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2017年8月16日 (水)

八月歌舞伎座第一部

812日 八月納涼歌舞伎第一部(歌舞伎座)
久々の歌舞伎。ず~っと11日だと思い込んでいて、前日にチケットを確認したら12日だった。
「刺青奇譚」
長谷川伸の作品だから泣けるのは泣けるのだが、それでも役者がよくなければ多分泣けない。中車さんと七之助さんがとてもよくて、何度もうるうるしてしまった。中車さんがとにかくうまい。歌舞伎役者としてうまい。先月も歌舞伎役者中車の進化に驚いたが、今月も、どれだけ努力を積み重ねていることかと感銘を受けた(精進の合間にカマキリ先生で昆虫愛を熱く語ったりもしている)。
七之助さんは玉三郎さんそっくり。何もかにも背を向け、捨て鉢にならざるを得なかった人生の苛酷さが暗い舞台から浮かび上がってくる。命を救ってくれた男(救われた時は余計なことをと思っただろうが)が他の男とは違うと知って、人生をやり直そうという希望が湧いてきたのではないか、そのためにはこの男にすがりつかなくてはならない、すがりついていたい、その必死な気持ちがまたこれまでの苛酷な生活を思わせた。男の方はいきがかり上、女を捨ててもおけない程度だっただろうが…。
扉を叩く音に、追手かと慌てて2人で逃げるが、尋ねてきたのは母と弟だった。逃げたと見せて外から様子を窺い、涙の再会があるかと期待したが甘かった。
猿弥さんの熊介がしつこくて面白い。

逃亡先の品川での貧しい暮らし。お仲は病に臥せっており、半太郎は相変わらずの博打。それでもお仲は半太郎の愛情を感じて幸せだったんだと思う。近所のおばさんがお仲の面倒をみている。芝のぶさんが、同じように貧しいだろうにお仲を放ってはおけない気の優しさを存分に見せて泣かせてくれる。
お仲は半太郎との暮らしに幸せを感じていたと思う。あんなに蓮っ葉だった女が床についているとはいえ、しっとりと普通の市井の女房になっている。ただ、半太郎がいつまでも博打をやめないことだけが気がかりで、死んでいく女房の一生のお願いだからと、半太郎の腕にサイコロの刺青をする。これを見て、自らを諌めとしてほしいと。半太郎は彫られている間、お仲の気持ちを感じて腕よりも心がさぞ痛かっただろうと思う。すまない、もう二度と博打はすまいと誓っただろうと思う。表情には現れていなかったが、黙って腕を差し出している中車さんの姿にそれが感じられた。

それなのに、半太郎はやっぱり博打をする。賭場でいちゃもんをつけて半殺しの目にあい、追ってきた親分に「せめてまともな所帯道具のある家で女房を死なせてやりたかったんだ」と絞り出すように答える。中車さんが最もうまいと思う場面で、泣けた。でも半太郎よ、博打で得た金で揃えた所帯道具をお仲は喜ぶだろうかと考えなかったのか。手っ取り早く稼ぐには博打しかないとはいえ…。半太郎の思いとお仲の思いがこの場面で交錯して離れていくようで切なかった。でもその一方で、半太郎の気持ちを知ったら、涙ながらに「おまえさん、嬉しいよ、ありがとう」とお仲が言いそうな気もした。
再びのすれ違いで両親がお参りをしたお地蔵さんのおかげだろうか、半太郎は勝利する。染五郎さんの親分はニンではないが、人間の大きさを見せようという努力は伝わってきて、話の結末にほっとした。
大金を手にしてお仲のもとへ走る半太郎。泣けた。でも、お仲はどうなっているだろう。せめて半太郎の帰りが間に合ってほしいとウルウルしながら祈った。
「玉兎」

歌舞伎座の舞台で六歳の子が一人で踊る‼ それも立派に丁寧に踊る。可愛いだけじゃない、すごい度胸だし、大変な稽古を積み重ねたであろう。二月の「桃太郎」でしっかりした役者根性を見せていた勘太郎クン、先が楽しみだし頼もしい。
「団子売」
勘九郎、猿之助という踊り上手な2人だから、楽しくないわけがない。猿之助さんの軽妙さと勘九郎さんの楷書な感じがうまくミックスされて、魅せた。
<上演時間>「刺青奇譚」90分(11001230)、幕間30分、「玉兎・団子売」25分(13001325

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コメント

Fujisan様
こんばんは。昨日、歌舞伎座第三部見てきました。話題の野田歌舞伎「桜の森」、評判どおり、幕切れ夜長姫の殺しの場面の幻想的な美しさは特筆ものです。プッチーニのジャンニ・スキッキ「私のお父さん」が全編に流れるのも効果的でした。七之助、勘九郎大熱演でした。野田さんの芝居、過去の歌舞伎作品はそれほどでもなかったのですが今回は登場人物がシェークスピアなみに喋りまくります。それが歌舞伎のリズムとはちょっと合っていなかった気がします。第二部になると、こちらがなれるせいで落ち着いては見れるのですが。
他の役者さん、どの人も、こういう芝居をやらせると上手ですね。歌舞伎役者の引き出しの多さにはいつも驚きです。
特に、猿弥の芸達者さが、主役二人についで光っていました。最後、三色幕を開けてカーテンコール付きでした。

投稿: レオン・パパ | 2017年8月19日 (土) 17時22分

レオン・パパ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
野田さんの「桜の森」は見たことがありませんので、どんな舞台なのか、第三部の観劇はずっと先なのですが、ますます楽しみになってきました。
猿弥さんは、赤坂歌舞伎でもよかったし、今月の「刺青奇譚」でも独特のいい味を出していましたし、演技の幅が広いですね。
歌舞伎座のカーテンコール、やはり中村屋ですね。それも、千穐楽でなくても。

投稿: SwingingFujisan | 2017年8月19日 (土) 23時30分

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