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2017年5月 9日 (火)

出ずっぱり愛之助さん大活躍:明治座昼の部

59日 五月花形歌舞伎昼の部(明治座)
連休明けの平日とはいえ、3階正面関にはけっこう空席が…。私は狙い通りの席を取ったつもりだったけど、目の前に金属パイプの手すりっていうのか何というのか、コの字型のパイプを縦置きにしたような、歌舞伎座では上演時間になると下に押し込んで邪魔にならないようにできるものが立っていて、視界を邪魔する(時々フレームの隙間から見ることになる)。これまでは気が付かなかったのか、気にしなかったのか…。明治座も可動式だといいのに。
170509tukigata 「月形半平太
月形半平太――知っているような、そうでないような――芝居を見て、知っていたのは名前だけだとわかった。「春雨じゃ、濡れて行こう」が月形のセリフだったか、とは「月さま、雨が」で気がつき、ほんと私って何にもわかっていないとガックリきた。さらには幕末の人だったのか(いつの人だと思っていたかという意識さえなかった)。一番驚いたのは、こんな壮絶なドラマがあったのか‼ ということ。この日は大向こうさんが来ていなかったようで、ここはほしいなというところも静かでちょっと寂しかった。

前半はどことなくやや面白みに欠ける部分があったが、すぐにどんどん面白くなって、けっこうのめり込んだ。
全体的な印象としては、歌舞伎でもあり新国劇でもあり時代劇でもある、ということ。長州藩の武士たちと月形が決裂し、月形が去った後月形を斬ろうといきり立つ武士たちを「どうせ見廻り組がやるから」と橘三郎さん(藤岡九十郎)が制止する場面では、京の闇の中を殺気を漲らせながらあるいは気配を消して蠢き、ヒタヒタと獲物に迫る殺し屋たちの姿が映像として脳裏に浮かび、ぞくっとした。

坂本竜馬は萬太郎クン。密談にしては声も大きく(でも、聞き取りやすくて助かった)やや力み過ぎなような気もしたが、若さと情熱に溢れていて、国を思う気持ちが伝わってきた。萬太郎クンのコミカルで柔らかい部分とかっちりした部分がうまくミックスされていた。中岡慎太郎の種之助クンはいつの間にかいなくなっていて(その場から去ったのは気がついていたが、「いつの間にか」という感じ)、そのままもう出てこなかった。
桂小五郎の亀蔵さん(松島屋のほう)、とてもいい声なんだと今さらながら思った。いつもはその怪演ぶりだったり、出番が少なかったりで、あまり声を意識したことがなかったが、今回は説得力が必要な役ということもあるのか、とくに声が印象に残った。そして国を思い、月形を思う気持ちに胸を打たれた。
壱太郎クン(芸妓・梅松)は月さま一途の女の強さと悲しみを見せたが、浪宅で自分の思いを訴える場面は時代劇っぽく見えた。顔がおかあさんそっくりだし、動きも含めて歌舞伎の女方というより本当の女性に近いものがあったからかもしれない。別れの場面の絶叫には泣けた。
新悟クン(芸妓・染八)はやっぱりいいなあ。旦那(見廻り組の奥平文之進)が月形に恥をかかされたと知った時のケンのある表情、旦那の仇を討とうというのに寝ている月形になかなか刃をおろせない躊躇いの表情と動き(月形に惹かれているってすぐわかる)、透明な声、全部好きだ。2人の建引は「梅ごよみ」の仇吉と米八を思い出させたが、月形のとりなしですぐに仲直りした。
舞妓・歌菊の米吉クンがかわいいこと。最初出てきたときに、なんて幼いんだろうとびっくりしたが、その愛らしさを存分に見せていた。
愛之助さんの月形は姿も声もよく、カッコよかった。写真で見たことのある市川右太衛門や辰巳柳太郎とはずいぶんイメージが違う(いや、もちろんこの2人もカッコよかったんだろうけど)。月形の「酒は飲んでも主義は捨てず」、志を遂げるまでは想う女の気持ちに応えられず、には愛之助さんの骨太な演技と相俟って、男の物語としてぐっとくるものがあった。ラストは泣けた。
幕末は事実・創作入り乱れてドラマになるし、面白い。
170509renjisi 「三人連獅子」
楳茂都流の「三人連獅子」は初めて見た。
子獅子の種之助クンがキレッキレで、ジャンプも怪我しないかと心配になるほど高い。子獅子としての幼さも感じさせてなんか愛おしい。
母獅子の壱太郎クン、私はずっと、年の離れた姉で、母親代わりに子獅子を可愛がっているのかと思っていたら、おかあさんだったのか。獅子としての勇猛さと母としてのやさしさの両面を見事に表現していた。
親獅子の愛之助さんは、総監督的な貫録と子獅子を鍛えるために気を配る厳しさと優しさ→喜び→毛振りという心持ちが見えるようであった。
間狂言が入らず、どうするのかと思ったら5分ほどで獅子の扮装をしてきた3人、早い‼ 舞台も松羽目ではなく、咲き乱れる牡丹の花が華やかで美しく、幕が開いた途端、客席が「あっ」となるほどだった。楽しかった。
<上演時間>「月形半平太」一幕目・二幕目75分(11001215)、幕間30分、三幕目・大詰30分(12451315)、幕間30分、「三人連獅子」35分(13451420


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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

いつもレポートありがとうございます。今日は私も明治座の夜の部を観劇に行きました。大向こうさんが3階にはいなくてさみしいのでひとりで萬屋、播磨屋、成駒屋等と声をかけました。八犬伝は若手が大活躍ですね。3階の両袖はは高校生の団体がいて左側は花道が見えないので乗り出していました。危なそうでしたね。

投稿: カトウ | 2017年5月 9日 (火) 23時44分

カトウ様
おはようございます。
コメントありがとうございます。
夜の部も大向こうさんがいらっしゃらなかったのですね。今月は歌舞伎座に集中でしょうか。声がかからない時にこそ、声掛けの価値を思います。カトウ様の声掛けで役者さんの気分も盛り上がったことでしょうね。私も心の中で声をかけておりました。
3階の左袖は歌舞伎座では身を乗り出すと注意されるようですが、明治座では係の人の姿が見えませんでした。左袖はたしかに気の毒ですが(ハラハラすることもあります)、その分モニターがありますから。私も正面席ではありましたが見えない部分はモニターにオペラグラスを向けていました。でもやっぱり本物を見たいですよね~。
夜の部はまだ先ですが、楽しみです!

投稿: SwingingFujisan | 2017年5月10日 (水) 08時46分

今年は新國劇誕生100年目、幕を下ろして30年目の年なんですよね
所縁の明治座で「月形半平太」が復活したことを喜びたいです。
下北沢でもちょうど「新ロイヤル大衆舎」による「王将」が三部一挙上演もありました(常盤貴子の小春!ですよ こちらも楽しかったです!)。
新國劇再評価の一年になればよいなぁと思っています。

投稿: うかれ坊主 | 2017年5月10日 (水) 12時17分

うかれ坊主様
コメントありがとうございます。
新国劇って解散していたんですね。すっかり失念しておりました。「王将」も新国劇でしたか。そういえば、去年の6月、新派でも「国定忠治」を上演しましたね。私は一度だけ「大菩薩峠」を見たことがあります。暗い舞台の中央に机龍之助が浮かび上がっていたシーンだけ覚えています(正しい記憶なのかわかりませんが)。あれは辰巳柳太郎さんだったんでしょうね。新国劇にはいい役者もいたし、いい作品も多いのに、時代の流れに負けたのでしょうか。今では劇団若獅子が引き継いで頑張っていますが、昭和回帰的な昨今ですから、新国劇も再評価されていくかもしれませんね。

投稿: SwingingFujisan | 2017年5月10日 (水) 17時24分

「國定忠治(新派)」と「月形半平太(歌舞伎)」ともに行友李風作品ですよね。
この1年で2つが復活したことになります。

昔話で恐縮ですが、結果的に新國劇の最終公演になった新橋演舞場での公演を観ております。
島田正吾の「一本刀」と緒形兼の「王将(第一部)」でした。
緒形さんはすでに退団していましたが参加という形でした。
その折に辰巳柳太郎を観損なっているのが、悔やまれます。
辰巳の出し物は「國定忠治」でした。

歌舞伎でおなじみの「井伊大老」もそもそもは新國劇のための作品でしたし、「瞼の母」「一本刀」など共有している部分が多いと思います。

「白野弁十郎」「沓掛時次郎」「関の弥太ッぺ」「霧の音」「王将」なんかも歌舞伎でできますよね。
北條秀司や長谷川伸の世界はですから・・・

こうした演目は商業演劇や所謂歌手による座長公演が減少している現在、「受け皿」になるのは、間口の広い(ある意味なんでも吸収できる)「歌舞伎」かと思っています。

投稿: うかれ坊主 | 2017年5月10日 (水) 18時27分

うかれ坊主様
「国」ではなくて「國」ですね。失礼しました。
昔が懐かしく思える最近の私は、新國劇をちゃんと見ておけばよかったとちょっと悔やまれます。やはり芝居は一期一会、見たい時に見ておくべきですね。
「白野弁十郎」は見たことがありませんが、二代目松緑さんの「シラノ」は見たことがあるような、ないような。父が筋書きを持っていたので自分も見た気になっているのかもしれません。「沓掛」はつい「あんかけ」の方を思い出してしまって(すみません)。
おっしゃるように、新國劇の演目は歌舞伎が引き受けてもいいですよね。同じ作品ばかりでなく、色々やってみるのも面白いと思います。また去年の月乃助さんのように新派がやるのもありかもしれません。

投稿: SwingingFujisan | 2017年5月10日 (水) 18時45分

わたしこそ「緒形拳」が「緒形兼」になってました。
申し訳ありません。

アラン・ドロンと言えば、「サムライ 評伝三船敏郎」(松田美智子著)の本を読んでましたら、例のコマーシャルは三船プロダクションの制作でその収入が経営を一時期支えたとありました。

投稿: うかれ坊主 | 2017年5月11日 (木) 08時03分

うかれ坊主様
あら、ほんとですね。思い込みで気がつかず、すみませんでした。

あのCMは三船プロだったのですか。大ヒットでしたが、経営を支えるほどだったのですね。アラン・ドロンも映像もかっこよかったですものね~。傑作CMの一つと言っていいですよね~。

投稿: SwingingFujisan | 2017年5月11日 (木) 12時31分

新橋演舞場で若獅子会がありますよ!
「劇団若獅子 結成三十周年記念公演 新国劇百年」とあります
平日の2日公演ですが、國定忠治と月形半平太の二本立てです
猿之助も参加です
これは見逃せませんね!

投稿: うかれ坊主 | 2017年5月22日 (月) 09時12分

うかれ坊主様
情報ありがとうございます‼
演目は魅力的だし、猿之助さん出演ということで見たい気持ちは十二分にあるのですが、日程的にそのあたりはちょっと無理かも…。その日になってみないとわからないという状況でして。
猿之助さん出演は、亀治郎時代に日生劇場で「風林火山」を上演した時、武田信虎を笠原章さんが演じられましたが、そのご縁でしょうか。

投稿: SwingingFujisan | 2017年5月22日 (月) 22時12分

平成23年4月の劇団若獅子陽春公演に市川亀治郎(当時)の時にで出てますね。
「 一本刀土俵入」「清元・保名」「 殺陣田村」
おそらくこのとき以来かと。
お蔦と保名だったという記憶があります。
観たいと思いましたが、見送った記憶がありますので。
地道に活動されていますよね・・・笠原さん
公演の成功を祈りたいと思います!  

投稿: うかれ坊主 | 2017年5月25日 (木) 23時50分

うかれ坊主様
情報をいただいて、そういえばそうだったと記憶がよみがえってきました。その時にも信玄親子の縁かなと思ったのでしたわ。
若獅子の地道な活動に猿之助さんが加わることで、注目度が上がるといいですね。
チケットWeb松竹にも発売日がアップされましたね。

投稿: SwingingFujisan | 2017年5月26日 (金) 10時11分

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