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2017年6月25日 (日)

六月歌舞伎座昼の部

624日 六月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
今月は昼の部のほうが後になった。いつも何となく昼の部を先に見ているけれど、やっぱりそういう順番の方がいいのかしら。昼の部だから、ちょっと寝落ちした部分もある。でも昼の部の割には頑張れた方だと思う。
「名月八幡祭」
この芝居はどうしても好きになれない。三次(猿之助)はクズだし、クズとわかっていながら離れられず新助をなぶる美代吉(笑也)は深川芸者の風上にもおけないし、純とはいえだまされる新助(松緑)にもハラが立つし。いや、新助には心から同情しているのよ、いるけど、魚惣(猿弥)に注意されていたのに…って悔しく思ってしまう。
前に見た時の三次は錦之助さん、美代吉は芝雀さん、魚惣は歌六さん、新助は吉右衛門さんだった。正直、ドラマとしては前回のほうがよかった。三次にはいかにも女が放っておけないヒモとしての魅力があったし、美代吉はその場その場の身勝手さにまわりが振り回されるという感じで、悪意のある女には見えなかった(「田舎の人にはうっかり口もきかれない」のセリフがまさにそれを具現していた)。吉右衛門さんの新助には美代吉に運命を狂わされそうな危うさがあった。
松緑さんは江戸っ子らしい竹を割ったようなところが魅力だと思っているので、田舎者の役はどうかなと懸念したが、案外よかった。すべてを失っての絶望が凄まじく、胸が締めつけられるようだった。
笑也さんは透明感があるせいか、ちょっと冷たいのかもしれない。その場その場の身勝手さがあまり見られず、ファム・ファタル感が芝雀さんに比べて薄い。三次に対する気持ちはどうなんだろう。主導権を握っているようで、逆に三次が美代吉のオム・ファタルのような気もする。
猿之助さんは確信犯的に三次のクズぶり(ほんと、ハラ立つわ~)を見せていた。
魚惣は大きさと、新助に対する思いやりと同じ猿弥さんが演じた釣船三婦と重なるものがあった。絶望の新助に対する弱っちゃった感に共感を覚えた。
藤岡慶十郎は坂東亀蔵さんだが、真面目なイメージがこの役には合わないと思った。
江戸の風情はよく感じられるが、なにしろ後味の悪い芝居である。
「浮世風呂」
いや~な気分の後に、楽しくてスッキリした。
幕が開くと真っ暗で鶏の声が聞こえると朝日が差し込むという効果的な舞台。
猿之助さんの踊りは見ているだけでウキウキ引き込まれる。
種之助クンのナメクジは適度な色気があってかわいい。種之助クンは立役としての成長目覚ましいが、女方としてもぐんとよくなった。うちの風呂にもよくなめくじが出てくるんだけど(いったいどこから湧いて出るのよ)、こんなかわいいナメクジなら…、いや、ほんとイヤダだ、ナメクジは。

「弁慶上使」
吉右衛門さんの弁慶に、武家社会の厳しさを見る(そういう芝居は多々あるけれど、ことさらににそれを感じた)。父として、男として、人として、だけど最優先されるのは武士として、という厳しさと悲しみ。熊谷は無常感を以て出家したけれど、弁慶は最後まで主君を守る道を歩む。幕外、悄然と娘の首を抱きしめて泣き、戦の音が流れてくるとキッと前を向き、凜として武士の道を行く。
おわさの嘆きの間、じっとしたままの弁慶は残酷な現実にただただ耐えているように見えた。だからこそ、そのガマンが崩れ、感情が爆発した弁慶に共感できる。大きさだけではなく、弁慶の気持ちが全身に現れていて、泣けた。
おわさの雀右衛門さんは、弁慶がかつて契りを交わした稚児であることがわかると、瀕死の娘を忘れて女になるのがいじらしくもあり、可笑しかった。母親としての嘆きは身も世もなく、思わずもらい泣きした。
米吉クンのしのぶは哀れであった。お父さんに会いたかったのに。会わせたかった、すぐそこにいたのにお父さんは。私、涙腺ゆるくなっている。
又五郎さんは真面目さ忠実さがぴったり。お主のために片や弁慶はこれからも生きていかねばならず、片や侍従太郎は死を選んだわけだが、これもまた武家社会の厳しさ、又五郎さんがそれを淡々としかし深く体現していた。
高麗蔵さんの花の井は控えめで、夫の自害に対する抑えた感情が逆に衝撃と嘆きの強さを表していた。
「名月八幡祭」、「弁慶上使」に出ていた京由さん、やっぱり美形である。
<上演時間>「名月八幡祭り」107分(11001247)、幕間35分、「浮世風呂」23分(13221345)、幕間20分、「弁慶上使」73分(14051518


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コメント

SwingingFujisan様、こんにちは!
24日の昼の部、私も拝見していました! ご一緒の舞台を拝見していたと思うと、嬉しくなりました。

>三次のクズぶり(ほんと、ハラ立つわ~)

亀ちゃんに対する、褒め言葉ですよね?(笑)

それぞれの役者さんの奮闘は伝わってきますが、なんとも、やるせない物語ですよね。その「やるせなさ」感が伝わったことが、芝居としては成功しているのかもしれませんが…。

「浮世風呂」。本当に何度見ても見飽きないだろう舞台でした! まだまだリピートしたいですが、今日が千穐楽。

色々あったひと月でしたが、歌舞伎役者さんて、本当に毎日が闘い。みなさんのご健康を祈らずにいられませんね。

投稿: はなみずき | 2017年6月26日 (月) 13時13分

はなみずき様
こんばんは。コメントありがとうございます。
あらあ、24日、ご一緒だったのですね‼ はなみずき様と同じ舞台を見ていたのですね‼

はい、三次、カメちゃんの確信犯的クズぶりがもう腹立たしくて。お蔦のあのカメちゃんが…coldsweats01

お話としてはつらすぎますよね。松緑さんの悲痛な叫びがまだ心を刺しています。

「浮世風呂」は前の上演時遠征できなかったので楽しみに楽しみに待っていました。あんな短いのかぁとちょっと残念でした(もっともっと見ていたかった)が、その短い時間で猿之助さんと種之助クンの踊りを堪能しました。当時の風呂の風情も感じられて楽しかったですね。

歌舞伎役者さんの闘いは、観劇するたび実感します。みなさんの健康を私も心から祈らずにはいられません。

投稿: SwingingFujisan | 2017年6月26日 (月) 23時11分

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