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2019年5月12日 (日)

ジャンヌレとル・コルビジュエ:「ル・コルビジュエ」展

5月8日 「ル・コルビジュエ展 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」(国立西洋美術館)
電車に乗っての社会への進出(?)は4月26日以来、約2週間ぶりのこと。電車の乗り方覚えているかしら、とちょっと不安になるくらいだった。
ル・コルビジュエ展は建築よくわからないし…(と言いながら、森美術館の「建築の日本展」はとても見たかった)だったが、西美でのコルビジュエだから、やはり見ておかなくては。
思いのほか、人が多かった。私の世代もけっこういたし、建築を勉強しているらしい、あるいは建築に関心の深そうな若い男女も多く、熱心に鑑賞していた。
西美の特別展は通常、まず地下へ案内されるのだが、今回の展示は19世紀ホールから始まる。ここは常設展として彫刻が展示されているスペースである。今回、このホールのみ展示物も建物も撮影OKだった。ふだん、特別展を見てしまうと疲れて常設展までなかなかエネルギーが続かないため、コルビジュエの建物をじっくり見ることはほとんどない。しかし今回は撮影OKだったこともあり、天井までゆっくり眺めてみた。
ここの柱は完全な円柱ではない。樽のように木材を使ってコンクリートの型取りをしているため、48面体になっているそうである(たまたま一緒になった建築ツアーのガイドさんの声が聞こえてきたところによると、1面の幅は4cmだそうである。このツアー、事前予約制なので参加できなかったが、とても面白そうだった)。
ここに展示されているのは、コルビジュエが設計した建物の模型で、個人または大学研究室などが作っている。大きさは本物の1/30、1/50(「イムーブル=ヴィラ」という共同住宅と、かの有名なサヴォワ邸は1/100)なので、内部もよく見える。私は、パリでラ・ロシュ邸を見に行ったことがあるはずのだけれど、果たしてそれが本当にラ・ロシュ邸だったのか…。場所(16区)と建物全体および内部の記憶から間違いないとは思うのだが。ただ、ここが有名なラ・ロシュ邸? なほど人もいなかったし、さびれた印象だった。世界遺産の話が出るずっと前のことだったからだろうか。写真はDVDに焼き付けてPCからは削除してしまった、そしてそのDVDが見つからないから確認もできない。
さて、この展覧会で中心になっているのはピュリスムである。ル・コルビジュエはピュリスムの画家でもあったのだ。絵も描いていることは知っていたし、作品を見たこともあるが、本名シャルル=エドゥアール・ジャンヌレとは知らなかった。画家としてはこの名前を使っているが、1928年1月以降は絵画にもル・コルビジュエと署名している。
ピュリスムの中心的存在であったアメデ・オザンファン(不勉強ながらオザンファンも初めて知ったんじゃないかしら)とジャンヌレは1925年に亀裂を生じ、7月末に修復不能な関係に陥るまで(その経緯はここでは触れない)、「エスプリ・ヌーヴォー」誌を刊行してピュリスムを盛り上げる。2人が決裂した時、ピュリスムは終焉する。

ピュリスムはキュビズムに比べてわかりやすいと思うし、嫌いじゃない。キュビズムもやさしいキュビズムなら比較的とっつきやすい(たとえばフェルナン・レジェ)。オザンファンの絵画はなかなかいいなと思った。ゴーモン社のニュース映像「ピュリスム : オザンファンとジャンヌレが結成した新しい絵画の流派」(1919年)にオザンファンの顔が映っていたが、1918年の「自画像」とよく似ていた。
ジャンヌレの最初の絵画は1918年「暖炉」で、暖炉の上の白い立方体が砂漠かなにかに建つ建物のように見える。もうここで建築家としてのコルビジュエが顔を出しているのか。でありながら、その立方体は豆腐のようにも見えるのが面白い。
絵画を見ていくと、ジャンヌレ(絵画)からル・コルビジュエ(建築)に流れる考え方がわかるような気がする(あくまで、気がする、ね)。コルビジュエは「規整線は絵画では底辺から中心軸に向かう2つの直角三角形の頂点が人の目を惹きつける戦略的な中心点」であるとしているが、これを建築にも応用している、というのが、なんとなくわかるような気がした要因である。
ピュリスムの上にできたコルビジュエの建築は、機能的すぎて私にはどこがいいかわからないようなところもあるのだが、西美の建物内部を見ると、たしかに美術館には向いているかもしれないと思う。19世紀ホールから2階へはスロープで上がっていく。スロープがもたらす効果は階段とは違って見える空間が少しずつ変化するということだが、そこが生活空間であったらせっかちな私でもそういう変化を楽しむことができるだろうか。
美術館は成長するという考えから、コルビジュエの設計した美術館は渦巻き型である。西美ももちろん渦巻き型で、収蔵品の増加に応じて増築できるようになっている。実は、この渦巻き型のおかげで、本館を歩いているとぐるぐる同じところをまわっているような感じがして、出口がわからなくなるという不安を覚える。実際、美術館の人に出口を尋ねたことも2~3回。
とはいえ、西美の建物は設計理論を知ってじっくりまわれば、私のようなド素人でもかなり興味深く見ることができるだろう、1度それを実現したいというのが今回の最終的な感想である。
展覧会の構成は
「Ⅰ ピュリスムの誕生」
「Ⅱ キュビズムとの対峙」
「Ⅲ ピュリスムの頂点と終焉」
「Ⅳ ピュリスム以降のル・コルビジュエ」
となっているが、展示はこの順番ではないので、出品リストのページをめくったり戻したり。展覧会ってこういう展示が間々あるが、どうして番号順にしてくれないのだろう。museologyはよくわかりません。

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