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2017年8月25日 (金)

八月歌舞伎座第二部

821日 八月納涼歌舞伎第二部(歌舞伎座)
これくらいの時間に始まってくれると、とても楽。もっとも帰りは5時を過ぎるから電車は混むけれど。
「修禅寺物語」
全体に緊迫感の漂う舞台であった。
彌十郎さん(夜叉王)は真面目で、自分の技術に誇りを持っている感じがよく出ていたが、彌十郎さん自身のやさしさなんだろうか、娘を思う気持ちが強く出ているように思え、それはそれでいいのだが、最後の狂気に近い感情がやや弱い気がした。そのせいか、夜叉王の希気魄と桂の満足のぶつかり合いに物足りなさを覚えた。
猿之助さん(桂)は気位の高さ、気の強さ、たとえ死が待っていようと我が道を行ったことによる満足感、すべてが役にぴったりだった。序盤、楓に向かっての「働くならお前ひとりで働けばいい」にちょっと苦笑的な笑いが起きた…。
新悟クン(楓)は猿之助さんとは対照的にしっとりとやさしく、しかしまた別の意味で強い女性だと思った。巳之助クン(春彦)も真面目で人を気遣う細やかさがよく、いい夫婦である。今後もこのコンビをもっと見たい。
勘九郎さん(頼家)には葛藤の武将らしさの中に儚さが感じられたのは、先を知っているこちらの意識のせいだろうか。
秀調さんの僧侶、亀蔵(片岡)さんの金窪兵衛、萬太郎クンの下田五郎、いずれも適役だった。
「歌舞伎座捕物帖」
幕が開くと舞台中央にスクリーンが。やがてブザーが鳴る。歌舞伎座にしては「?」と思っていると、スクリーンに松竹映画のオープニングロゴマークである富士山が映し出された。あ、上映のブザーだったのね、と今ごろ気づく鈍さ。前回の「東海道中膝栗毛(Road of YJKT)」(YJKTはもちろんYAJIKITAね)の主な場面がピックアップされている。楽しい‼ 
花火で打ち上げられた場面が流れると、いきなり二人が逆宙乗りというか、宙乗り小屋から舞台へ向かって下りてくる。去年のラストから今年のオープニングへとつながる趣向で、最初から盛り上がった。
ただ、去年のお伊勢参りと違ってあちこちへの移動もなく(去年は鯨に吹き上げられたし、何と言ってもラスヴェガスだからね)、全体的なインパクトとしては弱い。そのかわりに、歌舞伎座バックステージツアーみたいで楽しいし、興味深い。
劇中劇では「四の切」がおふざけでなく上演される。巳之助クンの狐(猿之助さんに教わったのかな)、しっかり演じられていたし、身体的にも合っている。いつか本公演でもやるんだろうな。見たい‼ 静はなんと竹三郎さん。50年ぶりの赤姫であり静であるそうだが、若々しくきれいで、年齢を感じさせない。本公演でも老け役ばかりでなく、時にはこういう役も見せてほしいと思った。瀬之川伊之助(巳之助)から役を譲られた芳沢綾人(隼人)がめまいを起こして、結局忠信役は伊之助がやることになったんだけど、隼人クンの忠信も見てみたかった。もっともニンとしては忠信より義経のような気もする。
中車さんの座元・釜桐左衛門には笑った。ほんと、もってくよね~。大好きなカマキリになって(「昆虫すごいぜ」のカマキリ先生みたいになったわけではないが、衣裳といい紋といい…)、のびのびと昆虫談義を始める。慌てて猿弥さん(同心・古原仁三郎‼ もちろん、モノマネで笑いを取る)が止める。中車さん、ここでもうまくなったなと思ったのは、見得。顎を引く程度の小さな見得がとても自然で感心した。

このカマキリさんの妻・お蝶(昆虫つながりね)を演じた児太郎クンが出色。七月「駄右衛門」でのお才も見事だったが、お蝶の悪女ぶりも素敵。愛人・新悟クンとの絡みでも積極的で、新悟ファンの私としてはドキドキしてしまったわ。児太郎クンには変な癖をつけず、このまま魅力的な悪婆を演じられる役者になってほしい。
義太夫が門之助さんと笑三郎さんだと、途中で気がついた。本職に混じってちゃんと演奏していたのが素晴らしい。
前作、おふざけの大人たちの中で真面目な役をしっかり演じていた金太郎、團子の2人は今回はやや印象が薄いが、やっぱり魅力的。團子クンは芝居心があると思う。身長が高く幼い子供の役はむずかしいだろうが、もっとたくさん出てほしい。金太郎クンは声変わり中なので、と自分でも何かで言っていたが、そういうハンデを抱えながら頑張っていた。このコンビ、どう成長していくのか、来年もぜひ続けてほしい。
この2人をはじめ、千之助、虎之介、鶴松といった超若手から先述の竹三郎さん、そして寿猿さんという超ベテランまで大勢出演していて、それぞれの役者さんを見るだけでも楽しい。そして既述の役名でもわかるように、名前にもギャグ心いっぱい。瓦版の升屋(ますや)と小見屋(こみや)にはクスリと笑った。
染五郎・猿之助コンビは自由闊達ながら主役感はあまりなかった。金太郎・團子コンビと同じように、前作に比べたら印象が薄いように思った。
話の結末はBパターン。微妙な差だったような…。ちなみに私はAに拍手した。話の最初の方ではBが怪しいと見当をつけていたのだが、Aが登場するとわからなくなり、徐々に「A」と変更。一度に両パターンを上演してほしかったなあ。
<上演時間>「修禅寺物語」58分(14151513)、幕間25分、「歌舞伎座捕物帖」105分(15381723


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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

片岡亀蔵役の同心「戸板雅楽之助」の方は、演劇評論家で作家の戸板康二氏の人気シリーズ<中村雅楽>からのもじりでこう言う遊びも愉しいですね。

ご存知かもしれませんが、戸板さんのその人気シリーズに「中村雅楽本」があって、歌舞伎役者の中村雅楽が舞台周辺で巻き起こる怪事件や殺人事件の推理をしていくというスタイルを確立しました。

従って同心「戸板雅楽之助」という登場人物は、明らかにこの「戸板」さんと「雅楽」を組み合わせた名前だと思います。

それしても女房お蝶役の児太郎は、すっかりお父さんの役回りが
できるようになってきましたね。

竹三郎さんの「死因」も可笑しかったですね!
台詞覚えのしっかりされている寿猿さんはちょっと不本意ではなかったでしょうかね(まぁお遊びなので気にしていないと思いますけど!)

来年はなにをしてくれるかなぁ?!
幸四郎と猿之助になりますが、8月も是非出て欲しいですよね。高麗屋さん!

投稿: うかれ坊主 | 2017年8月26日 (土) 20時25分

うかれ坊主様
コメントありがとうございます。
中村雅楽のドラマがあることはつい最近知り(「戸板」と「雅楽」の組み合わせもなるほど、と面白く思いました)、ぜひ見たかったのですが、有料のミステリー専門チャンネルでしかやっておらず、断念しました。そのうち図書館で原作を探してみます。

竹三郎さんの首の刺し跡には笑いました。寿猿さんは喜んでお遊びに付き合ったのではないでしょうか。でも寿猿さんをよく知らない人は信じちゃうかしら。

来年も楽しみですね。毎年上演してほしいです。

投稿: SwingingFujisan | 2017年8月27日 (日) 12時43分

昨日、第一部の楽と研の會に行ってきました

研の會は日本にいなかったこともあり、今年初参加でしたが、盛況でしたよ
客席には波乃久里子さん勘十郎さん東蔵さんらの顔もありました
羽根の禿から供奴はそうきましたかという演出でした

今日は歌舞伎座公演もないのでワンピース仲間が観に来るかもしれませんね

終演後、松也さんや市蔵さんがグッズの売り子やってました
来年も第4回を同じ時期に開催するとカーテンコールでも表明(プログラムにもありました)

菊十郎さんとの対談が掲載されていて、安達三なんてどうでしょうと発言してました
さてさてどうなるでしょうか

投稿: うかれ坊主 | 2017年8月28日 (月) 12時56分

うかれ坊主様
研の會の情報、ありがとうございます。
客席も豪華ですね。グッズ販売もあったのですね。たしか亀治郎の会で、出演者がグッズ販売をに協力していたことを思い出しました。

安達三、いいですね。右近クンにピッタリな気がします。そういえば、この演目、しばらく見ていないので、歌舞伎座でもかかるといいなと思います。
研の會は来年こそ見に行かれるといいのですが…。

投稿: SwingingFujisan | 2017年8月28日 (月) 23時26分

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