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2017年4月19日 (水)

四月歌舞伎座夜の部

416日 四月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
歌舞伎はすご~く久しぶり(先月28日の俳優祭以来)。出かけるのが億劫になってきて生活不活発症候群になってるんじゃないかと心配だけど(そうは言いながら美術展に行くから大丈夫か)、やっぱり歌舞伎は見ると面白い。一番しっくりくる。とその都度しみじみ思う。
「傾城反魂香」
1
月に浅草で見た若手のもよかったけれど、大人の芝居を見たという感じ。
全体として、土佐の苗字はそう簡単に名乗れるものではない、絵の実力がなければ与えられるものではないというコンセプトを、今回は強く感じた。
又平夫婦の思いつめた様子、弟弟子に先を越されたショックは察するに余りある。物見を命じられた又平が張り切って愚鈍なほど忠実に職務に従う姿に、又平の思いが込められている。それなのに追手の役目は修理之助が言いつかる。修理之助にしがみつく又平の思いに胸が痛くなる。その一方で、やっぱり絵で勝負しようよと突き放そうとする自分がいる。そしてそれは多分又平自身もわかっていて、ハンデを背負った苦しみゆえに、絵師として認められないのはハンデのせいだと思い込んでいる、いや思い込もうとしている。本当は思うような絵が描けないから死を覚悟したんじゃないかなんて…。こういう芝居は、3階ではなく表情がよくわかる席で見たほうがいいのかもしれないな。
吃音は当時は今より多かったのではないかと思うが、それでもカタワとみられる悲しさには切々としたものがある。又平夫婦がその宿命を呪ってはいても、土佐将監は決して又平をそういう目で見ていないのではないかと思った。身体的ハンディを甘やかすことなく、卑屈にならずに早く絵師としての腕を示せと内心叱咤激励していたのではないか。実際どうかわからないけれど、歌六さんの将監からはそんな印象を受けた。
絵が抜けたのを確認し、又平の力を認めた将監に又平に着せる正装をもってくるように言われた北の方(東蔵)が奥から「はい、はい」と返事をするその声が心から嬉しそうで、胸が熱くなった。
菊之助さんのおとくはいい女房だと思うし、まっすぐ丁寧に清らかに演じていて好感がもてたが、くどいくらいの細やかな愛情、心遣いはやっぱり雀右衛門さんだよなあ。芸風の違いと言えばそういうことかもしれないけど。
錦之助さん(修理之助)、又五郎さん(雅楽之助)がニンも合っていて、それぞれの役をきっちり摑んでいてよかった。
「桂川連理柵」
上演記録によれば私は見たことがないはずなのだが、なんとなく記憶があるような、ないような。多分、初めて見るんだろう。
吉弥さんの強欲でずるくて意地悪なおばばぶりが面白かった。歌舞伎としての品は崩さず、あれだけの根性の悪さを見せるなんて、吉弥さん、恐るべし。とは言え、長右衛門の女房役をやってもさぞよかったんじゃないかしらと、なんかもったいない気もした。染五郎さんはちょっとやり過ぎかと思うくらいコミカルに弾けていて、大いに笑わせてもらった。
コミカルと言えば、壱太郎クンの丁稚長吉がまた面白くて。前髪の色事を並べ立てた時は「うん、うん、確かにあれもこれもそうだ」と内心スカッと盛り上がったし、客席も湧いていた。壱クン三枚目としての素質もあるなあと考えたら、お父さんが鴈治郎さんだものね。ただ、お半のほうはいまひとつピンとこなかった。

藤十郎さんは大丈夫なのかなと心配したけれど、前半はガマンの連続、後半は色男としての苦悩と、相変わらず若々しい。ただ、声が聞こえないことが多い。こっちの耳もかなり悪くなってはいるんだろうけど。
寿治郎さん、やさしくて情のある父親が合っていた。儀兵衛(染五郎)を叩いた時にはスカッとした。前髪の色事と2回、スカッとジャパン。
扇雀さんはちょっとスリムになったかしら。化粧のせいか顔がかなりきつく見えたけれど、しっとりと心根はやさしく、よくできた奥さんなのだ。それだけにやはり長右衛門の行動には納得がいかない。あまり後味のよくない芝居だ。
「奴道成寺」
素晴らしかった。所化たちの「聞いたか」の後紅白の幕が上がると板付きで猿之助さんが。即猿之助ワールドに引き込まれた。踊りはもちろん、後見の段一郎さん、段之さんとの呼吸もぴったりで、後ろに投げた扇はきれいに段一郎さんの手元に落ちたし、とくに三ツ面での段一郎さんとの面の受け渡しは踊り全体を邪魔することなく、踊りの重要なパートとして見る側を楽しませてくれて見事であった。猿之助さんの踊りは足のつま先から頭のてっぺんまで、細かい神経が行き届いて、やわらかく、時にしっとり、時にリズミカルに、本当に魅入られた。
桂三さんの長男龍生クンが所化の1人として初舞台。堂々と懐から天蓋(タコ)を出して拍手を受けていた。「りゅうせい」の掛け声も。龍生クンは猿之助さんの踊りの間は引っこんでいて、手拭撒きの時に又出てきた。
所化の中では右近(尾上)クンのうまさが際立っていた。動きのやわらかさ、踊りが体にしみついているような感じだ。男寅クンが大きくなってびっくり、顔も男女蔵さんに似てきた。
ラスト、蛇のしっぽが危なげなくきれいに立ち、お見事。
楽しかったから幕見ででももう一度見たいけれど、いつものように見たいだけで終わってしまいそう。

<上演時間>「ども又」80分(16301750)、幕間30分、「帯屋」69分(18201929)、幕間20分、「奴道成寺」43分(19492032

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

お久しぶりです!
帯屋!!永楽館で意地悪親子にイライラしながら見たのを懐かしく思い出しました。
吉弥さん,永楽館では健気なお絹を演じていてとてもよかったですよ。お絹さんが健気で本当にいい奥さんなだけに後味の悪さが残ったお芝居でしたがやはり納得いかないですよね?あんなにいい奥さんがいるのにどうして・・・。と当時思ったものです。
最近突然体を動かすことに目覚めてしまい,暇さえあればジム通いをしていてすっかり歌舞伎はごぶさたになってしまいましたcoldsweats02
SwingingFujisanさまの観劇記を拝読して自分も観に行った気になっていますhappy01

投稿: あねご | 2017年4月20日 (木) 22時29分

あねご様
こんばんは。こちらこそご無沙汰しております。コメントありがとうございます‼
永楽館では吉弥さんがお絹だったんですね。断然そのほうが吉弥さんらしいと思いますが、ああいう意地悪ばあさんもちょっと面白かったです。調べましたら永楽館での意地悪おとせは寿治郎さんで、その寿治郎さんが今回は優しい繁斎って、配役の妙ですね。寿治郎さんのおとせも見てみたかったですわ。
男性はできた女房より若い女の子の情熱に惹かれるのでしょうかしらね。そう思うしか…bearing 

ジム通い、行動的なあねご様らしくて、とても素敵ですhappy01 私も以前ジムに挑戦したことがあるのですが、全然続きませんでした。以来、ほとんど体を動かすことがなくて…。ですので、ジムで汗を流されるあねご様、羨ましさを込めて感心しますわ~。健康の基本は運動だって、頭ではわかっているんですけれど。
一生懸命になれることがあるっていいことですよね。
 

投稿: SwingingFujisan | 2017年4月22日 (土) 00時57分

日曜日に昼夜通しで観てきました。
「帯屋」は久しぶりでしたね。
この前は吉右衛門の長右衛門でした。
長吉はコミカルな役、典型的な丁稚役でこの延長線上に松竹新喜劇の喜劇があるのでしょうが、どうも原作ではかなり腹の黒い悪者のようです。
言い寄っていたお半を長右衛門に取られた腹いせに長右衛門が遠州の屋敷から研ぎを頼まれていた正宗の差し添えを自分の錆び刀とすり替えています。
長右衛門は長右衛門で、原作ではこの事を苦に死ぬ覚悟をして書置きをしたためる場面があるようです。今は省略されている場面です。
お半はお半で別れ話を苦に、死ぬ覚悟を決めて書置きを置いていく。桂川に身を投げることを知った長右衛門は「一緒に死ぬのが親への言い訳」となるのですね。
思えば、長吉が長右衛門の自死のきっかけを作ったわけですし、お半の自死のきっかけも長吉が主家の娘に言い寄ったためですから、とんだトラブルメーカーというわけです。

投稿: うかれ坊主 | 2017年4月24日 (月) 23時44分

うかれ坊主様
こんばんは。コメントありがとうございます。公開とお返事が遅くなってしまってすみません。
昼夜通しは大変でしたでしょう。
「帯屋」ってそういう物語なのですか。お芝居の長吉からは全然そんな様子が窺えないどころか、完全に三枚目でした。いずれにしても、場面場面は面白かったのですが、物語全体としてはいま一つわからないというか、私の感覚に合いませんでした。心中ものは苦手です。

今日は赤坂歌舞伎を見てきました。歌舞伎座昼の部の感想もまだで、またためてしまっています。おいおい書いていくつもりです。

投稿: SwingingFujisan | 2017年4月25日 (火) 22時26分

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