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2017年7月21日 (金)

歌舞伎愛、師への敬愛:「歌舞伎夜話 京蔵丈、梅乃丈」

717日 歌舞伎夜話「中村京蔵 中村梅乃」(歌舞伎座ギャラリー)
梅乃さん登場ということで迷わずチケットゲット。
2人とも歌舞伎は天職とおっしゃって、強い歌舞伎愛と心からの師匠への敬愛が伝わってきた。お話は楽しくかつ、女方、後見について新たな視野を開かせてくれた。
全部紹介したいのだけど、ものすご~く長くなるので、ちょっと編集しつつ適宜かいつまんで(それでも長い)。カッコ内青字は私の独り言。

まずは京蔵さんの「マクベス」のお話から。
一昨年、コクーンで初参加した。今回は「劇場は遠いし、暑いし…」(まったく同感。夏のあの距離がつらくて「マクベス」チケット取ってない
<徳三郎型の魔女>
魔女は1983年、嵐徳三郎さんで見て、女方の挑戦に驚いた。蜷川さんには徳三郎さんがやったとおりにやってほしいと言われている。歌舞伎役者としては先人の踏襲は当たり前。姿は瀧夜叉みたいな恰好。
<ただただびっくり、ニナガワのダメ出し>
灰皿が飛んでくることはなかったが、言葉の灰皿が飛んできた。上から下まで(つまり、主役から脇まで)分け隔てなく、容赦のないダメ出しは、稽古初日、読み合わせの時からでびっくりした。自分は読み合わせはクリアー。徳三郎さんの造形は足の悪い魔女だが、あまり足を引きずりたくなかったので、立ち稽古の時軽く引くだけにしたら怒鳴られた。
歌舞伎では「二度目は難しい」とよく言われる。「惰性でやってんじゃないよ」と天国から言われないようにパワーアップしている。先生からなんて言われるか、常に思っている。
<海外公演>
先月は香港、10月がイギリス、11月シンガポール。香港ではシェイクスピアが浸透しており、ニナガワ人気もあり、オファーが来ていた。セリフは日本語で、広東語と英語の字幕を出した。17003日間完売。上演中は静か、カーテンコールは地鳴りのよう。
30
年前にもロンドンに行っている(平幹二郎、栗原小巻主演)。イギリスは他国のシェイクスピアを認めないが、時代を安土桃山にして持って行ったら好評だった(舞台装置も仏壇だそう)。イギリスでは縁起が悪いので「マクベス」と言ってはいけない(知らなかった。日本の「お岩さま」的な捉えられ方だそう)。ニナガワマクベスは鎮魂劇で、イギリス人を驚かせた。

次は梅乃さん。緊張して喋れないと言いながら。
<ポートランド行>
29
日、30日と、ポートランドで梅丸(梅乃さんの言葉として敬称略)の後見とレクチャーをする。女方ができるまでの司会進行。英語は自己紹介くらいで、あとは梅丸の実演を同時通訳で。準備が忙しいので英語は飛行機の中で…。ラスヴェガスでは男性が女性を演じることに驚かれたが、ポートランドでは素顔から女方になる過程を全部見せるので変身がよくわかると思う。
<ラスヴェガス公演>
ツチノコとタコの役。女方ではないが、おいしい役ではある。ラップのストーリー説明に合わせて踊るのだが、英語だから何を言っているのかわからない。日本語だと「山」の歌詞に合わせて「山」の踊りをするが、英語は慣れるまで大変だった。踊りは秒刻みで決まっているし(そうなんだ。たしかに演奏は待ってくれないものね)。でも現地スタッフが喜んでくれて、真似して踊る人もいたのが嬉しかった。それについて戸部さん「客の反応がわかりにくい劇場だったから、いい話ですね」。
<女方になった経緯>
入門から7年ほどは立役だった(その時にファンになったのだ、私は)。トンボなどやっていたので、入門時立役を選んだが、骨折をして2カ月ほど休んでいる間に立役に対するモチベーションが下がった。歌江さんもいたし、立役を立てる裏方としても女方は素晴らしいと思った。師匠に相談した時、辞めると言い出すのではないかと思っていたようだ。女方にしたいと申し出たら、長いこと宙を見て「君の将来を考えたらそのほうがいいかもしれない」と言ってくれた。師匠が、そのままやれと言ったら歯を食いしばってでも立役を続けていた。

ここからはお2人に。
<女方について>
梅:真女方の家だから、女方を極めたい。最初の女方は「義経千本桜」で師匠の義経の座布団を出す腰元。全然ダメだと思った。同期の女方とは7年の差があるから追いつかなくては。
京:今、人手不足だから「助六」なんかでは若い立役が女方をする。そういうケースが多い(人手不足というのはちょっとショック)。
戸部:女方でも立役を頼むことがある。
梅:染五郎さんの芝居では立役をすることが多い。誰の意図か…。
戸部:(笑)そんな強い意志で女方やってる人に立役持っていって…。
梅:立役は着流しなので足元がスース―する。女方は腰巻をしているが、立役は心もとない(そこまで女方になっているのはスゴいと思った)。それと立役は頭が軽い。
京:若い人には見たり聞いたりしたことを伝えている。舞台があいてからも気がついた点を注意することがある。幕開きの腰元は格を決めるものだから、芯がしっかりしていなくてはいけない(幕開きって客席がまだざわついているのでセリフが聞きとれないことがある。今後は極力耳をすませ、目を見開いておこう)。他の腰元に注意を与えるのも芯。
<演目による演じ方の違い>
京:「七段目」の仲居は仲居らしく。昔、腰元みたいだとさんざん怒られた。
梅:どこをどうではなく、風情。「梅ごよみ」では深川の水に浸かった仲居を、と京蔵さんに言われた。
京:体が覚えている。手の置き方とか。「伊勢音頭」は田舎だが、田舎は意識せず、夏らしくと意識する。手の使い方が「七段目」と深川(「梅ごよみ」)では違う(今後の観劇のチェック点)。「七段目」は帯の締め方、蹴出しが江戸と上方で違う。江戸で帯は柳、蹴出しは赤、上方で帯は角出し、蹴出しは浅葱。
梅:関西ははんなりした雰囲気が出たらいい。
戸部:客が気づかないかもしれない細かい仕草ですね(同感)。
<見立について>
京:「七段目」の見立は事前に先輩に見せに行くんだけど、却下される時もある、ダジャレじゃないんだよと。
梅:歌江さんに教わったのがある。懐紙4枚の真ん中に穴をあけて、太鼓持ち4人にそこから鼻を出させて「四つ花菱」。これは高麗屋さんの時だけ(高麗屋の家紋ね、四つ花菱は。今度この見立が出たら、イェイという気分になりそう)。
京:團十郎さんの由良之助で稽古の時に見立をやったら「あなた、それはダジャレですから駄目です」(と團十郎さんの真似で。これがそっくり)。芯は見立が決まっているので楽(たしか、梅干)。よくできた人にはひと月の最後に由良さんから賞が出る。
梅:国立で旦那が由良之助をやった時、ぜひ「七段目」もやってください、客としても見たいと言った(今まで梅玉さんの七段目って考えたことなかったけど、見たくなってきた)。
8月公演について>
京:「舞踊の夕べ」は5回目。静は宗家の振付で清元でなく義太夫。義太夫では忠信と2人立ちになるので静が目立つ。「なまめ」は小野小町の伝説に基づく。シンセサイザーのクラシックを使う。今回は旅の男を現代人にしている。「風流」は江戸の風俗を描いた世話舞踊。梅乃さんにも裏を手伝ってもらっている。
梅:歌舞伎の若手音楽演奏家の公演(音の会)に出る。竹本は役者とやりたいということで共演している(今回は「道行初音旅」)。静のくだりが多いので嬉しいが、熱中症ギリギリでやっている。忠信の蔦之助さんのほうがちょっと背が低い。頭(鬘)もつけるので膝を折っている。
京:主従だからあまり気を遣わなくていい。恋人どうしだと気を遣うが、こっちが主人だから(なるほど‼)。
梅:宗家に教わっているが、骨格から女方にするようにと厳しく言われている。
京:衣裳も女方の体形で着ないと、衣裳が身につかない。
梅:子供歌舞伎(寺子屋)の手伝いもしている。先代又五郎さんから教わったことを伝えている。芝居好きの子が集まっているので集中力があり、吸収が早い。研修生になろうというきっかけになればうれしい。
<後見の醍醐味と苦労>
京:後見は楽しい。引き抜きがうまくいくのが後見の醍醐味。道成寺の鐘の上で赤の被せを取って鉄杖を渡し、チョンとなって袖を広げる。師匠と一緒に鐘の上にいるという実感がたまらない。将門でも屋台の上に師匠と一緒にいるのが醍醐味(「屋台は狭くて怖いんですけどね」)(京蔵さん、「師匠と一緒にいる実感」と言う時のお顔がすっごく嬉しそう
梅:師匠と息が合う(のが醍醐味)。「お祭り」で師匠がポンと手拭を後ろに投げる。どこへ来るか狙って、上手く取れると後見の醍醐味を味わう。忠信の扇も、す~っと後ろに滑らされたのを取れた時は。ただ、後見は一生懸命やってはいけないので、さりげなく見つめて狙う(以前、梅之時代のブログで、舞台上の後見は存在を消すようにしていなければいけないと書かれていたのを読んで、以来、逆に後見をガン見するようになったことがしばらくあったが、こちらもさりげなく見ていられるのはそういう後見さんの心構えがあるからなのね)。
京:「かさね」で、師匠が抜いた頭の栓(結ってあった髪が栓を抜くとほどける)が千穐楽に眉間に飛んできた。「かさね」をやる時はどことかに(聞き洩らした)お参りに行くのだが、師匠は面倒がって行かなかった。かわりに自分が行ったのに割に合わない(笑)。雪姫の縄が途中で解けたこともあった(これは大事件だよね~)。それまでは栓で留めておいたのだが、以降後見が持つことにした。
梅:師匠は後見のことをよく考えてくれている。「女夫狐」で師匠の眼を指でつついてしまったことがあった。後で謝りに行ったが、怒られなかった。
京:3大<大変な後見>は、雪姫の縄、毛谷村お園、お三輪の苧環。苧環は長くしたり短くしたり、その加減とタイミングが…。お園は小道具が多く、短時間で仕事が多い。
梅:「土蜘」の頼光の後見。蜘が正体を現してから一瞬のうちに袖を龍神巻にしたり蔓桶を片付けるなど、10秒くらいのうちに色々やらなくてはいけない。前半やることが何もないが、その分緊張感が増してくる。この作業は、クモの糸の回収より大変。

ここからは質問コーナー
<自分が演じた中で一番印象に残っている役と好きな役は?>
梅:どんな舞台でもやり甲斐がある。飽きない。印象に残っているのは勉強会で演じたおかや(拝見しましたぁ!!)。演じてみて大変さがわかった。終わってぐったり。
京:全部好き。後見も楽しい。どんな役も楽しいし、責任がある。印象に残っているのは道成寺と勉強会でやった岩藤。「名月八幡祭」の母親をやりたい。
<初めて見た歌舞伎は?>
京:「国姓爺合戦」の楼門(昭和36年)。
梅:小5の時に見た納涼歌舞伎の「千本桜」通し。女方で初めての役も「千本桜」、名題披露も「千本桜」。

<歌舞伎役者になると言った時の親の反応は?>
京:「このバカ息子」
梅:理解はあったが、中卒でということには見解の相違があった。最後は応援してくれた。
京:うちも最後は応援してくれた。
梅:歌舞伎を早く学べるのは中卒だが、学校生活で得られるものもある。自分にはそれがない。梅丸もキャンパスライフで大人になった。
<歌舞伎役者でよかったことは?>
京:色々なことに応用がきく。シェイクスピアでも違和感がない。それは歌舞伎の懐の深さだろう。女方は歌舞伎の華。海外でもびっくりされる。世界で女方が残っているのは歌舞伎だけ。歌舞伎を背負っているという自負がある。
梅:う~ん。う~ん。(とずいぶん考えて)きれいな衣裳を着ることが多いのは仕事だから…。苦しんでいく中で表現できること。
<見て好きな芝居は?>
梅:師匠に入門する前に手伝ったのが「保名」。稽古着の後姿が完全に保名だった。以来、保名は憧れ。
京:先代の葛の葉。もう一度見たい。
<好きな食べ物>

京:和食。何でも好き。スイカは苦手。カブトムシを連想しちゃう。子供の頃から苦手だったが、最近少し食べられるようになってきた。
梅:ネギトロ丼。人生最後の食事はネギトロ丼と決めている。自分もスイカはだめ。メロンもだめ(メロン、だめっていう人、意外と多い。京蔵さんはメロンは大丈夫だそう。私はだ~い好き。今の時期、熊本のタカミメロンが最高)。

<締めの一言>
京:雀右衛門襲名公演は今月の巡業で終わる。当代もよろしくご贔屓を。ついでに私もご贔屓を。
梅:梅丸も師匠も歌舞伎夜話に出た。(高砂屋には)京蔵さんと同期の梅蔵、弟弟子の梅秋もいる。高砂屋一門をよろしく。


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コメント

夜話レポート、ありがとうございました!
行ける日程だったのですが、この暑さにひるんでしまったので、こちらで体験できて嬉しいです。
女方さんのお話は、とっても楽しいですよね!
SwingingFujisan様のレポートをクスリ&ニヤリしながら読んでおりました。
幕開きの腰元たちの「格」のお話、なるほど~!と思いました。(たしかに、腰元リーダーの風格、風情で、そのお屋敷の雰囲気が分かる気がします。)
手の置き方、お衣裳まで。私も次から要チェック!します。

投稿: はなみずき | 2017年7月23日 (日) 14時26分

はなみずき様
こんばんは。コメントありがとうございます。
女方さん、お話をたくさんもっていらっしゃいますよね。お2人ともとても穏やかに面白いお話をたくさん聞かせてくださいました。長くなるので書かなかったのですが、梅乃さんはおやすみになる時、紙ばんそうこうで口をとじていらっしゃるそうです(びっくり)。喉を保護するのにもいびき防止にもいいとか。京蔵さんはマスクをしていらっしゃるとか。私も喉が弱く、夏でもマスクをして寝ておりますので、我が意を得たり、でした。
腰元、仲居、お芝居の世界を作り上げるのには大事な存在ですよね。

暑くて暑くて、つらいですね。年々、暑さがこたえて…。
はなみずき様もどうぞお体をお大事になさってくださいね。

投稿: SwingingFujisan | 2017年7月24日 (月) 00時02分

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