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2017年5月23日 (火)

強く惹かれた「シャセリオー」、「スケーエン」

520日「シャセリオー展」~「スケーエン」(国立西洋美術館)
170523chasseriau シャセリオー、誰?というくらい、名前も知らなかったが(だいぶ前から開催しているので、名前は聞き覚えがあるような錯覚に陥っていた)、やはり知名度は高くないらしい。西美の外にかかっている肖像画(←)がとても素敵で、上野に行くたびに心惹かれていたのに、例のごとく会期末近くになってやっと足を運んだ(28日まで)。
シャセリオーは早くからアングルに認められるほど豊かな才能に恵まれていたが、27歳という若さで他界したこともあり、知名度が上がらなかったらしい。また、やがてアングルとの方向性の違いがはっきりして師と訣別することになったそうだが、そんなことも影響していたのかしら。そういえば、3月に放送された「美の巨人たち」、アングルとドラクロワをつい先日見たが、シャセリオーと同時代に活動したドラクロワをアングルは絶対に認めようとせず、アカデミー入会に断固として反対し、ドラクロワがアカデミーに入れるまでに20年もかかったと言っていた。デッサン重視のアングルに色彩重視のドラクロワという対立のようだが、実はアングルはドラクロワの才能に嫉妬していたという説もあるそうだ。詳しいことはわからないが、アングルに気に入られたシャセリオーのデッサン力は確かなものだったのだろう。
この展覧会はシャセリオーの作品を中心に、師のアングル、同時代人のドラクロワ、シャセリオーが影響を与えたモロー、ルドンなどの作品も展示してあって、へ~、モローってもろシャセリオーの影響受けてるんじゃん(シャレじゃないよ)、と驚いた(全然関係ないんだけど、シャセリオーの「アポロンとダフネ」を見てたら、「やすらぎの郷」の高井秀さんの絵を思い出してしまった)。
170523chasseriau2 シャセリオーの自画像はかなり印象的。彼自身は容貌にまったく自信がなかったそうだが、決してそんな容貌には見えず、むしろ惹きつけられるものがある。それが恐らく彼の才能なんだと思う。シャセリオーの肖像画は自画像、ポスターにもなっている「カバリュス嬢の肖像」(上の写真)をはじめ、どれも目に人を惹きつけるものがあるような気がする。肖像画はどれも好きだが、中でも「政治家にして公法学者のアレクシ・ド・トクヴィルの肖像」は、トクヴィルという人の人物性がとくに強く感じられて惹きつけられた。
フランスの画家にとってオリエントは魅力的だったようで、シャセリオーもアルジェリアを旅して(北アフリカもオリエントなんだ…)、いかにも触発されたんだなあとその興奮というかオリエンタリズムに対する関心の表れというか、そういう作品を残している。そうした画家の関心度が高いとこちらもその作品にのめり込めるのだ。
シャセリオーは、会計検査院大階段の壁画も手掛け、モローだけでなくシャヴァンヌにも影響を与えたが、その壁画はパリ・コンミューンの際に建物とともに焼かれてしまい、いまでは断片が残るのみだそうだ。昨年見たアフガンの展覧会でも思ったことだが、人の命のみならず人類の財産である芸術品が失われることの痛ましさをここでも非常に残念に思った。
ほとんど肖像画にしか触れなかったが、展覧会は
1
 アングルのアトリエからイタリア旅行まで
2
 ロマン主義へ――文学と演劇
3
 画家を取り巻く人々
4
 東方の光
5
建築装飾――寓意と宗教主題
で構成され、肖像画以外の魅力的な作品もいっぱいです。

170523skagen 「スケーエン」は常設展の中でやっているので、シャセリオーのチケットで見られる。デンマーク最北端にあるスケーエンは、鉄道の駅も港もない小さな漁村だったそうで、1870年代からコペンハーゲンの画家たちが訪れた際にここの自然に惹きつけられて、次第に芸術家たちが集まるようになり、国際的な芸術家村として知られるようになったとのことだ。
展示作品の画家たちのことはシャセリオー以上に全く知らないが、彼らの絵は実に魅力的だ。私が好きな労働絵画が多いせいもあるかもしれないけれど、漁村の地に足のついた生活感がリアルに伝わってきて、なんかわくわくする。男たちの厳しい海、女性が散歩する明るい海辺、花の咲き乱れる野原等々、スケーエンに行ってみたくなる。どの絵も気に入ったのでよほど図録を買おうかと思ったけれど、ぐっと堪えた…(やっぱり買えばよかったかな)。
スケーエンの作品はめったに見られないと思うので必見です。

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