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2017年7月24日 (月)

子供のためのシェイクスピア「リア王」

718日 子供のためのシェイクスピア「リア王」(あうるすぽっと)
170724kinglear 華のん企画の先行販売時には予定が立てられず、当日券で観劇。この日、池袋は日中嵐のような天候で、昼の部だったら行かれないところだった。その残したものを見ると、昼間はリア王の荒野みたいだった?なんて。
開演前、イエローヘルメッツ登場でリア王役の福井貴一さんが「昼間雹が凄かった」と言っているのに、客席の反応は薄い。知らなかった人が多い感じだった。子供は元気、子供の元気には想像力がある、観劇は想像力を養うというような話の後の歌は福井さんのソロで「ピアノ」。
イエローヘルメッツが引っこんでから来る人も多く、ちょっともったいない。もっと宣伝すればいいのにと思った。

さてお芝居は、何と言っても伊沢磨紀さんの不在が大きい。寂しさだけでなく、存在感の大きい人がいないことによる穴のようなものも感じた。それはさておき。
物語には一貫して、人間の愚かさが流れていた。善玉と悪玉がはっきり分かれていて、みんなそれぞれが愚かである。リア王はそのどちらでもなく、ただ自分の愚かさに翻弄される。で、面白いのは、王に忠実な善玉よりも、悪玉側である。それぞれが悪知恵をめぐらすのも面白いし、ワル姉妹が1人の男(エドマンド)をめぐって諍いを起こすのも面白い。欲に狂う人間の醜さは面白い(恐らくそれを冷静に眺めているのは一番の悪玉エドマンドではないだろうか)。エドマンドが歌舞伎の「もどり」みたいに、ラストでコーディリアの処刑命令を告白するのも面白い。まるで存在感の薄かったオールバニが最終勝者になるのも面白い。だが悪玉だけでなく善玉側の人間も破滅に陥るのは、何とも救いがない。というか、そこがシェイクスピアの面白さなのかもしれない。
山崎さんの工夫はいつもながら見事(舞台は机と椅子だけとか、黒マント使いとか、人形の存在とか)で、物語を知っていてもどきどきはらはらするような展開であった。とくに、物語が進むにつれ、大きなうねりが舞台全体に感じられ、王がさまよう荒野、ドーヴァーの崖や戦争の様子が目に見えるようであった。もっとも、それは逆に物語を知っているからであって、独白や12役(リア王、グロスター、エドマンドを除いて2役)も含めて知らない人にはちょっと複雑なんじゃないかという気もしないではない。

福井さんはリア王になりきった迫真の演技が圧倒的だった。グロスター伯爵の戸谷昌弘さんは持ち味のコミカルさを活かしながらの悲劇の父親。ゴネリル(加藤記生)にはもう少し妖艶さみたいなものがほしかったが、ゴネリルという女をわかりやすく演じていたのではないだろうか。ゴネリルって名前から受ける印象も何となく怖いが、リーガンの方が人物としてはもっと怖いのだ。佐藤あかりさんは残虐さと平然の並列が怖かった。大井川皐月さんのコーディリアは飾らない言動が。土屋良太さんのオズワルドはがゴネリルにとっては単に絶対服従の便利なだけの家来なんだが、多分ひそかにゴネリルに憧れているという感情をうまく見せていた。私は登場人物の中で一番難しいのはエドガーないかと思っているのだが、チョウ・ヨンホさんは体当たり演技でエドガーの複雑な心を見せていた。若松力さんのエドマンドはイアゴーと重なり、若松さんのイアゴーを見てみたくなった。山崎さんのケント伯はいつものように人形カイアスと行ったり来たりの演じ分けで、やはりここの工夫が一番だろう。
<上演時間>130分(19002110


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コメント

悪の効いた若松力のエドマンドの演技をみて、もしやと思いましたが、若松武史のご子息なんですね。(ニヒルな笑いが親子でよく似ています!)これまであった「好青年イメージ」とは違う一皮剥けた感じを持ちました。(もっとも数年ぶりに見ましたのでその影響もあるのかもしれませんが)

投稿: うかれ坊主 | 2017年7月26日 (水) 08時39分

うかれ坊主様
あらあ、若松武史さんの御子息とは考えもしませんでした。と打ったところで私の頭にあったのは日下武史さんの顔。似てるかなあ…と考えているうちに武史違いに気がつきましたcoldsweats02 若松さんは年々力がついてきているのを感じます。

投稿: SwingingFujisan | 2017年7月26日 (水) 22時02分

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