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2018年4月12日 (木)

四月歌舞伎座夜の部

48日 四月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
最初に見たのがあの地震の6日前、お芝居自体のインパクトに公演中止となったことが相俟って強烈な印象が残っている。そして1年後の4月公演はなんと3度もリピートしていたから(それは忘れていた。しかし6年前はまだ元気だったんだなあ、私も)、今度で4回目となる。
「絵本合法衢」
今までの2回(一応1公演を1回として)に比べて面白さが増したような気がしていたが、自分の感想を読み返すと2回とも今回に劣らず面白く興奮していた。お話自体はとにかく人が死ぬ。これでもかこれでもか、というほど善人側のほぼ全員が大学之助と太平次の手にかかる。大学はどうしたらいたいけな子供さえも平然と手にかけるような冷酷・残忍な人間になったのか。人面獣心と言うが、獣よりひどい。生まれた時はかわいい赤ん坊だったろうに。何があったら人間こうなるのだろう(「悪の種子」だろうか。この本、父の蔵書にあったが、読みそびれたので、タイトルだけから想像)とついつい考えてしまう。それに、あの場面はどうしても好きになれない。だけど、こんなに面白い、また一幕一幕が短い割には堪能できるのは、ひとえに仁左様の<悪の華>の魅力に尽きるのではないだろうか。というか、あんな物語、主人公が魅力的でなければ成り立つわけがない。その魅力を楽しめばいいのだ、多分。

大学之助の大きな悪、小悪党と言うには酷薄な太平次の愛嬌、どちらもまさに悪の華である。だから与兵衛より素敵に見えてしまうなんてことも…。しかし仁左様、脚が細い。太平次が足を組んだ時が一番細く見える。
太平次は、与兵衛と思って刺した相手が女房だとわかった時わずかにたじろいだ。そこに、さすがの太平次も女房とのそれなりの日々があったんだろうなと感慨を覚えたのもつかの間、自らのたくらみを女房に知られたからにはと冷酷な太刀を浴びせたから、何だったんだ私の感慨は…。だいたいこの男は決断が早い。そこが魅力の一つでもあると思った。
うんざりお松のことも適当にあしらっている。惚れているのはお松のほうで、太平次はお松を利用しているだけなのかも。お松も相当な女ではあるけれど(本人の口から語られる履歴がすごい)、大百姓の娘のなれの果て、品を落さない時さまだからちょっとかわいそうに思った。
彌十郎さんは悪役よりもこういう役の方が合っている気がする。
梅丸クン、いつもは幼さが先に立つが、この日は妙に色っぽく見えた。でも亀蔵さん(坂東)とは夫婦というより兄妹かな…。
錦之助さんの与兵衛はどこかで見たような…、そもそも仁左様の悪人2役からして「霊験亀山鉾」だった(どっちも四世南北だから)。錦之助さんは柔らかさと芯のしっかりしたところとのバランスが絶妙で、こういう役がぴったり合う。
吉弥さんの女房がしっとりして、盆が回る中、海老反りで息絶える姿が美しい(国立で初めて見た時も感動したものだ)。この場面は見どころの一つと言っていいと思う。
<上演時間>序幕45分(16451730)、二幕目57分(17401837)、三幕目40分(19071947)、大詰30分(20022032


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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

私も7日に観ました。観た上での実感は「一世一代」は本当に勿体ない!と云うこと。
今月が誕生月ですから確か七十四かな。
役者に年齢はないのでしょうけど一カ月ほぼ出ずっぱりの体力の負担は大変なものがあると拝察します。
もう一回拝見するのですが、心して目に焼き付けたいと思います。
七月も冨樫に綱豊卿と結構ハードかですね。活躍は嬉しい反面、体調にもちょっと心配になります。
まさに国の宝ですから。

投稿: うかれ坊主 | 2018年4月13日 (金) 17時00分

うかれ坊主様
7日にご覧でしたか。
74歳―悪の二役ということを考えると、確かに体力的にもきついものがあると思います。
河内屋与兵衛も一世一代でしたし、仁左様の役が少しずつ見られなくなるのは残念ではありますが、おっしゃるとおり、体調が心配になりますものね。
7月の松竹座、行かれませんが、見たい‼ 

合法は私ももう一度見るつもりです。

投稿: SwingingFujisan | 2018年4月13日 (金) 21時50分

わたしも御園座か南座のこけら落としか、この七月の松竹座の内、いずれかひとつは行きたいと思っていて、御園座は行けそうもないので、あとの七、十一、十二月から「三択」というところです。

話は変わりますが、尾上右近が出演する「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~」はどうされますか?
わたしは今日が先行予約だったので手配しておきました。
篠井英介や葛山信吾らの共演で戦争とコカインとインターネットをめぐる現代劇のようです。
また、第四回「研の會」は、8月26日(日)夜の部、8月27日(月)昼の部/夜の部の計3回公演で「封印切」と「二人椀久」ですね!
八右衛門が亀鶴というのも嬉しい!
(まだ配役不明ですが、八幡屋さんが出るのでこのお役しかないでしょ!梅川が壱太郎でおえんが上村吉弥、治右衛門が橘三郎かと思います)
明日(15日)はいよいよ、その八幡屋さんの出演する「PHOTOGRAPH 51」を観に行きます。

投稿: うかれ坊主 | 2018年4月14日 (土) 12時09分

うかれ坊主様
こんばんは。
うかれ坊主様が挙げられた三座のうち個人的には松竹座が一番魅力的かなと思います。仁左様と中車さんの初共演というのがとくに。

「ウォーター~」はG2さんの先行販売でチケットを取りました。

「研の會」、もう発表になったのですね。研の會はいつも行かれなくて、一度は見られたらと願っておりますし、亀鶴さんご出演ならぜひ、なのですが、まだ先過ぎてスケジュールは何とも…。

「PHOTOGRAPH51」も内容に大いに関心があるので見たいのはヤマヤマなんですが…。今は歌舞伎最優先で、その他の演劇は行かれなくなることも覚悟しつつ冒険でチケ取りしています(チケット販売時期が早すぎる)。

投稿: SwingingFujisan | 2018年4月14日 (土) 23時13分

わたしも歌舞伎座の前月の8日販売が一番生活のリズムに合います。新国立劇場なんかですと相当先の日程を決めないといけないのでそれなりのリスクが伴います。時に「付き合いが悪い」となってしまうのです…
松嶋屋と中車は初共演でしたか…記憶があやふやなんですが、てっきり実現済みかと思ってました。

投稿: うかれ坊主 | 2018年4月15日 (日) 11時41分

SwingingFujisan様
歌舞伎座の夜の部、うかれ坊主さんと同じ7日に見ました。
私も、震災の直前に見ましたので、今回が三度目です。これまでよりも、演出が練り上げられ、渋滞なくさくさくとテンポよく筋が展開していたと思います。松嶋屋、熱演で最適役ですが、年齢の故か、やや油っ気がうすくなったような気がします。これで、時蔵がもっとねっとりとつっこんでやれば、また色合いも違ってきたのではと思いました。ところで家人の感想は、歌舞伎版の「リチャード三世」みたいねとのことでした。
松嶋屋、「一世一代」とのことですが、この年代の大幹部は、何をやっても、皆、一世一代の気構えでやっているのでしょう。最近の大幹部の舞台をみてつとに感じます。

投稿: レオン・パパ | 2018年4月15日 (日) 19時09分

うかれ坊主様
おはようございます。お返事が遅くなりすみません。

歌舞伎座と国立劇場の発売日は助かりますよね。他の演劇の先行販売はありがたいのですが、そんな先のスケジュールわかんないよ~、と断念せざるを得ません。

松嶋屋さんと中車さんの共演、うっかり「初」と書きましたが、どうでしたか自信がなくなりました。間違っていたらごめんなさい。

投稿: SwingingFujisan | 2018年4月16日 (月) 09時35分

レオン・パパ様
おはようございます。お返事が遅くなってすみません。
確かにテンポはよかったですね。中だるみもなかったように思いました。国立での2公演に比べてそれぞれの幕の上演時間が5分ほど短くなっていますから、展開がうまくまとめられているのでしょうね。
時蔵さんは芸風があっさりしていますから…。
「リチャード三世」とは興味深いご指摘ですね。なるほどと思いました。でも私には大学の方が理解しがたい存在です。

大幹部の気構え、おっしゃる通りだと思います!! 最近の歌舞伎舞台が充実しているのは、その気構えが他の役者さんの演技をも引き上げているからなんでしょうね。

投稿: SwingingFujisan | 2018年4月16日 (月) 09時48分

綱豊役の仁左衛門丈が肩の手術のため降板し、梅玉丈が代演を務めたことがありましたね。このとき以来かもしれませんね。

日曜の公演プログラムの亀鶴さんのコメントが面白く、かつ含蓄のあるものでした。
(ここでそのまま記載するのはどうかと思いますの控えますけど)

投稿: うかれ坊主 | 2018年4月16日 (月) 12時58分

うかれ坊主様
そうでした。仁左様降板、梅玉さん代役―そういうことがありましたね。

亀鶴さんは以前に歌舞伎夜話とたしか花道会だったかと思いますがお話を伺ったことがあります。ですので、面白く含蓄のあるコメントというのは何となくわかる気がします。
そういえば最近、亀鶴さんを歌舞伎であまり拝見していないような…(1月「車引」の金棒引が一番最近かしら)。

投稿: SwingingFujisan | 2018年4月16日 (月) 22時31分

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