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2017年4月12日 (水)

まさに昔と今をつなぐ「今様」

411日 「今様―昔と今をつなぐ」(松涛美術館)
170412imayo 雨の中、渋谷へ。考えてみれば、これまで雨が降っても都内はほとんど地下道で済んでいたし、本格的な雨の日に出かけたのは久しぶりで、傘が持ちなれないなあと変な感慨を覚えた。ハチ公バスを15分以上も待って2停留所。松涛美術館前で降りたはいいが、曲がる道を間違えたことで、松濤公園の周辺をぐるぐると迷ってしまった(迷うような所じゃないのにね)。

雨のせいもあるのか、鑑賞者は私1人だけ(私が出る時1人入ってきて、なんかほっとした)。あとで気がついたのだが、5日に始まったばかりだったのね。私がこんなに早く行くとは珍しい。
「今様」に取り上げられている作家は、染谷聡、棚田康司、石井亨、木村了子、山本太郎、満田晴穂の6人。どの方も初めて知った。それぞれの作家に参考作品としてインスピレーションを与えたというか背景となった作品が展示されているので、「今様」がよりわかりやすい(今様って、言葉の意味としては知っていても、あまりピンと来ていなかったのが、今回そういうことかとよくわかった)。

まず地下1階へ。
染谷さんの作品は蒔絵仕立で(よくわからないけど、そう言うのかな、)、材料として鹿の骨や角などを使っているのが面白い。最初に目に飛び込んできたのは「Displayism/御頭」。ハワイの鹿の頭蓋骨である。日本では鹿は神の使いであったりするが(先般の春日神社とか)、ハワイではスポーツハンティングの獲物でもあるそうで、地域による文化の違いを考える。参考作品として国芳「武者尽はんじもの」が展示されていて、「おすましる代」「御椀獣三郎」「おにぎゅり」など、たしかにそういうラインを連想させる作品が何点かあって面白かった。
棚田さんの作品は一木彫り。圧巻は「12の現れた少女たち」で、神社建立時に使われていた柱の端材を使用しているのだそうだ。どの少女たちもどこか寂しげ、はかなげでいて、芯の強さを感じさせるように私には見えて、好き。彼女たちに囲まれている「木の花は八角と星形の台に立つ」も、とても印象的な作品だった。参考作品は円空4点。棚田さんの作品が円空の方を見ている。
山本さんは<平成琳派>と言われているのを納得。「隅田川 桜川」は能の「隅田川」をモチーフにしていて、「隅田川」は能の拵えの母親が懐に抱いているのはキューピーさん。「桜川」はやはり能装束の母親が掃除機を持って桜を吸い取っている。この2双は左右どちらに並べても成立するそうで、今回、前後期で並べ方を変えるのだそうだ。前期は左隻が「隅田川」。「紅白紅白梅図屏風」(紅白紅白なのだ)はもちろん光琳の「紅白梅図屏風」を、また「誰ケ袖図屏風 模ホノルル本」は、ホノルル美術館の「誰ケ袖図屏風」本歌とする。参考作品は「光悦謡本」2点。

ここから2階へ。
木村さんの「美人画」はイケメンを描いた作品。「男子楽園図屏風 East & West」は六曲一双の東に草食男子たち、西に肉食男子たちが描かれている。草食男子は農業を、肉食男子たちは牛に槍を突き立て、バーベキューを楽しんでいる。いわゆる<草食・肉食>を文字通りの草食・肉食に託しているのか。「酔いどれ三人男:怒り上戸、泣き上戸、笑い上戸」は鳥居清長の「女三人上戸図」を、ワイキキビーチでウクレレを弾くイケメンさん「Aloha Oe Ukulele ―夢のハワイ」は中村大三郎「婦女」を本歌としている。九谷焼の絵皿にもイケメン王子が描かれていて、木村さんのスペースは女性にはちょっと嬉しいかも。参考作品は「色絵籬椿文捻花形皿」。
石井さんの作品は<平成の浮世絵>。「改札口」「競争社会」など、これから社会に出て戦おうとせんばかりの甲冑をつけたサラリーマンたちが色鮮やかに描かれている。彼らが手にしている武器はパソコンであったり傘であったり、というのがなんか切ないが、戦場に飛び出していこうとする臨場感がよく表現されている。「そば屋」には国芳の怪奇モノを連想した。モノトーンの「美人画」4点は企業戦士作品のインパクトが強くて、あまりよく覚えていない。これらの作品は絵画かと思ったら友禅染であるのが驚きだ。参考作品は友禅染と刺繍の「吉原細見模様小袖」。
なんか、みんないい作品だったから図録買っちゃおうかなあ(1,500円だし)と思いつつ、最後の満田さんの作品に進む。展示室の奥にちょっとしたスペースがあって布団が見えたのでなんだろうと近寄ってギョギョギョ。枕に百足が2匹‼ にょろ系、多足系は大の苦手。もちろん作者には何かを表現する意図があるのだけれど、もう気持ち悪くて、自分の枕にも這ってこられそうな気がして…(それだけリアルにできている)。作品は「無為」。満田さんは主に虫の自在置物で、百足以外の虫は平気で見られたし、参考作品の「画本虫撰」(歌麿)「春渓画譜」(森春渓)と一緒に展示されていて、生きた図鑑みたいと感心もしたのだけど、なにしろあれにショックを受けて、図録をためらってしまった。

たまたまチケットをいただいたので行ってみたのだが、これまで知らなかった若い作家たちを知ることができたし、展示の規模も程よく、いい作品ばかりで(衝撃的な作品もあったけれど)、冷たい雨の中、濡れながら行った甲斐あり、とっても素敵な展覧会だった。

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