無事に鞘に納まると客席から拍手が起こった。魚尽くしもウケていた。
梅玉さんの義経を見ると、やっぱりこの人を措いて義経はいないと思ってしまう。品位、大きさ、情、敵への敬意、どれをとってもぐっとくるものがある。
彌十郎さんの弁慶は自分でほら貝を吹いていた(201310月の歌六さんも自分で吹いていたらしい)。彌十郎さんの人柄が感じられるような音色であった。
2
時間近くの芝居だったが、いつも言うように、いい芝居には長さを感じない。
「どんつく」
浅葱幕が振り落された直後、板付きの巳之助クンが一瞬三津五郎さんに見えて、泣きそうになった。田舎者の可笑し味を出しつつ、曲芸、おかめの面をつけた踊りなど、楷書で楽しく踊って見せた巳之助クンの成長をあらためて思った。
松緑さんと亀寿さんが巳之助クンと絡んで達者なところを見せた。
海老蔵さんは何となくあまり楽しそうに見えなかった。他の人がみんな割とすまして踊りを見ているのに対し、右近クン(尾上)1人がにこにこして身を乗り出すようにして見ていた。
新悟クンがしっとりと娘らしくきれいだった。
菊五郎さん・時蔵さんのカップルを久しぶりに見た感じで、なんかドキドキしてしまった(先月も夫婦役だったけど、こういう粋なカップルは久しぶりじゃないかな)。やっぱりこのコンビは一番しっくりくる(て言うか、こっちがテレるぜhappy02)。
全員でのどんつく踊りは楽しかった。それぞれが役に応じて違う踊りをしているのだろうけど、目があちこちに移って、その違いをしっかり見分けることはできなかった。
もっと見ていたいような楽しい「どんつく」だった。
<上演時間>「明君行状記」77分(11001217)、幕間30分、「義経千本桜」114分(12471441)、幕間20分、「どんつく」44分(15011545
上演時間が発表になった時にはあまりの長さにびびったけれど、実際に見てみると楽しくて疲れはほとんど感じなかった。

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コメント

こんにちは。
21日昼の部にいらしていたのですね。
どんつくの幕見席から、Swingingさまと覚しきのお姿が見えました。
夜の部で、筋書きの写真入り入荷を確認した時は、明日(22日)予定と云っていました。
マイ楽だったので、時間が取れそうな時に筋書き買いに行きます。

投稿: とこ | 2017年3月23日 (木) 14時58分

とこ様
こんばんは。
あらら、見られていたのね~coldsweats01
幕見はどのくらい入っているのかなと一度は後ろを振り返ったのですが、「どんつく」の時ではなかったかも。
巳之助クンのどんつくは、巳之助クン独特のコミカルさと楷書の心地よさが合わさっていてとてもよかったと思います。
筋書き、1日違いかぁ…お互いに残念でしたね。夜の部もご覧になったのですねhappy01

投稿: SwingingFujisan | 2017年3月24日 (金) 00時31分

亀三郎さん良かったですね!
実力は申し分ないのに、評価・評判がこれまで過小評価されていたように思います。襲名が今から本当に愉しみです。

松嶋屋の時代物と播磨屋のそれは双璧ですね。この2人を観てきてこれたのは本当に幸せなことだと思います。

松嶋屋さんは勘平を音羽屋系で権太を上方風に演じるなど独特の工夫解釈が観ていて興味が尽きません。
今回の知盛は、二世松緑と三世延若の東西の折衷型のようですね。自らの血を舐める処は河内屋の型とのこと。「知盛が怨念なりと伝えよや」辺りから目が霞んできている点を強調するのも特長ですね。岩に登るのも長刀を杖代わりに使っていたのが珍しいと思います。
時蔵さんも初役とは驚きましたが、丹蔵の注進を受け最期の時を悟る辺りが特に印象に残りました。

投稿: うかれ坊主 | 2017年3月25日 (土) 19時44分

うかれ坊主様
おはようございます。コメントありがとうございます。
亀三郎さんの主演、私も本当に嬉しい思いで見ていました。襲名後もどんどんいい役で出てほしいですよね。

今時代物といったら、たしかに播磨屋、松嶋屋のお2人ですね。おっしゃるように、松嶋屋さんは色々工夫なさっていて、役にかける思いが伝わってきます。この知盛は何度でも見たくなるようでした。
典侍の局は梅枝さんのほうが先にやっているんですよね。時蔵さんもこれを機に、もっと色々な役をやってほしいなあと思いました。

投稿: SwingingFujisan | 2017年3月26日 (日) 11時32分

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